【月経不順の概要】中医婦人科学

今回から月経不順についての中医学的解説をしていきます。

1. 月経不順の診断方法:周期の異常と量の異常

中医学において、月経不順は「周期の異常」と「量の異常」の2つの観点から診断されます。周期の異常は、月経の開始タイミングが早すぎたり、遅すぎたりすることを指し、量の異常は月経血の量が多すぎるか少なすぎる状態です。

  • 周期の異常:周期の早い・遅い原因としては、気血の不足や気滞血瘀(血行不良)、肝気鬱結(ストレスによる気の滞り)などが考えられます。中医学では、月経の周期が安定していることが、体のバランスを保つために非常に重要とされます。

  • 量の異常:月経の量については、自身の過去の量と比較することが推奨されます。個人の体質や年齢によって月経量は異なり、特に年齢とともに徐々に減少する傾向があります。以下の症状が観察される場合は、注意が必要です。

    • 月経過多:月経量が多い状態で、通常よりも出血量が多く、貧血や疲労感を伴うことがあります。月経過多の原因には、血熱(体内の熱が血を活発に流す状態)や気虚(体力不足)が考えられます。

    • 月経過少:月経量が少ない状態で、過剰な血の不足(血虚)や気滞血瘀によるものです。気血が十分でない場合や気滞が原因で血流が妨げられると、月経量が減少することがあります。

2. 月経量の変化を自己観察する重要性

月経の量の異常かどうかを判断するには、他人との比較ではなく過去の自分との比較が重要です。月経量は体調や年齢により変動するため、過去の自分の状態と比較することで異常の兆候を早期に見つけやすくなります。

  • 量が明らかに増加している場合:通常の月経量と比べて突然量が増える場合、気血の滞りや血熱、湿熱が原因の可能性があります。

  • 量が明らかに減少している場合:以前よりも量が減少している場合は、血虚や腎虚(体内の腎エネルギー不足)が原因と考えられます。特に30代前半での極端な減少は早期に対策を取ることが推奨されます。

3. 月経痛(生理痛)についての中医学的分類と対策

月経痛は、中医学では非常に多く相談される症状の一つであり、さまざまなタイプに分けて原因と対策を検討します。月経痛には以下のような原因があります。

  • 気滞血瘀:気の流れが滞ると血が流れにくくなり、痛みが生じます。月経痛が重く、刺すような痛みが特徴です。ストレスや怒りなどの感情が気を滞らせる原因となるため、リラックスや気を巡らせることが対策となります。

  • 寒湿凝滞:寒さや湿気が体に入ることで血流が悪くなり、痛みが生じます。寒い季節や冷えた環境にいると悪化しやすいため、温かくすることが大切です。体を温める生姜茶や温かい食事が推奨されます。

  • 気血不足:気と血が不足すると、子宮への血流が低下し、鈍痛や重だるい痛みが生じます。疲れやすさや顔色の悪さが見られる場合、気血を補う食材(棗、鶏肉、卵など)や休養が効果的です。

  • 肝腎陰虚:体内の陰が不足すると、虚熱が発生し痛みが生じます。ほてりやイライラを伴う場合が多く、肝腎を補い、リラックスを促進する必要があります。

4. 妊活や冷えに関する相談の多さ

多くの女性が月経不順や月経痛だけでなく、妊活や冷え対策についても相談します。冷えは妊娠にとって障害になることがあるため、冷えを改善し、気血の流れを良くすることが重要です。

  • 温補療法:冷えの改善には、体を温める食材(生姜、にんにく、羊肉など)を取り入れるとともに、生活習慣の改善も必要です。温かいスープやお粥などの食事で胃腸を温めることが推奨されます。

  • 妊活中の養生:妊娠を希望する場合、気血を補い体を温めることが効果的です。疲れをためず、リラックスを心がけることが大切であり、過度なストレスや冷えに注意する必要があります。

5. 診断における参考指標としての重要性

月経不順における「周期」「量」「色」はあくまで参考指標であり、弁証による総合的な診断が重要です。単に量や周期、色だけで診断するのではなく、その他の症状や体調も合わせて総合的に考えます。例えば、月経量が少なく色も暗い場合は「血虚」を考え、刺すような痛みとともに量が多い場合は「気滞血瘀」を疑います。

まとめ

中医学における月経不順の診断は、周期や量、色などの変化を注意深く観察し、これらの情報をもとに体質や健康状態を総合的に判断します。自分の月経の変化を記録し、過去の自分との比較や体調の推移を把握することで、異常の早期発見がしやすくなります。また、月経不順の根本原因に基づいた養生法や食事改善を取り入れ、長期的な体質改善を図ることが、より健やかな女性の健康を維持するために効果的です。

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