砂浜を爆走するジェットコースター列車 ~前面パノラマ席でめぐる南紀旅②~
特急くろしお(オーシャンアロー)
そして、
特急南紀(キハ85)
一度の南紀の旅で、二つの前面展望列車を一番前の席で楽しめたという奇跡が起こった旅レポシリーズ。
今回は旅の後半、特急南紀をご紹介します!
◆紀伊勝浦町にて
前回、特急くろしお(オーシャンアロー型)の前面展望席に乗って和歌山は紀伊勝浦駅にやってきた私。
乗車予定の南紀6号名古屋行は翌12時22分発。
紀伊勝浦町で1泊した後、出発までぶらぶらと町内を散策しました。
朝9時ごろに駅に寄ると、そこに新宮駅方面から特急くろしおが入線してきました。
昨日私が新大阪駅から乗ってきた車両でした!
しかもホームには南紀4号が待機中。
図らずも、紀勢本線を走るパノラマ車が並ぶシーンを撮影できました!
◆引退間近、特急南紀(キハ85系)
その後も町内を散策した後、時間がやってきたので再び駅へ。
ちなみに今回乗車するのは前面展望車である自由席。
席を確保するために発車40分前にホームに降りました。
なぜそんな早くホームにやってきたかというと、「ワイドビュー」として親しまれてきたキハ85系が老朽化のために今年6月いっぱいで新型に置き換わるんですよね。
新型は前面展望がないタイプなので、前面展望車を楽しめるのは今だけ……
しかも席は早い者勝ちの自由席、ということで混雑が予想されました。
それでもせっかくここまで来たのに、観光もせずに数時間も前から並んで待つのはもったいない、ということでじっくり勝浦町を観光し、ほどほどの時間にやってきたのですが――
なんとホームには誰もおらず!
これはまさか……?
自由席車両の乗車位置に立ち、ソワソワしながら入線を待ちます。
そして――
特急南紀(キハ85系)が入線してきました!
待機列の一番前に立っていた私はそのまま自由席に入り、
パノラマビューを楽しめる、一番前の席を確保できました!!
特急くろしおと特急南紀……
まさか一度の旅で、二つのパノラマ車を一番前の席で楽しむことができるなんて……!
ドルドルドル、という古くさいディーゼルエンジンの音と震動に、体の内側から童心がせり上がってきます。
◆最後の景色
12時22分。
特急南紀が紀伊勝浦駅を出発しました!
紀伊半島の東の海岸線に沿って北上し、降車駅の四日市駅を目指します。
これで見納め、と動画の撮影を始める私。
ゆっくりと駅を出て、快晴の下、ぐんぐん速度を上げていくディーゼルの乗り心地を堪能
するはずだったのですが、
/ ガッターーッアンン!! \
はい
何が起こったかと言いますと、一番前の席のテーブルは、ストッパーを固定して使う折りたたみ式なんですよね。
出発前からこのテーブルを使っていたのですが、ストッパーがしっかりかかっていなかったのか、撮影中に体が当たった拍子に
\ がっちゃん /
してしまって、テーブルから落ちた荷物の対応にしばらく追われていました……
同乗されていた方々や、同じく撮影されていた方々、お騒がせして本当に申し訳ございませんでした……。
そうこうしている間に、列車は新宮駅に向かって走っていきます。
デビュー当時、高出力を誇ったエンジンを積んだキハ85系ですが、曲線区間が多いせいか、出発してしばらくはジョギングのように徐行気味。
ゆっくりと緑の中を単線を進み、
やがて列車は遮るものが何もない王子ヶ浜に出ると、
ド……ド……ド……、と停車寸前まで速度を落としました。
あー、景色を楽しむために徐行してくれてるのかなーと、のんびりカメラを構えようとした私は、知りませんでした。
そこは長らく続いた曲線区間の終わり。
今までののんびり走行は、
遊園地のジェットコースターでいう助走段階に過ぎなかったことを。
最高到達点に達したコースターはどうなるか。
あとは下るだけです。
ド…ド…ド…………
…………グルルゥロロロロォォォオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
体が十分に温まったキハ85系。
その高出力エンジンを遠慮のかけらもなく全開にし、リードから解き放たれた大型犬のように砂浜を爆走していきます!
たくましいエンジンの加速
シートに押しつけられる背中
そして、前面展望と海岸線をひとり占め
た、楽しすぎる……!!
延々にまっすぐのびる海岸線と水平線のように、この時間が続いて欲しかったのですが、列車はやがて内陸部へ。
今しか見られない景色が、後方へと過ぎ去っていきました。
新宮駅を出発してからは、時々右手に海を望みながら、山間部や田園風景の中を列車はのんびり進んでいきます。
乗車したのは4月後半。
芽吹き始めた新緑と、瑞々しい水田が気持ちいい!
◆駅弁が口ずさむ、お別れのメロディ
紀勢本線を北上し続けた列車。
三重県に入る頃にはぽつぽつ市街地へと景色が切り替わっていきました。
さて、ここいらで駅弁を食べることにします。
駅弁は松阪市のお店「駅弁のあら竹」さんで予約しています。
受け取りは松阪駅。
こちらは全国的にも珍しい列車積み込みのサービスがあり、予約した際に乗車する特急・快速列車を告げておくと、松阪駅停車中に乗車口ドアの前で受け取ることが可能なのです!
松阪駅に入ると、スタッフさんらしき人の姿が見えました。
停車後にドアの前で受け取り、つり銭なく弁当代を渡し、再び車内へ。
席につくと、手を振って見送ってくださいました!
注文した駅弁はこちら。
松阪名物「モー太郎弁当」です。
容器の時点ですでに面白ぇ駅弁ですが、
実はこちらの弁当にはさらに面白ぇ仕掛けがあります。
この駅弁、蓋の裏に光センサーが付いていて、弁当を開けると『ふるさと』のメロディーが流れるのです!
音楽が流れる様子を一応動画でも撮ったのですが、実際のメロディーはぜひ駅弁を購入して楽しんでみてください!
情緒も中身もぎっしり詰まったお弁当はほっかほか。
すき焼き風の香りがふわりと広がり、牛肉はしっかり味が染み込んだ濃厚な味わい。箸が進まない訳がありません!
松阪駅を過ぎると列車はどんどん都市部へ。
直線区間が多くなり、キハ85系も本領発揮。
景色が高速で流れ去っていきます。
海岸線
山間部
田園地帯
そして市街地
一つの路線でこんなにも移り変わりを楽しめる、バリエーション豊かな車窓を、今しか楽しめない前面展望席からじっくりと、お弁当の味とともに噛みしめます。
やがて前方に、煙突がポツポツと見えてきました。
工業地帯で有名な四日市です。
列車はゆっくりと速度を落とし、四日市駅に入線。
今回は諸事情で終点の名古屋駅までは行かず、ここで降車します。
これでキハ85系ともお別れです。
労うように前面展望窓に手を添えてから、席を立ちました。
デビュー以来30年以上に渡って特急南紀として活躍したキハ85系。
それでも衰えることないディーゼルエンジンを轟かせながら、ホームを出発していきました。
夕日に染まる四日市の工業地帯へと消えていく特急南紀。
この姿が見られるのも、今年の6月まで。
キハ85系は、長年親しんだ「ふるさと」を離れます。
(終わり)
◆おまけ
特急くろしおと特急南紀で巡った今回の旅ですが、途中1泊した紀伊勝浦町も素敵な街でしたので、後日noteにて紹介しようと思います!
またキハ85系で運用されていた特急ひだの旅の模様も、noteに投稿していますので、興味がある方はぜひ!
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ここまで読んでいただきありがとうございました。
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