お休み生活

仕事をお休みしてから2ヶ月ちょいが経ちました。なんの予定もないのに、驚くほどあっという間に毎日が過ぎていきます。おもくるしい話になってしまいますが、お休み生活の様子をお伝えします。

お休みをする前のぼくは、生活をするのがとても下手くそでした。ご飯を食べて、寝るという基本中の基本ができなくなってしまいました。仕事も自分のキャパを超えるほど抱えてしまったり、知らず知らずのうちにいろんなストレスを溜め込んでいました。だんだんと眠れない日が続き、食欲もなくなり、コーヒーとお酒が主食の生活をしていました。

どんどん元気がなくなっていって、仕事も全く手に付かなくなってしまいました。気づいた時には限界を超えていて、ぼくの中にお休みをする以外の選択肢は無くなっていました。考えたり迷ったりすることも無く、すぐに会社に電話をして、全ての仕事を休ませてもらうことになりました。

お休みが決まった次の日、心療内科へ行きました。とにかく眠れなかったので、睡眠薬をもらいたくて行ったのですが、そこで出された診断書にはうつ病と書かれていました。その文字を見た時、正直ぼくは

「え、これうつ病なの?これでうつ病だったら、何年も前からうつ病ですけど」

と思いました。確かに元気はないけど、今までだってそんな時期もあったし、ずっと不眠気味で生きてきたし、それがちょっと悪化しただけだと、うつ病と診断されたことがあまり腑に落ちませんでした。

でも今はうつ病の自覚がとてもあります。

お休み生活が始まると、気持ちもどん底まで落ち込んで、一気にいろんなことができなくなってしまいました。とにかく寝ることと、食べることで精一杯でした。あとからうつ病のことを調べてみたら、これもうつ病の症状らしく、やっと休めると思った途端に調子が悪くなるそうです。

今まで普通にできていたことが、魔法が解けたみたいにできなくなってしまいました。人に会うことも、本を読むことも、映画を見ることも、音楽を聴くことも、笑うこともできませんでした。できなくなってみると「しょうもないことで笑えるって、魔法みたいだな」と思いました。こうして、魔法が使えなくなった魔法使いのような生活が始まりました。

最初の頃は、とにかく寝ることと、食べることだけしっかりやることにしました。睡眠薬を飲み始めたので、嘘みたいに眠れました。からだは痩せ細っていて、体力もかなり落ちていたため、食欲はなかなか回復しませんでしたが、なるべく食べるようにしました。すこし元気のある時は、外を歩いて日光を浴びるようにしたり、ひたすら部屋の掃除をしていました。

一ヶ月ほど、そんな生活が続きました。

それからは本当に少しずつ、今日はこれをやってみようと試しながら、一つ一つできることが増えていく生活でした。普通にできていたことができなくなると、ずっとこのままなのかと、不安になって焦ります。でも、うつ病は焦ることがとても良くないらしく、とにかくできることだけをやって過ごしました。

うつ病って脳の病気で、過度なストレスが続くことが原因で脳が正常に働かなくなってる状態らしいです。それを知ってから、いろんなことができないことにも納得できました。映画を観たり、本を読んだりしようとしても、集中力が全く無いので入ってきません。話の前後が繋がっていかない感覚でした。

音楽も、集中力が無いとメロディとして認識できなくて、雑音として認識してしまうみたいで、ずっと聴けませんでした。お休みするまでは、毎日当たり前のように音楽を聴いていましたが、聴けるようになったのはだいぶ元気になってからでした。

新しいことを覚える機能も低下するらしく、昨日のことを覚えてなかったり、人に会った時に同じ話をしてしまったり、買ったことを忘れてまた同じものを買ってしまったりしました。

とにかく、普通のことができなくなってしまうのです。

自分でも、人はこんな風になってしまうんだと思いました。そして、同じような人がたくさんいることも知りました。ぼくがこうなる少し前に、友達も同じように仕事をお休みしていて、このお休み生活の間とても支えになりました。お互いのことが理解できるし、気を使わずに話せる唯一の相手でした。

ぼくにはたまたま、身近にそういう人がいたのでよかったですが、誰にも言えずに抱え込んでしまっている人がたくさんいるのだと思います。

ぼくもお休みしてから、うつ病ということをほとんど誰にも言えなかったし、仕事をお休みしたことを知って、ご飯や遊びに誘ってくれた人もいましたが、誰にも会えませんでした。うつ病って言うと重く聞こえるし、余計に心配されてしまいそうで言えませんでした。

うつ病のことを隠しながら会うのも体力がいるし、元気が無さそうでも、元気そうにしてても、気をつかわせてしまいそうだなと考えたりして、会いたい気持ちが会っても、会えませんでした。

このまま、うつ病のことは言わないでおこうとも考えました。でも、うつ病になって、せっかくうつ病のことを知れたので、ぼくが知ったことを周りの人にも知ってもらいたいなと思いました。

それと。ぼくもお休みしている間、同じような人のことがとても知りたくなりました。どんなことを思っていたり、どんな生活をしているのかを見て、それが支えになったのです。同じように、誰かの支えになったらいいし、周りにうつ病の人がいる人の参考になったらいいし、無理して生活をしている人がすこしでも休めるきっかけになったらいいなと思います。

ぼくは2ヶ月経って、毎日ちゃんと眠れて、ご飯も食べれています。本も読めるし、映画も見れるし、音楽も聴けるし、たまに友達とか先輩と会ったり、しょうもないことで笑えています。

まだ、疲れてしまう時もありますが、ひとつひとつできることが増えてきて、普通のことができるということが、とても嬉しく感じます。自分のこともたくさん見つめ直すことができたので、前よりすこしは上手に生活できていると思います。

仕事のこともやっと考えられるようになってきました。うつ病になって、知らないことをたくさん知って、いろんな感情になれました。いつかのぼくみたいな人に、届くものを作りたいと思っています。

まだこの先どうなっていくのか分からないし、仕事を復帰してから、またすぐにお休みしてしまう人も多いみたいです。ぼくもゆっくりと、できることから始めていきます。

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ひろたあきら
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