【疑問】病因に関する質問 中医基礎理論
今回は病因に関する質問について解説していきます。
1. 気圧病と低気圧による不調
(1) 気圧の変動と風邪(ふうじゃ)の関係
低気圧: 気圧変動は、主に「風邪(ふうじゃ)」として捉えられます。
風邪は動きが早く、身体の上部や表面に影響を与えやすい邪気。
気圧の変動が起きると、風邪が身体のバランスを乱し、頭痛や倦怠感、めまいなどの症状を引き起こします。
(2) 湿邪との結びつき
低気圧に伴う湿気(湿邪)は、風邪と結びつきやすい性質があります。
湿邪は重たく粘着性があるため、気圧が下がる際に体内の「気」や「血」の流れを滞らせます。
結果として、以下の症状が現れることが多いです。
頭の重さ、関節の痛み、体のだるさ。
胃腸の不調(湿が脾胃を傷つける)。
(3) 長引く湿邪の影響
湿邪が慢性的に体内に留まると、気圧変化に過剰に反応しやすくなります。
慢性化した症状: 気圧変動に敏感な頭痛、めまい、疲労感など。
対策: 湿邪を取り除くための健脾化湿の治療や、気血の流れを改善する施術(鍼灸、漢方薬)を行います。
2. 暑邪と火邪の違いと夏の不調
(1) 暑邪と火邪の違い
暑邪: 主に夏特有の外邪で、湿気を伴うのが特徴。
湿邪が加わることで、湿熱となり、倦怠感や消化器系の症状を引き起こします。
例: 高温多湿の環境での発熱、大量発汗、体のだるさ。
火邪: 熱が非常に強く、湿を伴わない純粋な炎熱の邪気。
火邪は炎症や興奮を引き起こし、急激な体力消耗を伴います。
例: 長時間の直射日光やサウナでの高温暴露。
(2) 夏の不調
夏の不調は、暑邪が主体であることが多いですが、長時間の高温暴露(炎天下の作業など)では火邪に変化します。
暑邪の症状:
高温多湿による疲労感、発汗、大量の水分消耗。
胃腸の不調(湿が脾胃を傷つける)。
火邪の症状:
強い発熱、顔の赤み、精神不安、不眠。
出血傾向(鼻血、吐血など)。
(3) 季節問わずの火邪
春・秋・冬でも、天気の良い日に長時間作業を行うことで、火邪に侵されることがあります。
特に、運動や激しい作業で熱が過剰に発生し、体の「陰(津液)」が消耗することで火邪が顕著になります。
3. 火邪と湿邪による腫瘍の違い
(1) 火邪が主な腫瘍
火邪が腫瘍の原因となる場合は、次のような特徴があります。
腫瘍の見た目: 赤みが強い、腫瘍部が熱を持っている。
進行の速さ: 腫瘍の形成が急速で、増大も早い。
炎症性: 痛みを伴い、触ると熱感がある。
(2) 湿邪が主な腫瘍
湿邪が腫瘍の原因となる場合は、次のような特徴があります。
腫瘍の見た目: 浸潤性が強く、ジュクジュクした分泌物を伴う。
進行の遅さ: 腫瘍の形成がゆっくりで、硬い場合が多い。
再発性: 治りにくく、再発しやすい傾向。
(3) 混在する場合
腫瘍は火邪と湿邪が同時に関与していることが多い。
火邪優位: 急性で、炎症が強い。
湿邪優位: 慢性で、治療に時間がかかる。
4. 気血以外の津液の失調
(1) 津液の役割
津液は体内の潤いを保つ要素で、以下の機能を担います。
血液を補助し、体の循環を助ける。
肌や粘膜の潤いを保つ。
消化や排泄を円滑にする。
(2) 津液失調の影響
津液が不足すると、以下の症状が現れます。
乾燥症状: 喉の渇き、肌や目の乾燥。
便秘: 腸内の潤いが失われ、硬い便が形成される。
精神的不安定: 津液不足により、心や脳が影響を受ける。
津液の停滞が起きると、以下の症状が現れます。
むくみ: 体内の余分な水分が排出されず、停滞する。
痰湿: 呼吸器系や消化器系に痰や湿が溜まり、不快感を引き起こす。
5. 春の花粉症と風邪(風熱・風寒)
(1) 花粉症の邪気分類
春の花粉症は「風邪」によるものですが、以下の2つに分かれます。
風熱: 目のかゆみ、充血、発熱感が中心。
風寒: 鼻水(透明で大量)、くしゃみ、寒気が中心。
(2) 混在する場合
花粉症は「風熱」と「風寒」が混在することも多い。
両方の症状が出る場合、薬や治療法を組み合わせて対応します。
(3) 通年性鼻炎との違い
通年性鼻炎: 慢性的な虚の状態が原因。
長期的な気虚や津液不足が基盤となり、風邪がない状態でも症状が持続する。
花粉症と比べて症状の激しさは低いが、治りにくい傾向。
まとめ
気圧病: 風邪が主体で、湿邪と結びつきやすい。湿邪を取り除く治療が重要。
暑邪と火邪: 湿の有無が違い。夏は暑邪が主体だが、火邪も発生する。
腫瘍の見分け方: 火邪は急性で炎症が強く、湿邪は慢性で浸潤性が高い。
津液の失調: 津液不足や停滞が病因として重要。
花粉症と風邪: 春の花粉症は風熱・風寒が混在する場合が多い。