【月経過少の原因や治療法は?】中医婦人科学
月経過少と月経不順に関する詳細な中医学的視点は、以下の通りです。月経過少は、月経量が少なく、出血期間が短い(月経が2日以内、または数滴で終わる)ことを特徴とします。中医学では、この状態を虚証と実証に分け、さまざまな原因によってアプローチを変えています。
月経過少の4つの主要タイプとその特徴・治療法
1. 血虚(血が不足している状態)
特徴: 血虚は、血の不足や血の栄養不足によって引き起こされ、全身の栄養が行き渡らない状態です。月経の色は淡く、質は薄く、サラサラした経血が特徴です。血虚の症状には、めまい、視界のかすみ、動悸、顔色が蒼白または黄色っぽくなるなどが見られます。
原因: 血虚は、栄養不足、消化機能の低下(胃腸の弱さ)、失血(多量の月経や出産)、慢性病、過労などが原因です。
治療法: 血を補い、体に栄養を与えることが重要です。具体的には、婦宝当帰膠がよく使われ、胃腸が弱い場合には、帰脾湯が併用されることもあります。これらの漢方薬は、血を補いながら体の全体的なバランスを整えます。
2. 腎虚(腎のエネルギー不足)
特徴: 腎虚は、腎のエネルギー(気)や精が不足した状態です。月経の色は暗淡、質は薄く、経血が暗い色合いであることが多いです。腎虚の人には、腰や膝の痛み、耳鳴り、めまい、疲れやすさなどの症状が伴うことが多く、全身の衰弱感が見られます。
原因: 慢性病、加齢、出産後の体力低下、過労、冷え、ストレスなどが原因です。特に年齢を重ねることで腎のエネルギーが減少し、月経量が減少することがあります。
治療法: 腎の気と精を補うことが目的です。代表的な漢方薬には参茸補血丸があり、腎のエネルギーを補充して月経の正常な流れをサポートします。また、血虚と併発している場合には、腎と血を同時に補う漢方薬が選ばれることもあります。
3. 瘀血(血の滞り)
特徴: 瘀血は、血がうまく循環せず滞っている状態です。経血の色は紫黒、血塊を伴うことが多く、月経時に下腹部の痛みが出やすいです。舌には瘀点(紫色の点)が現れることも特徴です。
原因: 気の流れが滞ることで血の循環が悪くなり、冷えやストレス、出産後の養生不足などが原因となります。産後に血液がうまく排出されない場合、瘀血が残りやすくなります。また、冷えが原因で血の流れが悪くなることもあります。
治療法: 瘀血を取り除き、血行を改善する漢方薬が有効です。血府逐瘀丸が代表的で、気と血の流れを促進し、血液の滞りを解消することで、月経の流れを正常化します。
4. 痰湿(湿気や粘液の滞り)
特徴: 痰湿は、体内の湿気や余分な水分が原因で血液が粘り、経血がネバネバして糸を引くような状態です。経血の色は淡紅色で質が濃いことが多く、おりものが多く出たり、胸が苦しく吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
原因: 消化機能の低下によって体内に湿がたまり、それが血液や体液に影響を及ぼして起こります。過剰な水分摂取や油っこい食べ物、消化不良、運動不足などが原因で痰湿が溜まります。
治療法: 痰湿を除去し、消化機能を改善する漢方薬が有効です。温胆湯がよく用いられ、湿を取り除きつつ、消化をサポートし、体内の余分な湿気を排出します。
月経過少の診断ポイント
月経過少の主な診断ポイントは、周期が正常であるが月経量が少なく、出血期間が2日未満で数滴で終わってしまうことです。
特に血虚や腎虚による月経過少が多く、虚証(体が弱っている状態)に分類されることが一般的です。実証(瘀血や痰湿などの体内の滞りによるもの)も存在しますが、虚証の割合が高くなっています。
診断時の注意点とタイプの見極め
経血の色や質で判断しますが、付随する症状も重要です。例えば、血虚は経血が淡くサラサラしていることが多く、腎虚では暗淡な色の経血が見られます。
瘀血の場合は、経血が紫黒で血塊が見られ、下腹部に痛みを伴うことが特徴です。痰湿がある場合は、経血がネバネバして粘り気が強いことが多く、湿が体に悪さをしているため、胸苦しさや吐き気なども見られることがあります。
月経不順は複合的に症状が出る場合があり、1つのタイプに明確に分類できないこともあります。そのため、色、質、量、伴う症状を総合的に見て、体質や症状に合わせた弁証が求められます。
田七人参の使用について
田七人参は、出血を抑え、血行を改善する効果があるため、月経不順の際や怪我の回復時などに使用されます。体質改善のために飲むこともあります。
長期使用しても問題ないとされていますが、体質や症状に応じて、頓服や短期間の使用に留めることもあります。切り傷や打撲、慢性的な血行不良にも適しています。
まとめ
月経過少には血虚、腎虚、瘀血、痰湿といったさまざまな原因があり、タイプに応じて適切な治療が必要です。それぞれの原因に応じた漢方薬を使用し、血を補う、腎を強化する、血行を促進する、痰湿を取り除くといったアプローチが取られます。これらの治療は、体全体のバランスを整え、月経を正常化することを目的としています。