【婦人科三大処方③】桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)で女性疾患を改善!

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、瘀血(おけつ)を改善し、冷えや水滞を伴う症状を和らげるために用いられる漢方薬で、特に下半身の血行不良や冷え、むくみなどに有効です。日本では病院で処方されることが多く、広く利用されています。そのため、一般的な生活の中で起こりがちな血流障害やむくみなどに対する利用の幅が広く、女性の冷えや生理痛の緩和、さらには加齢による下半身の血流不良にも適用されています。

1. 桂枝茯苓丸の構成生薬と作用

桂枝茯苓丸は、以下の主要生薬で構成されています。それぞれの生薬が役割を果たしながら、瘀血改善や冷え対策として作用します。

牡丹皮(ぼたんぴ)

牡丹皮は、ボタンの根皮から得られる生薬で、血の巡りをスムーズにし、瘀血を取り去る働きがあります。冷えが原因で血が滞ると、瘀血が形成されやすくなります。牡丹皮はこの滞りを改善し、冷えによる血流障害や炎症の発生を防ぎます。瘀血による下腹部の痛みや生理不順に用いられ、特に下腹部の痛みや血行不良が原因となる症状に対しての効果が期待されます。

桃仁(とうにん)

桃仁は、モモの種から得られる生薬で、血液をサラサラにし、血の滞りを解消する働きを持っています。中医学では、瘀血の原因の一つに「血液の粘性」がありますが、桃仁はこの粘性を改善し、血流をスムーズにすることで瘀血を解消します。また、桃仁には炎症を抑える作用もあり、瘀血による痛みや炎症を和らげます。特に生理痛がある場合に効果が期待されます。

芍薬(しゃくやく)

芍薬は、シャクヤクの根から得られ、筋肉や血管の緊張を緩和する作用があります。血管の収縮や筋肉のこわばりが原因で血行不良が発生すると、瘀血となりやすいため、芍薬の緩和作用によって筋肉の緊張をほぐし、血流を促進します。また、芍薬は痛みを和らげる効果もあり、生理痛の緩和に役立ちます。

桂皮(けいひ)

桂皮は、シナモンの樹皮から得られる生薬で、体を温めて血流を促進する作用を持ちます。桂皮の温経通脈(うんけいつうみゃく)作用により、体を温めて血行を良くし、瘀血の改善をサポートします。冷えが原因で血流が滞り、痛みが出やすい場合に特に有効であり、代謝を上げることで血行改善を支援します。また、桂皮は代謝機能を高めることで、瘀血や冷え症状を抑制するだけでなく、全身の体力回復にも寄与します。

茯苓(ぶくりょう)

茯苓は、マツホドというキノコの一種の菌核から得られる生薬で、体内の水分代謝を整える利水作用が特徴です。水分が体に滞ると、むくみや冷えにつながり、それが瘀血の要因になることがあります。茯苓は、体内の水分循環を正常化し、体の中に余分な水分が溜まらないようにします。また、胃腸の働きを助け、消化吸収を促すため、エネルギーの供給もサポートします。水分代謝を整えることで、瘀血に伴うむくみや冷え症状を改善します。

2. 桂枝茯苓丸の主な作用

桂枝茯苓丸は、上記の生薬の作用を組み合わせて、以下のような特徴的な効果を発揮します。

活血化瘀(かっけつかお)

活血化瘀は、血の巡りを良くし、滞っている血(瘀血)を解消する作用を意味します。瘀血は、血流が滞ることによって生じ、身体の痛みや冷えの原因になることがあります。桂枝茯苓丸は、牡丹皮や桃仁、芍薬の活血作用により、血行を促進して瘀血を解消します。これにより、下腹部の痛みや冷えによる不快感を和らげます。

温経通脈(うんけいつうみゃく)

桂皮の温経通脈作用によって体を温め、血管を拡張させることで血液の循環を促進し、代謝を向上させます。体が冷えると血流が滞りやすくなるため、体を温めて血流を改善することが重要です。特に冷え症や生理痛など、血流不良が原因で生じる症状の緩和に役立ちます。

利水作用

茯苓の利水作用は、体内の水分の循環を整え、むくみや水滞を改善します。これにより、体に余分な水分が溜まらないようにして、冷えやむくみを防ぎます。水分代謝が悪いと体が重だるく感じることが多いため、茯苓が入ることで水分の排出を促し、体を軽くする効果も得られます。

3. 桂枝茯苓丸の適用例とその特徴

下半身の瘀血

桂枝茯苓丸は、特に下半身に滞る瘀血の改善に優れており、下腹部や下肢の血流を改善するために役立ちます。瘀血の症状が下半身に集中している場合、血流が滞ることで痛みが発生しやすくなりますが、桂枝茯苓丸はこれを和らげるための漢方薬としてよく処方されます。

生理痛や生理不順

桂枝茯苓丸は、瘀血を伴う生理痛や生理不順の改善に広く用いられます。特に、経血が濃くどろっとした感じで痛みがある場合は瘀血の典型症状とされ、この場合には活血化瘀作用が大きな効果を発揮します。生理中に腹痛や下半身に針で刺すような鋭い痛みがある場合には、桂枝茯苓丸の効果が期待されます。
※中医学的には生理痛は無いのが通常とされます。詳しくは中医婦人科学にて。私が女性だったら人体実験できるのですが、飲んでもあまり意味がないので解説のみ。

冷え症・むくみ

冷え症は血流の滞りや水分代謝の不良によって引き起こされます。桂皮による温経通脈作用と茯苓の利水作用により、体を温めて余分な水分を排出することで、冷え症の改善に役立ちます。また、茯苓が水分代謝を促すため、冷えに伴うむくみが軽減されることもあります。

水滞

桂枝茯苓丸は、水滞(体内に水分が停滞している状態)の改善にも適しており、水分代謝が滞っている方のむくみや冷えに効果的です。瘀血と水滞が併存する場合には、瘀血改善とともに余分な水分の排出も促進するため、むくみの緩和が期待できます。

4. 桂枝茯苓丸の使用に際する注意点

桂枝茯苓丸は、冷えや瘀血を改善するための漢方薬ですが、体質により適応が異なる場合があります。特に、以下の点に注意が必要です。

  1. 冷えの程度:桂皮の温める作用があるため、体が熱くなりやすい方には適さない場合があります。体質が「熱」に偏っている方には、他の瘀血改善薬が適している場合もあります。

  2. 妊娠中の使用:瘀血改善作用が強いため、妊娠中は使用を避けるか、医師と相談することが推奨されます。

  3. アレルギーの有無:桂皮(シナモン)などの生薬に対してアレルギーがある方は、使用に注意が必要です。アレルギー体質の方は、事前に医師に相談するのが望ましいです。

5. 桂枝茯苓丸の活用と今後の展望

桂枝茯苓丸は、日本でもよく処方される瘀血改善の漢方薬で、冷え症、むくみ、生理痛などに広く使用されています。現代の生活では、冷暖房などの影響により冷えや水滞が増加しがちなため、桂枝茯苓丸のように冷えや瘀血の改善を目的とした漢方薬がますます注目されています。

また、桂枝茯苓丸は多くの生薬の特性を活かし、特に下半身に集中した症状の改善を図ることができるため、現代の生活環境においても大変有用な薬方といえるでしょう。

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