作っただけで終わらせない、プロダクト改善のためのペルソナの活用法
ペルソナ作成はプロダクト開発でよく使われる手法ですが、わたし自身これまでその効果を実感できたことはほとんどなく、プロダクトのデザインに活かしきれないことが多かったです。
そんな中、エンタープライズ向け学習管理システム「GLOPLA LMS」のPO、エンジニア、デザイナーが集まり、ペルソナ作成を起点としたプロダクト改善の取り組みを行いました。 この記事ではそれら一連のプロセスと、そこから得られた示唆をまとめています。ペルソナの効果を最大限に引き出すためのヒントになれば嬉しいです。
受講者像を揃えて議論をスムーズに
GLOPLA LMSには、人事担当者が研修や学習を管理する「管理者画面」と、従業員が学習を進める「受講者画面」があります。ペルソナ作成のきっかけは「受講者画面」の改善プロジェクトで、改善を進める中で以下のような課題がありました。
チーム内でユーザー像のイメージにばらつきがある
顧客から寄せられる声の多くが人事担当者目線であり、受講者の課題を十分に捉えられていない
開発者として「自分たちにとって都合の良いユーザー像」を無意識に描いてしまっている
このような課題を解決し、フラットな受講者視点を得るために、ペルソナを作成するところから取り組むことにしました。
ペルソナを立体的に描き出すための3つのステップ
これまでのペルソナ作成は、ユーザー属性を書き出すことが目的になっていました。しかしそれだけでは背景にある価値観や本質的な要求を理解することが難しく、それがペルソナを活用しきれなかった原因だと感じていました。そこで今回は、以下の3つのステップで情報を「点」ではなく「線」でつなげ、ペルソナ全体を立体的に描き上げることを目指しました。
1. 受講者が抱える課題とターゲット層の明確化
顧客の声を分析したところ、「学びがキャリアや将来にどう影響するのかわからない」「どのテーマを学ぶべきかわからない」といった課題が浮かび上がり、「学びに対して意識が高すぎず低すぎない中間層(262の法則の6)」をターゲットに設定。
2. 詳細なペルソナ情報の収集
後のインタビューやシナリオ作成をスムーズに行うため、ペルソナの属性情報をできる限り詳細に設定。年齢や職種などの基本情報だけでなく、学歴や住まい、利用している沿線、ランチタイムの過ごし方、同僚との関係、キャリア展望、プライベートの過ごし方など、隣で話している姿が想像できるレベルまで作り込んだ。
3. インタビューで価値観を掘り下げる
メンバーにペルソナになりきってもらい、学習やLMSをテーマに擬似インタビューを実施。この内容からLMSがペルソナにどのような価値を提供すべきかを整理し、現状のプロダクトがその期待にどれだけ応えられているかを振り返った。
このプロセスを通じて、「最低限の必要性で消極的にLMSを利用する」という姿勢や、「現状維持を重視し、実務に役立つ範囲で最低限学ぶ」という学びに対する価値観が見えてきました。
ペルソナの価値観をシナリオで具体化する
ペルソナが持つ価値観を明確にし、そこからくる期待や要望をプロダクトでどのように実現するかを検討するため、構造化シナリオ法を活用しました。
作成したシナリオ
これらのシナリオを通じて、LMSを使うことで受講者がどのような成功体験を得られるのか、具体的なイメージが持てるようになってきました。
シナリオから見えた具体的な改善案
構造化シナリオ法を通じて、これまで意識していなかった新しい視点からの改善案が浮かびあがってきました。
✉️ 心理的負担を軽減する研修案内メール
研修案内メールを受け取ったときの受講者の心理的負担を軽減するために、メール内容やトーンの見直しを行う。
🗓️ 業務調整を支援する情報の優先度の見直し
研修に参加するために必要な業務調整を円滑に進められるよう、実施スケジュールや参加条件、問い合わせ先の情報の優先度をあげる。
🕰️ 学習時間の目安の表示
研修修了までの時間や工数を把握しやすくするため、学習の目安時間を入力できたり、事前・事後タスクをよりわかりやすく表示する。
これらの改善を行うことで、受講者の心理的負担が軽減され、通常業務と並行しながらでもスムーズに研修や学習に取り組めるようになることが期待できます。
ペルソナの限界と改善プロセスの可能性
今回のプロセスでは構造化シナリオ法を活用することでペルソナが持つ価値観やニーズを具体的なシーンに落とし込み、プロダクト改善につながる示唆を得ることができました。
しかし、人間の行動や要求はもっと複雑で、このプロセスだけではそのすべてを捉えることはできません。今後は定期的なユーザーインタビューや行動データ分析も組み合わせることで、ペルソナの限界を補いながら、ユーザー像を継続的にアップデートしていくことが重要だと思っています。
ペルソナ作成は、あくまでユーザー理解を進めるための「足がかり」です。その限界を認識しつつも、プロダクト改善に向けてユーザー視点を深めるための第一歩として、大きな価値があると感じました。
おわりに
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