【周期調節法が凄すぎる!】各周期と養生法 中医婦人科学

中医学における周期調節法は、不妊治療や婦人科系の健康維持において重要な役割を果たしている方法です。この治療法は、1980年代に中国の南京中医薬大学附属病院の夏桂成先生によって考案され、西洋医学の月経周期の概念を中医学的な視点で解釈することで、患者の体質や周期に合わせた漢方治療を行うものです。周期調節法は、月経周期に応じた体の変化を「陰」「陽」の概念に基づいて捉え、それに適した漢方治療を行うことで、妊娠率の向上や生理不順の改善に繋げることを目的としています。

周期調節法の背景と考案

夏桂成先生は、西洋医学でいう「低温期」と「高温期」を中医学の「陰」と「陽」に分類し、各期間に適した治療を行うことで妊娠率が大幅に向上することを発見しました。彼の研究は当初、不妊治療を主な目的としたものでしたが、この周期調節法は現在では妊娠を希望しない患者にも、月経周期を整えるために用いられています。また、西洋医学の診断や検査結果に基づいて処方が行われるため、非常に効果的であるとされています。

周期調節法は、患者の体質を改善するだけでなく、月経周期に応じて漢方治療をカスタマイズすることで、より精度の高い治療が可能となります。たとえば、単に体質改善のみでは、100%の確率で妊娠が保証されるわけではありません。しかし、患者の月経周期の特徴に合わせて陰や陽のバランスを整えることで、妊娠率の向上が期待できることが確認されています。

周期調節法における各周期の役割と漢方の対応

周期調節法は、月経周期を大きく4つの期間に分け、それぞれに応じた治療を行います。各期間の特徴と、それに合わせた治療方法について以下に詳述します。

1. 月経期(活血・補血)

月経期は、子宮内膜が剥がれて血液が排出される時期であり、中医学ではこの期間を「陰」に分類します。この時期は、活血や補血が重要であり、漢方を用いて血流を促進し、子宮内膜の健康を保つことで、体の調子を整えます。特に、活血により子宮内の血液の循環がスムーズになり、生理に伴うトラブルを回避することができます。

2. 卵胞期(補血・補腎)

卵胞期は、エストロゲンの分泌が増加する時期であり、この時期には補血と補腎が重視されます。補血と補腎により、エストロゲンの働きをサポートし、卵胞の成長を促します。特に、腎を補うことで生殖機能が向上し、ホルモンバランスが整いやすくなります。これにより、健康的な排卵が促され、妊娠しやすい体の状態が作られます。

3. 排卵期(陰陽調和)

排卵期は、卵巣から卵子が放出される時期であり、陰と陽が交差するタイミングと捉えられます。この時期には、陰と陽のバランスを整えることが重要です。中医学では、体内のエネルギーの流れや気の調和を保つことで、排卵をスムーズに行わせることを目指します。漢方を用いて、体が持つ自然な力を引き出し、陰陽のバランスを保つことで、排卵機能が高まります。

4. 黄体期(補腎・補陽)

黄体期はプロゲステロンが分泌される時期で、高温期とも呼ばれます。この時期は「陽」に分類され、補腎と補陽が重要視されます。補腎と補陽により、体温の安定が保たれ、ホルモンのバランスが整えられます。特に、補腎により体を温める効果が期待でき、妊娠に向けた最適な環境が作られます。また、この時期はエネルギーが消耗しやすいため、体を冷やさないことが重要です。

周期調節法の目的とその効果

周期調節法の目的は、月経周期に応じた漢方治療を行い、体のバランスを整えることです。特に、血の巡りや腎の機能を調整することで、ホルモンバランスが改善され、妊娠しやすい体質が作られます。さらに、周期調節法は生理不順や生理痛といった婦人科系のトラブルを予防・改善するためにも効果的です。生理周期に合わせた漢方治療により、子宮内膜の健康が保たれ、ホルモン分泌がスムーズに行われるため、妊娠以外にも健康維持に役立ちます。

また、周期調節法は、単なる治療に留まらず、養生としても活用されます。月経期には活血を用いて血の流れを促進し、日常生活での食事や休息にも配慮することで、心身のバランスを保つことができます。この方法は、生理周期を整えるだけでなく、婦人科系のトラブルを予防するための一環としても用いられています。

周期調節法の現状と中国における医療体制

中国の医療システムでは、西洋医学と中医学が融合した中西結合が進んでいます。南京中医薬大学附属病院はその一例で、漢方薬と西洋薬を使い分けることで、両者の長所を活かした治療が提供されています。中医学では、体質や周期に応じて漢方薬を用いることが一般的で、各患者の状態に応じた治療が行われます。

夏桂成先生が勤務していた南京中医薬大学附属病院は、ベッド数1000以上、外来患者数が1日5000人を超える規模の大病院で、国内外から患者が訪れます。これに比べ、日本の大規模病院(例えば東大病院)でも、外来患者数は1日3000〜4000人程度です。このように中国では大規模な医療体制が整っており、患者の診察が次々と行われるため、待合室や診察室には常に多くの人がいる光景が見られます。

日本での周期調節法の利用と薬事法の制限

日本では、周期調節法は婦人科系の治療や養生としても幅広く利用されていますが、「療法」という用語は薬機法により制限されています。そのため、日本では「周期療法」と呼ばれることはなく、別の表現として「周期調節法」が用いられています。また、日本では中医学の資格に関しても制限があり、国際的に認められる「国際中医師」などの名称は使用が許可されていません。このような制約がある一方で、中医学と西洋医学の良いところを組み合わせることで、日本でも婦人科系の漢方治療や養生が進められています。

1. 「療法」という言葉が使えない理由

日本の薬機法は、医薬品や医療機器、医療行為に関して厳しい規制を設けています。「療法」という言葉は、一般的に病気や症状の治療を意味し、法的には医師や認可された医療機関が提供する医療行為に該当するとみなされます。そのため、漢方や中医学であっても、「療法」という言葉を用いると、医師の資格が必要な医療行為を提供していると誤解される可能性があり、規制の対象となります。

したがって、漢方や中医学における治療方法を表現する際は「療法」の代わりに「調整法」や「ケア」「サポート」などの用語が使われます。これにより、法律に抵触することなく、漢方や養生の考え方を広めることが可能になります。

2. 「国際中医専門医」を「国際中医師」と呼べない理由

日本では、「医師」という表現は、医師法に基づく国家資格を持つ者のみが使用できるとされています。医師法により、医師資格のない者が「医師」という名称を名乗ることは禁じられているため、例え国際的に「国際中医師」などと呼ばれる資格であっても、日本国内では「専門医」などの別の表現を使う必要があります。

「国際中医専門医」は、国際的に中医学の知識や技能を認定する資格ですが、日本の医師免許とは異なるため、「医師」という表現は許されず、代わりに「専門医」や「中医学士」などの名称が用いられます。これは、医療従事者が患者に与える影響を考慮し、法の観点から医療資格の管理が厳格に行われているためです。

このように、日本の薬機法や医師法のもとで医療資格や医療行為に関する言葉は厳格に制限されています。特に患者や消費者に対して誤解を与えないよう、東洋医学や漢方関連の資格や治療表現にも細心の注意が払われており、「療法」や「医師」などの言葉が避けられています。

周期調節法の養生への応用

周期調節法は、妊娠を希望しない場合でも生理周期を整えるために活用されています。特に、生理期間には活血を用いて血の流れを促し、子宮内膜の健康を保つことが推奨されます。さらに、食事や生活習慣にも配慮し、周期ごとの特徴に合わせたケアを行うことで、心身のバランスが整えられ、健康的な生活が送れるようになります。養生として、月経期に体を温める食材を摂取したり、排卵期にはリラックスを心がけるなど、食事や生活習慣の改善が推奨されます。

まとめ

中医学の周期調節法は、西洋医学の月経周期に基づいて陰陽のバランスを整え、妊娠率の向上や生理不順の改善に役立つ方法です。1980年代に夏桂成先生が考案したこの方法は、血を補い腎を強化することでホルモンバランスを整え、妊娠希望者のみならず、女性の健康維持にも効果的であることが確認されています。中国では中西結合の医療体制が整い、西洋医学と中医学の良い部分を活かした治療が普及しています。周期調節法は、日本でも婦人科系の養生法として応用されており、生理周期に応じた漢方治療や生活習慣の見直しが推奨されています。

この方法は、妊娠を望む方だけでなく、生理周期の安定や婦人科系のトラブルを改善したい方にも効果的で、女性の健康維持に大きな役割を果たしています。

いいなと思ったら応援しよう!