【精神安定と心の生薬】心についての前提知識⑥
中医学において、心の健康を改善するために用いられる生薬を解説します。これらの生薬は、心を養い、精神を安定させるために使用される重要なものです。主に、養心安神や重鎮安神として分類され、それぞれ特有の効果があります。
1. 酸棗仁(さんそうにん)
科名: クロウメモドキ科(Rhamnaceae)
性質と効能: 酸棗仁は、鎮静作用がある生薬で、不眠や精神的不安に効果的です。特に「心血を補う」ことで心の滋養を行い、精神を落ち着かせる働きがあります。リラックスを促進し、深い眠りをサポートします。
主な適応症: 不眠、夢の多い眠り、イライラ、動悸など。心血虚の状態に用いられます。
2. 龍眼肉(りゅうがんにく)
科名: ムクロジ科(Sapindaceae)
性質と効能: 龍眼肉は心血を補い、精神を安定させる効果があります。甘味があり、元気を回復させ、心の滋養に役立ちます。疲労感や精神的ストレスの緩和に有効です。
主な適応症: 健忘、心神不安、不眠、疲労感、倦怠感。心を養うために用いられます。
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3. 柏子仁(はくしにん)
科名: ヒノキ科(Cupressaceae)
性質と効能: 柏子仁は、心血を補い、精神を安定させる生薬です。心の滋養と同時に腸を潤し、便通を改善する働きもあります。不眠や記憶力の低下など、心血虚の状態に効果があります。
主な適応症: 動悸、健忘、不眠、便秘。心の不調による症状を改善します。
4. 遠志(おんじ)
科名: ヒメハギ科(Polygalaceae)
性質と効能: 遠志は、心を安定させ、記憶力や集中力を高める生薬です。心と腎をつなげる働きがあり、精神活動の安定に寄与します。不安感や健忘を改善し、精神的な疲労や緊張を和らげます。
主な適応症: 不安、健忘、動悸、睡眠障害。精神的な疲労や緊張に効果的です。
5. 竜骨(りゅうこつ)
科名: 化石(鉱物性)
性質と効能: 竜骨は鎮静作用が強く、精神の高ぶりや興奮を抑える効果があります。精神的な不安や興奮状態を沈静化し、心を安定させます。重鎮安神のカテゴリーに属します。
主な適応症: 不安感、イライラ、精神的興奮、寝汗、夢を多く見る症状。過興奮を鎮めます。
6. 牡蛎(ぼれい)
科名: 二枚貝綱(鉱物性)
性質と効能: 牡蛎は竜骨と同様に鎮静作用を持つ鉱物系の生薬で、精神を静め、心の安定に貢献します。精神的な緊張や不安を緩和し、心を落ち着かせる働きがあります。
主な適応症: 過剰な緊張、不安感、寝汗、不眠。精神の高ぶりを抑えます。
7. 茯苓(ぶくりょう)および茯神(ぶくしん)
科名: サルノコシカケ科(Polyporaceae)
性質と効能: 茯苓は、心を落ち着けると同時に、体内の余分な水分を除去する効果があります。気を巡らせて精神を安定させ、リラックスを促進する生薬です。茯神は特に精神安定作用が強く、心の不安を和らげます。
主な適応症: 不安、不眠、めまい、体内の水分代謝異常。心の安定を保ちます。
生薬の分類と作用メカニズム
養心安神(心を養い、安定させる): 酸棗仁、龍眼肉、柏子仁、遠志、茯苓は心を滋養し、精神の不安を取り除く作用があります。心血を補い、穏やかな精神状態をサポートします。不眠や精神的疲労の改善に適しています。
重鎮安神(心を鎮める): 竜骨と牡蛎は精神の高ぶりを沈静化する作用を持ち、興奮状態や緊張感を和らげます。特に、過剰な精神活動を抑えるために使用されます。
心の健康を保つ実践的なアドバイス
リラックス習慣: 深呼吸や瞑想を取り入れることで、心を安定させやすくなります。適度な運動やリラックスできる活動を行うと、ストレスが緩和されます。
生薬の取り入れ方: 養心安神の効果がある食材(なつめなど)や、ハーブティー(カモミール、ラベンダーなど)を日常に取り入れるのもおすすめです。
ストレス発散法: 軽い運動やダンスなどで適度に体を動かすことは、心の緊張をほぐし、心身のバランスを整えるのに役立ちます。
これらの生薬と生活習慣を組み合わせることで、心と体の健康を維持し、穏やかで安定した日々を過ごせるようになります。