【食療法の基本原則】第二原則「弁証をしっかり行う」中医養生学
食療法の基本原則:第二原則「弁証をしっかり行う」
中医学では、病態を正確に判断し、適切な治療を行うために「弁証(べんしょう)」が重要です。この弁証を基に食材や調理法を選ぶことが、食療法でも大切なポイントです。第二原則では、弁証を通じて体の状態を正確に把握し、それに応じた食事を提供することが強調されています。
1. 弁証とは
弁証とは、患者の状態を多角的に分析し、「表裏寒熱虚実陰陽」の6つの要素を用いて病態を分類する中医学の診断方法です。
1-1 八綱弁証(はっこうべんしょう)
表裏(ひょうり):
病の位置を示す。表(体表)か裏(体内)かを判断。
例: 風邪(表)、消化器の問題(裏)。
寒熱(かんねつ):
病の性質を示す。寒(冷え)か熱(ほてり)か。
例: 冷えによる消化不良(寒)、熱による炎症(熱)。
虚実(きょじつ):
体力の程度を示す。虚(不足)か実(余剰)か。
例: 気血不足(虚)、邪気の停滞(実)。
陰陽(いんよう):
病態全体の性質を示す。陰(冷え、潤い不足)か陽(熱、活動過剰)か。
例: 陰虚(潤い不足)、陽盛(過剰な熱)。
2. 食療法における弁証の活用
弁証の結果に基づいて、適切な食材や調理法を選びます。
2-1 表裏の判断
表(体表の問題):
風邪の初期症状など。発汗を促す食品を使用。
例: 生姜湯、ネギ。
裏(体内の問題):
消化不良や便秘など。腸を調整する食品を使用。
例: 山薬、かぼちゃ。
2-2 寒熱の判断
寒(冷え):
温性食品で体を温める。
例: 生姜、シナモン、ネギ。
熱(ほてり):
涼性食品で体を冷ます。
例: 梨、緑豆、冬瓜。
2-3 虚実の判断
虚(不足):
補う食品を選ぶ。栄養価が高く、消化に優しいもの。
例: お粥、鶏肉、なつめ。
実(余剰):
排出や調整を助ける食品を選ぶ。
例: 大根、海藻。
2-4 陰陽の判断
陰(冷えや潤い不足):
潤いを補う食品を選ぶ。
例: 白キクラゲ、百合根、豆腐。
陽(熱や活動過剰):
熱を抑える食品を選ぶ。
例: 緑豆、冬瓜、キュウリ。
3. 食療法は穏やかな治療法
薬物治療との違い:
食材は薬物ほど強い効果がないため、多少の誤差があっても大きな問題にはなりません。
安全性が高く、長期的な体調管理に適しています。
弁証の適用:
病態を正確に判断しつつ、柔軟に食材を選ぶ。
例: 冷え性の人には温かいスープを中心とし、熱性の人には涼性のサラダを加える。
4. 弁証を行う際のポイント
体調の観察:
舌診、脈診、便の状態、肌の質感などを確認。
例: 舌に白苔があれば寒邪の可能性。
問診で状態を把握:
日常の食習慣、体調の変化、睡眠状態を尋ねる。
例: 疲れやすさやストレス状況。
症状に合った調整:
食材の温性・涼性を調整し、季節や環境に合った料理を提供。
5. 弁証に基づいた具体例
風邪の初期症状(表・寒・実):
生姜湯で発汗を促し、冷えを取り除く。
胃腸の弱り(裏・寒・虚):
温かいお粥や山薬で胃腸を温め、気を補う。
便秘(裏・熱・実):
梨や緑豆で熱を冷まし、腸を潤す。
慢性疲労(裏・寒・虚):
鶏肉スープやなつめで気を補い、体を温める。
6. まとめ
弁証を行うことで、体の状態を的確に把握し、その人に合った食材や調理法を選ぶことができます。食療法は薬物治療ほど厳密ではありませんが、弁証の結果を基に実践すれば、体調の改善や予防に効果を発揮します。
柔軟性を持ちながら、体に穏やかに作用する食療法を活用することが、健康を維持する鍵となります。