【肺と腎に】滋陰降火湯(じいんこうかとう)は虚熱の炎症を静める!

滋陰降火湯(じいんこうかとう)は、陰虚(体内の潤い不足)から生じる虚熱や炎症を鎮め、特に肺や腎の陰虚症に効果的な漢方薬です。陰虚により乾燥した体内に潤いを補いつつ、潤い不足から発生した熱を抑える特徴を持っています。この処方は、陰虚による咳や喉の渇き、ほてりなどの症状に加え、慢性的な炎症や炎症性の咳に対して使用されることが多いです。以下、その成分ごとの役割や、使用における効果と注意点についてさらに詳しく説明します。


1. 主な成分とそれぞれの役割

1.1 麦門冬(ばくもんどう)と天門冬(てんもんどう)

  • 麦門冬と天門冬は、どちらも潤肺止咳(じゅんぱいしがい)作用があり、肺を潤して乾燥からくる咳を鎮めます。特に、体の陰分(潤い)を補う働きが強いため、陰虚体質の方の乾燥した咳や喉の渇きに非常に効果的です。

  • 違いと組み合わせの理由:麦門冬と天門冬は、同じような作用を持ちながら異なるアプローチで陰を補います。麦門冬は、主に肺の陰を補い、乾燥した咳を和らげる働きが強い一方、天門冬はより広範囲の陰不足を補い、腎を中心とした体全体の潤いを補う特徴があります。この2つを組み合わせることで、より強力に陰を補い、体の乾燥や咳を抑える効果を増強しています。

1.2 地黄(じおう)、芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)

  • 地黄、芍薬、当帰は補血と滋陰の作用があり、体の血液や陰分(潤い)を補います。これにより、体内の潤いが不足して発生した炎症や乾燥症状を緩和するのに役立ちます。

  • 血と陰の補給:地黄と当帰は特に血を補う作用が強く、貧血や血虚がある陰虚体質の人にも適しています。陰虚と血虚(血液が不足している状態)はしばしば重なるため、これらの成分によって体の潤いと血液を同時に補うことで、乾燥や熱感が改善されやすくなります。

  • 芍薬の鎮静作用:芍薬は鎮静作用も持ち、痛みや緊張を和らげることから、炎症による不快感を軽減する役割も果たしています。特に、体が乾燥して熱を帯びるときの落ち着きやリラックスにも役立ちます。
    ※ほぼ四物湯ですよね。

1.3 黄柏(おうばく)と知母(ちも)

  • **清熱作用(体の熱を冷ます効果)**を持つ黄柏と知母は、特に陰虚によって発生する虚熱(潤い不足による熱感)を和らげます。陰虚が進行すると、潤いが少ないために体が冷却されず、ほてりや炎症が発生しやすくなります。

  • 黄柏と知母の違いと役割:黄柏は、身体にこもった熱を抑えるために効果的で、体の下半身にある熱を特に冷まします。知母は、乾燥した熱感やほてりに作用する効果が強く、体の上半身(特に頭や喉など)にこもる熱を冷まします。これにより、陰虚によるほてり、乾燥した咳、喉の渇きといった症状が緩和されます。

1.4 白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)、陳皮(ちんぴ)

  • 健脾(けんぴ)作用(消化機能を助ける効果)と理気作用(気の巡りを良くする効果)を持ち、胃腸を整える役割を果たします。滋陰降火湯には陰を補う重めの生薬が含まれているため、胃腸に負担がかかりやすく、消化吸収を助ける成分が含まれています。

  • 胃腸へのサポート:白朮は消化機能を高め、体内の余分な水分を取り除きつつも、胃腸の働きを整えることで陰分の吸収を促します。甘草は他の生薬の調整役であり、薬のバランスを保つ働きをします。陳皮は理気作用で気の巡りを改善し、胃腸の働きを助けます。


2. 滋陰降火湯の作用と適応症

滋陰降火湯は、陰虚によって発生する虚熱や炎症性の咳、乾燥した咳、ほてりや喉の渇きなどに使用されます。以下が主な作用と適応症です。

2.1 虚熱を冷まし、炎症を抑える

滋陰降火湯は陰を補いながら虚熱を冷ますため、体の乾燥と熱感を同時に緩和します。陰虚が進行すると、体内に十分な潤いがなくなり、冷却が追いつかないために熱感が発生します。この虚熱は、外から見えにくいものの、体内では不快な熱さや炎症、のぼせなどの症状が引き起こされます。

  • 熱感の緩和:特に黄柏や知母が虚熱を冷ますため、陰虚が原因の発熱やほてり、喉や胸の熱感に適しています。のどの奥が熱く感じる、顔や頭がのぼせるといった虚熱の症状に効果的です。

  • 炎症性の咳:陰虚が進行すると、体内の乾燥と熱が咳を引き起こすことがあります。この場合、麦門冬や天門冬が潤いを補いながら咳を緩和し、黄柏や知母が炎症による熱を抑えるため、咳や喉の乾燥が改善されます。

2.2 肺腎陰虚の改善

滋陰降火湯は、肺や腎に陰虚がある場合、陰を補い、乾燥した体内を潤すことで症状を和らげます。例えば、咳が長引いたり、喉が常に乾くといった症状がある場合、滋陰降火湯が有効です。

  • 慢性の乾燥性咳:麦門冬湯や他の陰虚用漢方が効かないような、乾燥性で長引く咳に対して、滋陰降火湯が効果を発揮します。炎症が強い場合や喉や胸の熱が気になる場合にも適しています。

  • 腎の陰虚による熱感:腎の陰虚は、全身の潤い不足やほてり、体のだるさを伴うことがあります。特に下半身の虚熱が強い場合には黄柏が効果を発揮し、腎の陰を補うことで体の潤いを保ちます。


3. 使用上の注意点

滋陰降火湯は、体の潤いを補いながら熱を冷ます効果があるため、陰虚による乾燥や炎症が主な症状である場合に使用されますが、使用にはいくつかの注意点があります。

3.1 胃腸が弱い場合の注意

滋陰降火湯には、やや重めの成分が含まれているため、胃腸が弱い人には負担がかかることがあります。そのため、胃腸に不快感を感じる場合やお腹が緩くなる場合には、他の陰虚対応の漢方薬(麦門冬湯など)に切り替えるのが適しています。

3.2 長期間の使用は避ける

滋陰降火湯は虚熱や陰虚が強いときの一時的な緩和に適しており、長期間の使用は避けた方が良いとされています。症状が改善したら服用を中止するか、専門家に相談して適切な継続方法を確認するのが望ましいです。


まとめ

滋陰降火湯は、陰虚体質によって発生する虚熱、乾燥した咳、ほてり、喉の渇きといった症状に効果的な漢方薬です。特に炎症が強く、陰を補うことで体の乾燥と熱感を同時に和らげる処方となっています。炎症性の咳や長引く乾燥性の咳に対しても効果を発揮し、陰虚の症状が強いときに適していますが、胃腸が弱い方には負担がかかることもあるため、注意が必要です。

※あんまり使われない薬とのことで、味⻨地⻩丸での代用で乗り切れるそうです。

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