#18 「お人柄」を紐解く③~多様性の中に活路あり!
転職・キャリア形成に役立つ「お人柄」とは何なのか?これを解明しようというのが本シリーズ。
1回目(#16)は自分の経験をもとに「お人柄」戦略の構成要素について考えました。
「お人柄」戦略=コト思考×シェアドリーダーシップ
でしたね。
そして2回目(#17)は客観性を上げ、コミュニケーションの癖といったパーソナリティを切り口にして「お人柄」戦略の特徴を紐解きました。
友愛と忍耐は「お人柄」戦略のキーワードと言えそうでしたね。
また、その対極にある「能あるリーダー」戦略の存在についても考察しました。
しかし、企業はやはり「能あるリーダー」を求めるのではないか?
今回は、「能あるリーダー」1極になることの危険性を紹介し、その上で「お人柄」戦略の有効性と需要について紐解きたいと思います。
支配的なリーダーの下で起きた悲劇
今回参考にした文献はこちら、「多様性の科学」(マシュー・サイド著、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
こちらに「能あるリーダー」1強体制が陥った興味深くも悲劇的なエピソードが載っていたので、紹介します。
本書は、「古来、人間は強いリーダーのもとで幾多の困難を乗り越え進化した。リーダーが決定してメンバーが従うという構図が理にかなっている。
しかし現在のように進化し、対処すべき問題が複雑になると、そうした支配的構造がかえって悪く働いてしまうことがある」と説きます。
例のひとつとして挙げられているのが1978年12月28日、ユナイテッド航空173便のエピソード。
同便は飛行中、車輪に関するトラブルが発生。機長らはその対処に追われる中、燃料切れの状態に気付かなかった。
否、下位クルーのひとりは気づいていたのですが、率直に伝えることができなかった。
機内のやり取りはレコーダーに残ってしまう。下からの進言で機長が燃料状況に気付いたなどと知られしまっては、機長の尊厳に傷がつく。機長ならいずれ状況に気付くだろう…。
燃料がいよいよなくなる段階になって、クルーの悲痛な報告とともにようやく機長は状況を把握したのですが、時すでに遅く、飛行機は墜落してしまったのでした。
この事故に限らず、30件以上の墜落事故が、乗組員が機長に重要な情報を進言できずにいたことに起因していた、と書かれています。
つまり、支配的なリーダーの方を全員が向いているような状況では、せっかくの複数の視点が発揮されなくなってしまうことを示しているのです。
不測の事態に対応する組織
現在は先の変化を予測できない時代。
危険な状況に陥っているのにリーダーの盲点に入り込んでしまい、ビジネスが詰んでしまうことが起こりやすくなっています。
そんな状況だからこそ、視点の多様性と、それがきちんと運営に反映される体制が必要、と考えられます。
そこで注目されているのがシェアドリーダーシップ。
従来のピラミッド構造のリーダーシップに対し、状況に応じて適した人がリーダーの役割を執るという構造です。
チームメンバーは、ある状況下ではリーダーとなり、並行する別の状況にはメンバーとして働くことになります。
全体としては誰かが仕切って
計画→実行→評価→対応
といったサイクルを回しつつ、適当なリズム(=業界の特性に応じた、ちょうどいい間隔で)で
状況の観察→メンバー間のアウトプット→方向づけ→対応
といった活動をやっていき、見つかった要対応案件には最適な人がリーダーシップをとる…というイメージです。
※以前航空自衛隊の方の講演を拝聴しましたが、不測の事態への対応が仕事である国防・軍事関係者は上述のような思考なのだそうです。参考図書はコチラ。
こういった状況になると、強力な牽引力を持ったキャラクターばかりでは組織は成り立たず、かといってリーダーばかりを見ている主張の少ない人だけでも成り立たない。とがった個性をつないでいく粘土のような柔らかさを持ったキャラクターが必要であり、それこそが友愛と忍耐の「お人柄」…と考えられるわけです。
「お人柄」戦略をとる人は、VUCA時代を生き残りたい組織にこそ需要がある。
その背景が垣間見えたところで、ちょっと長くなりそうなので今回はここまでとして、次回、「お人柄」の磨き方について考えてみようと思います!(続く)