【気血チャージ!】十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)は超養生な薬!
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)は、気虚と血虚が同時に起きている「気血両虚」の状態を総合的に補う代表的な漢方薬です。身体を養い、生命力を補うことから、慢性疲労、冷え性、消耗性疾患、病後の体力回復など、幅広い用途で使用されています。この処方は、基礎となる四物湯(しもつとう)に補気健脾の働きを持つ生薬を加えた構成で、気と血の両面からアプローチします。
以下では、十全大補湯の各成分とその効果について、さらに詳しく解説していきます。
十全大補湯の基本構成と成分の役割
十全大補湯は、血虚と気虚の状態を同時に改善することを目的としています。処方には「四物湯」の補血と活血作用に加え、補気健脾作用を強化するための生薬が加えられており、体質全体の強化を図ることが可能です。
1. 四物湯の補血・活血作用
四物湯は、血を補い、血の流れを良くすることを目的とした代表的な漢方処方です。十全大補湯の中核を成しており、補血と活血を担う以下の4つの生薬で構成されています。
地黄(じおう):血を補い、体内の血の不足を改善します。特に血虚の状態に対して有効で、顔色が青白い、乾燥肌や爪が割れやすいなどの症状を改善します。また、体を冷やす性質があり、炎症や興奮を鎮める働きも持っています。
芍薬(しゃくやく):筋肉のこわばりを和らげ、血を補う作用があります。四物湯の中で筋肉を保護する役割を担い、特に腹痛や痙攣などの症状にも効果的です。血虚による疼痛緩和にも貢献します。
当帰(とうき):女性の体質改善や生理不順に広く用いられる生薬で、血を補いながら血行を改善し、冷え性や貧血などに効果があります。また、女性特有の不調やホルモンバランスを整えることでも知られています。
川芎(せんきゅう):血行を促進し、頭痛や肩こりなどの血行不良に対して有効です。四物湯の中で血液の巡りを整える「活血薬」としての役割を果たし、冷えや瘀血(おけつ:血行不良)を解消する力が高いです。
四物湯は、この4つの生薬が相互に作用し、血を補充しつつ全身の血流を改善します。十全大補湯に含まれることで、体力を消耗している方の血虚を改善し、血流を良くする作用が得られます。
2. 補気健脾の生薬
十全大補湯は、四物湯に加え、補気健脾作用をもつ生薬が含まれています。補気健脾の生薬群は、特に気力や体力の回復に役立ち、消化機能をサポートしながら全身の気力を増進します。
人参(にんじん):気を補い、全身にエネルギーを供給します。特に慢性的な疲労や免疫力の低下に対して効果があり、虚弱体質の方の体力回復を助けます。十全大補湯では、気虚の改善に大きく貢献しています。
黄耆(おうぎ):補気作用が強力で、免疫力を高めることで風邪予防や持続的なエネルギーを提供します。体力増強や倦怠感の改善にも役立ち、気虚による疲労に対して有効です。
白朮(びゃくじゅつ):消化器系の働きを健やかにし、脾を補う働きがあります。また、水分代謝を整えることで、体内の余分な水分を排出し、むくみや消化不良を改善します。
茯苓(ぶくりょう):水分代謝を改善し、胃腸の働きを整える作用を持ちます。脾の健全な機能を維持しながら利尿作用を発揮し、消化吸収をサポートします。
甘草(かんぞう):各生薬の効果を調和する役割を果たし、炎症を抑える効果もあります。さらに、苦味や渋みを和らげ、胃腸に優しい処方に調整します。
これらの補気健脾薬は、四物湯の補血作用を助け、消化器系を整えることで気の流れを安定させます。このように気血を補う生薬が揃うことで、全身の活力と血液の質を向上させる効果が期待されます。
3. 補陽・散寒の生薬
桂皮(けいひ):体を温め、全身の血行を促進し、代謝を活性化させます。特に冷え性の方や血流が悪い方に対して効果を発揮し、体の芯から温めることで体調を整えます。補血作用と相まって、体が冷えて気力が落ちた状態や虚弱体質の改善に役立ちます。
十全大補湯の効能と効果
十全大補湯は、気血両虚と呼ばれる、気と血が共に不足している体質の改善に特化した処方です。以下のような症状に対応します。
1. 気血両虚の改善
十全大補湯は、補血と補気の作用を持つため、気血両虚による倦怠感や顔色不良、貧血症状を改善します。疲労しやすい、顔色が青白い、立ちくらみ、体力低下などに効果的です。
2. 冷え性や代謝不良の改善
桂皮が体を温め、血流を促進するため、冷え性の改善に適しています。補気と補血の生薬と併用することで、手足の冷えや体温低下、血行不良を改善し、代謝も向上します。
3. 免疫力向上と体力強化
補気作用を持つ人参や黄耆が体の免疫力を向上させ、病後の回復や持続的なエネルギーを提供します。風邪や感染症の予防に役立ち、体質全体を強化します。
4. 消化器の改善と水分代謝
消化機能が低下している場合やむくみが気になる方に対しても、白朮や茯苓が利水・健脾作用を発揮します。消化吸収が改善されることで、胃腸の負担が減り、むくみが取れやすくなります。
十全大補湯の使用方法と注意点
適応例
十全大補湯は、次のようなケースに適しています:
気血両虚の状態で、慢性的な疲労感がある方
冷え性、顔色不良、貧血などの血虚症状がある方
病後の体力回復や手術後の免疫力向上を図りたい方
注意点
体質に合わせた使用:十全大補湯は温補作用があるため、体に熱がこもりやすい体質の方や炎症がある方には適さないことがあります。
服用期間:長期使用は、体質に応じて調整が必要です。
副作用:稀に胃腸に負担がかかる場合があるため、胃腸が弱い方は少量から試すことが推奨されます。
まとめ
十全大補湯は、慢性疲労や体力低下が顕著な方、病後の回復を図りたい方にとって非常に有効な漢方薬で、気血両方を補うことで全身の機能を底上げする力があります。
※十全養生湯という十全大補湯をもじった商品があります。鍋に美味しいです。
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