【見た目の観察】望形態で中医診断する!

望形態(見た目の観察)は、中医学で健康状態を把握するために重要な手段です。骨格や筋肉、皮膚の光沢、姿勢や動作から、体質や健康状態を読み取ります。人は見た目ではありません。と言われますが、中医学では人は見た目で判断します。以下は望形態における特徴と、その背景となる証についてです。

1. 肥満体の人(気虚・痰湿)

  • 肥人多気虚(ひじんたききょ)
    太っている人の多くは「気虚」というエネルギー不足の状態にあると考えられます。気虚の人は体が虚弱で疲れやすく、代謝も低下しがちです。

    • 気虚の症状: 疲れやすい、息切れ、冷え性、食欲不振、むくみ、消化力が弱い。

    • ダイエットと気虚: 気虚の人はなかなか痩せられない傾向があり、ダイエットを行う際には気をしっかり補うことが重要です。急激に食事を制限すると、体がより虚弱になってしまうため、補気の漢方薬(例: 補中益気湯)を用いて体力を回復させながら、少しずつ体重を減らしていく方法が適しています。

  • 肥人多痰湿(ひじんたたんしつ)
    太っている人の多くは「痰湿」という余分な水分や湿気が体内に溜まりやすい状態です。

    • 痰湿の症状: むくみ、重だるさ、疲労感、湿気による消化不良、体の冷え。

    • ダイエットと痰湿: 痰湿が多いと脂肪が落ちにくく、湿気を解消する漢方薬(例: 平胃散)や水分代謝を促進する処方(例: 防已黄耆湯)を使用することが勧められます。また、食事では脂っこいものや甘いものを控え、体を温める食材を取り入れることで痰湿の改善が期待されます。

2. 痩せた体の人(陰虚・火)

  • 痩人多陰虚(そうじんたいんきょ)
    痩せている人の多くは「陰虚」に陥りやすく、体を潤す力が不足しています。陰虚の状態では体に潤いがなく、熱が上がりやすくなります。

    • 陰虚の症状: 乾燥肌、ほてり、寝汗、のどの渇き、不眠、舌が赤い。

    • 治療と養陰: 陰虚の場合は、陰を養う漢方薬(例: 六味地黄丸)を用いることで、体の潤いとエネルギーを補います。また、体を冷やしすぎないようにしつつ、潤いを保つための食養生(梨、山芋、蜂蜜など)も効果的です。

  • 痩人多火(そうじんたか)
    痩せている人は体に「火(熱)」がこもりやすく、熱が内側で過剰になっていることが多いです。

    • 火熱の症状: イライラしやすい、顔の赤み、目の充血、ほてり、のぼせ、便秘。

    • 治療と清熱: 熱を冷ます漢方薬(例: 黄連解毒湯)を用いて火熱を鎮め、体内の余分な熱を取り除きます。辛い食べ物やカフェイン、アルコールなどの「熱」を生じやすいものを控えることも推奨されます。

3. 姿勢と動作の観察(陰主静・陽主動)

  • 陰主静(いんしゅせい)
    陰主静の人は、動作が少なく、姿勢も控えめで、ゆったりと静かな印象です。これらの人は「陰証」または「虚証」の特徴を持ち、冷えや体力不足が見られることが多いです。

    • 陰証・虚証の症状: 冷え性、疲れやすい、顔色が青白い、低体温、動作がゆっくりしている。

    • 治療と補陰: 体を温め、気血を補う漢方薬(例: 真武湯や人参湯)を使って、冷えや虚弱を改善します。また、食事では体を温める食材(生姜や鶏肉)を摂取することも効果的です。

  • 陽主動(ようしゅどう)
    陽主動の人は、よく動き、姿勢も良く、エネルギッシュで活発です。胸を張るなど堂々とした動作が多いのが特徴で、体内には「陽証」または「実証」の傾向があります。

    • 陽証・実証の症状: 顔が赤みがかっている、体が熱っぽい、精力的、食欲が旺盛、動作が早い。

    • 治療と調整: 陽の過剰を抑えながら、熱のバランスを整える漢方薬(例: 黄芩湯や三黄瀉心湯)で調整します。辛い食べ物や脂っこいものを控え、ストレス管理も重視します。

その他の特徴

  • 太っていて陰虚の人はいない
    太った人は気虚や痰湿であることが多く、陰虚の特徴を持つことはほとんどありません。陰虚は体を乾燥させるため、痩せている人に多く見られます。※陰虚の人は痩せている。

  • 気虚で痩せられない人
    太っている人で気虚の場合、ダイエットにより体が虚弱化してさらに代謝が低下することがあります。そのため、ダイエットは体力を補ってから少しずつ行う必要があります。

これらの望形態に基づく観察は、体質に合った治療を施すための中医学の基本的な方法です。姿勢や動作、体型から陰陽や気血のバランス、体内の湿気や熱の状態を見極め、適切な漢方薬や生活習慣を指導することが重要とされています。

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