【真実】漢方薬は効果ない?いいえ、処方者の問題です。

あるお医者さんは言いました。漢方薬は効果がないです。エビデンスもないと。でも効果があるという人もいる。いったいなぜなのでしょうか?

漢方薬が「効果がない」と一括りに断言することは、確かに誤解を招きやすい表現であり、事実とも異なります。漢方薬や中医学は長い歴史と臨床経験を背景に、体質改善や症状の緩和、全身のバランスを整えることなどに用いられ、現代医療でも医薬品として認可された漢方薬が多く使用されています。以下に詳しく説明いたします。

漢方薬の効果と医薬品としての認可

  1. 科学的エビデンスと医薬品としての位置づけ

    • 漢方薬の多くは、臨床試験や長年の臨床実績から効果が認められ、医薬品としての認可を受けています。たとえば、ツムラやクラシエなどが製造する漢方薬は、厳格な基準に沿った品質管理が行われています。

    • 医薬品として認可されている以上、厚生労働省によって安全性と有効性が確認されている薬剤です。効果が全くなければ医薬品として承認されることはありません。

  2. 作用メカニズムの違い

    • 漢方薬は症状そのものを直接抑えるというよりも、体全体のバランスを整えることで、根本からの改善を目指すことが多いです。したがって、即効性を求められる病気の治療には適していない場合もありますが、慢性的な症状や体質改善には効果があるとされています。

    • 西洋医学は「病因を特定し、直接攻撃する」アプローチですが、中医学は「全身の調和を整え、病気に対する抵抗力を引き出す」アプローチを取ります。このアプローチの違いを誤って「効果がない」と解釈している可能性があります。

「漢方薬に効果がない」という発言の問題点

  1. 偏見や誤解を招く

    • 「効果がない」という発言は漢方の知識が十分にない人に誤解を与え、漢方薬全体が無効であるかのような偏見を広めるリスクがあります。西洋医学のみが優れているとする発信は、一方的な見方であり、実際には患者の症状や病状に合わせて、漢方と西洋医学を併用することで効果が上がる場合もあります

  2. 科学的な評価と現場での利用実績を無視している

    • 漢方薬が医療現場で使用されているのは、実績と科学的根拠があるからです。中医学や漢方薬の評価を科学的な観点や実例を無視して「効果がない」と言うのは、科学的に偏った見解と言えます。

  3. 優生思想に関連する偏見の可能性

    • 「西洋医学が優れている、伝統医学は劣っている」という見解は、優生思想や文化的優越感の一種とも考えられます。これは過去に、他文化や伝統医療を「科学的でない」と軽視してきた西洋中心の考え方に近いものです。現代では西洋医学だけでは対応しきれない慢性疾患や生活習慣病に対し、伝統医学が補完医療として重要な役割を果たしていることも認識されています。

中医学の効果を最大限に引き出すために

  • 西洋医学と中医学の補完:現在では、東洋と西洋の医療の長所を生かし、補完的に活用することが多くの国で推奨されています。特に日本では「統合医療」として、両者を使い分ける医師も増えています。

  • 個別の症状や体質に合わせた処方:中医学は「一人一処方」とも言われるほど個別性を重視します。適切な診断と体質に合わせた漢方処方によってこそ、本来の効果が発揮されるのです。

漢方薬は特定の状況や症状において確かな効果が期待できる医薬品です。「漢方薬は効果がない」と断言する発信は誤解を招く可能性が高く、効果が認められているものを否定することは患者の治療の選択肢を狭める恐れがあります。

漢方薬の効果が出ない場合に、適切な弁証論治が行われていないことが原因となるケースは多いです。中医学では、個々の体質や病状、生活環境に応じて処方を決定することが不可欠であり、これが「弁証論治」の要です。このプロセスを十分に行わずに処方された漢方薬が効果を発揮しない場合、その原因を漢方薬そのものに求めるのは問題があります。以下に理由を詳しく説明いたします。

弁証論治と漢方薬の効果

  • 弁証論治とは、患者の体質や病状の根本原因を見極め、それに合った治療方針(論治)と薬(漢方薬)を組み合わせる手法です。

  • 中医学では、同じ症状でも、**「寒証」「熱証」「虚証」「実証」**など、細かく異なるパターン(証)があると考えられ、これにより処方が異なります。

  • 例えば、同じ「咳」でも、寒証の咳には温める処方を、熱証の咳には冷ます処方を使います。これを無視すると、漢方薬の効果が発揮されないだけでなく、逆効果にもなりかねません。

弁証論治を行わない場合のリスク

  • 誤った処方:体質に合わない処方は効果がなく、症状を悪化させることもあります。弁証論治が不十分なまま漢方薬を処方すれば、効果が出ないことが予想されます。

  • 西洋医学と中医学の違いを理解していない:西洋医学の治療法と異なり、漢方薬は症状そのものよりも、体の全体的なバランスを整えることを目的とするため、弁証論治なしでの「症状だけを対象にした処方」は不十分です。

「漢方薬が効かない」のは処方スキルの問題

  • 適切な知識と経験が必要:漢方薬が医薬品である以上、その処方には専門的な知識が求められます。特に、弁証論治は簡単な診断スキルではなく、熟練した技術と経験が必要です。つまり、漢方薬の効果が発揮されない原因が処方者にある場合も少なくありません。

  • 医者の「腕」と漢方薬の効果:弁証論治が不十分な場合、当然ながら効果は期待できません。漢方薬の効果が出ない場合、それは薬そのものが無効なのではなく、適切な処方が行われていない可能性をまず考えるべきです。

中医学の治療効果と「処方の的確さ」

  • 漢方薬の効果を発揮させるには、正確な診断と処方が必要:これは西洋医学と同様で、適切な診断に基づかない薬は効果を発揮できません。適切な処方ができない場合、患者が「漢方は効かない」と誤解してしまう恐れもあります。

  • 包括的なアプローチ:漢方薬は単に症状を抑えるものではなく、体質改善や全体のバランスを図るものです。適切な弁証論治ができないまま、「漢方薬は効果がない」と結論付けるのは、漢方薬本来の意味や価値を損なっているといえます。

結論

漢方薬が効かない場合、その原因は処方者の弁証論治の不足にあることも多く、医師や処方者が正しい知識を持っていない場合に「効果がない」とされるのは大変問題があります。適切な診断と処方が行われれば、漢方薬は患者の健康をサポートし、中医学ならではの効果を発揮します。したがって、漢方薬の効果の有無を論じる際には、まず「適切な弁証論治が行われたかどうか」に目を向けるべきでしょう。

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