【熱と湿気が停滞】脾胃湿熱(ひいしつねつ)脾の前提知識⑧
脾胃湿熱(ひいしつねつ)は、中医学で湿気と熱が結びついて脾や胃に停滞している状態を指します。湿気と熱が結合すると、「湿熱」と呼ばれ、消化器系の働きを著しく妨げます。この病態は、現代の食生活や不規則な生活習慣、暴飲暴食などが原因で発生しやすく、特に消化吸収の機能に影響を与えることが多いです。
詳しい説明
湿熱の性質:
湿: 体内に停滞する余分な水分。湿は重く、粘り気があり、流れが悪くなりがちで、体の巡りを停滞させます。
熱: 体の中にこもった余分な熱。熱は上昇しやすく、炎症や熱感を引き起こします。
湿熱の特徴: 湿と熱が結びつくと、粘り気があり流れにくい「熱っぽいヘドロ」のようなものが体内にたまり、特に脾胃に負担をかけます。
脾胃湿熱の原因:
飲食習慣: 脂っこい食べ物や甘いもの、アルコールなどが過剰になると脾胃に負担がかかり、湿熱が溜まりやすくなります。お正月や祝日のように、普段より豪華な食事を摂るときに特に起こりがちです。
生活習慣: 過労やストレス、不規則な睡眠も脾胃の機能を低下させ、湿熱が溜まりやすくなります。
脾胃湿熱の症状
食欲不振: 食べ物を見ても食欲が湧かず、胃が重く感じられます。胃が詰まっているような不快感があります。
吐き気・嘔吐: 湿熱によって胃の機能が阻害され、吐き気や嘔吐の症状が出ることがあります。
口の粘りと渇き: 口の中が粘つき、乾燥している感じがします。水を飲んでもスッキリせず、粘り気が残ることがあります。
軟便や下痢: 便が緩く、ベタベタしていて、強い臭いを伴うのが特徴です。湿熱が腸に影響を与えるためです。
尿の色の変化: 尿の色が濃くなることがあります。湿熱の影響で体内の水分代謝が悪化し、尿が濃縮されます。
肌のトラブル: 湿熱が皮膚に影響し、肌がかゆくなったり、黄色っぽくなったりすることがあります。湿熱が皮膚に溜まると、炎症や湿疹の原因になります。
漢方薬による対処法
茵蔯蒿湯(いんちんこうとう):
作用: 湿熱を取り除き、特に肝胆に溜まった熱を解消する効果があります。黄疸や皮膚の黄色化がある場合に適しています。
使用シーン: 肌の黄色化や強い湿熱症状があるときに効果を発揮します。
茵蔯五苓散(いんちんごれいさん):
作用: 利水作用が強く、体内の余分な湿を排出します。湿熱によるむくみや水分代謝の異常を改善します。
使用シーン: 下痢やむくみが強い場合に適しています。
平胃散(へいいさん):
作用: 胃の機能を整え、余分な湿を取り除く効果があります。消化不良や胃もたれに使用されます。
使用シーン: 食欲不振や胃の重だるさがあるときに効果があります。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう):
作用: 強い解毒作用を持ち、全身の熱を冷ます効果があります。湿熱がひどく、炎症が体のあちこちに広がっている場合に使います。
使用シーン: 高熱や炎症があるときに適していますが、体力がある人向けです。
生活習慣の改善ポイント
脂っこい食事を控える: 肉類や揚げ物など脂質の多い食事は控えめにし、野菜や消化の良い食べ物を摂るように心がけましょう。
アルコールの節制: アルコールは脾胃に負担をかけ、湿熱を悪化させるため、飲みすぎに注意が必要です。
適度な運動: 軽い運動を取り入れて体内の湿を巡らせ、代謝を良くすることで湿熱を改善します。
温かい食べ物を摂る: 冷たい飲み物や食事は脾胃に負担をかけるので、温かいスープやお茶を摂るようにしましょう。
気虚発熱と脾陰虚発熱の違い
気虚発熱: 体力不足からくる微熱で、一日中続くことが多いです。特に午前中から夕方にかけて熱感があるのが特徴です。
脾陰虚発熱: 陰液不足からくる熱感で、夕方から夜にかけて火照りや微熱を感じることが多いです。特に体の乾燥感が伴います。
特別な注意点
感染症対策: 胃腸の感染症に対して、漢方薬が直接ウイルスを治療するわけではありませんが、症状を和らげる補助的な効果があります。吐き気や下痢を抑えるために「半夏(はんげ)」や「生姜(しょうきょう)」などが含まれる漢方薬を使うことがあります。
食事の量とバランス: 一度に大量に食べるのではなく、少しずつバランスよく摂ることが重要です。
これらの知識を参考に、脾胃湿熱を改善するためには日々の生活習慣を見直し、適切な漢方薬を選ぶことが大切です。また、体調が悪化した場合は医療機関での相談も検討してください。