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認知行動療法とSAT療法

2010年度の診療報酬改定で「認知行動療法」の評価が新設され、健康保険の適用となりました。

(1)診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示) 平成22年厚生労働省告示 第69号
第8部 精神科専門療法 通則
I003-2 認知療法・認知行動療法(1日につき) 420点
注1 精神科を標榜する保険医療機関以外の保険医療機関においても算定できるものとする。
2 入院中の患者以外の患者について、認知療法・認知行動療法に習熟した医師が、一連の治療に関する計画を作成し、患者に説明を行った上で、認知療法・認知行動療法を行った場合に、一連の治療について16回に限り算定する。
3 診療に要した時間が30分を超えたときに限り算定する。
4 認知療法・認知行動療法と同一日に行う他の精神科専門療法は、所定点数に含まれるものとする。

これは、増え続けるうつ病対策の一環なのかもしれませんね。

「うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル(PDF:379KB)」
が、厚生労働省のWebサイトにあります。

少し抜粋してみます。

認知療法・認知行動療法とは、人間の気分や行動が認知のあり方(ものの考え方や受け取り方)の影響を受けることから認知の偏りを修正し、問題解決を手助けすることによって精神疾患を治療することを目的とした構造化された精神療法です。
精神科の治療方法としての認知療法・認知行動療法は、1970年代に米国のAaron T Beckがうつ病に対する精神療法として開発したものです。その後、認知療法・認知行動療法は、うつ病はもちろんのこと、不安障害やストレス関連障害、パーソナリティ障害、摂食障害(神経性大食症)、統合失調症などの精神疾患に対する治療効果と再発予防効果を裏づける優秀なエビデンスが多く報告されてきたことから、欧米を中心に世界的に広く使用されるようになりました。また、精神疾患以外でも、日常のストレス対処、夫婦問題、司法や教育場面の問題、などその適用範囲は広がりを見せています。

認知療法・認知行動療法は、近年発達してきた情報処理モデルないしは認知モデルを基盤にした治療法です。つまり、私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けているのですが、通常は半ば自動的にそして適応的に行われています。しかし、強いストレスを受けるなど特別な状況下ではその判断に偏りが生じ、非適応的な反応を示すようになってきます。その結果、抑うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が引き起こされ、さらに認知の歪みが強くなるという悪循環が生じることになります。

認知療法・認知行動療法では、「自動思考」と呼ばれる、様々な状況でその時々に自動的に沸き起こってくる思考やイメージに焦点を当てて治療を進めていきます。治療は対面式の面接が中心で、一回の面接時間は30分以上です。面接は、原則として16-20回行いますが、患者さんの状態にあわせて延長することを検討することもあります。また、場合によっては、フォロ-アップ面接を行うこともあります。

うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル

1回30分以上、原則16-20回とは、随分気の長い話ですね。

このマニュアルにあるように、いま特に欧米ではこの方法がとられているようですが、必ずしもそれが有効だからという理由からではなく、潜在意識にあるトラウマに触れ、パニックを起こしたクライアントにうまく対処できず、裁判沙汰になったケースが増えたからだということを、私は宗像恒次先生から教わりました。
顕在意識の中で行われるため、コントロールしようとする意識が苦痛を作る可能性もあり、これが効かない症例も少なからずあるようです。

ベック→エリスときて、いまはマインドフルネス療法…でしょうか。
でも、これは日本に古くからある禅と同じ、呼吸法ですよね。ヨガとも通じますか…
カウンセリングが効かない人には、このように身体から入る方法もいいかもしれません。

これらに対してSAT療法は、「第4世代の認知行動療法」あるいは「情動変容からはじめる認知行動療法」だと、その開発者・宗像は呼んでいます。

現在行われている認知行動療法の流れが、
認知・思考の意図的変化→感情・気分の変化→行動の変化
それに対し、SAT療法は、
情動の意図的変化→認知の変化→行動の変化

つまり、SAT療法では、認知の変化を、情動を意図的に変えることで逆に引き起こし、それを行動としてアウトプットさせるという無理のない方法をとるんです。
無理やり考え方を変えさせないところがポイントですね。

情動を変えるということは、感じ方を変えるということ。
最初の段階でできるのか?…そんな疑問が生じるかもしれません。
それを可能にする方法の1つとして、たとえば「SAT代理顔表象イメージ法」というものがあります。

人には、顔に反応する細胞があります。
これを「顔細胞」と呼びますが、側頭連合野にあって、鼻や口より「目」に鋭く反応するんです。

人は幼い頃一人では生きられないため、親に気に入られようといろんな努力をするということを、これまでいくつか書きました。
気に入られるために「顔」は重要な要素で、親のいい顔、笑顔を本能的に求めるのです。
裏を返せば、親の怒り顔は自分の生命危機に直結し、恐怖なんですね。心配顔などされたら、自分が守らないといけないと、その時点で親子の精神的立場が逆転します。

職場の誰かが苦手だなぁと思う場合、その人と話をする時には身構えますよね。
それは、嫌な親の顔を投影しているからに他なりません。
この「苦手な職場の誰か」は、親ではないと、認知から変えるのが従来の認知行動療法。
それでも、嫌な親の影を、その人に重ねている限りは、恐さは消えません。
頭で違うと解っても、です。

これを逆のアプローチ。親自体のイメージを変えてしまう。親の笑顔。自分が安心していられる親の顔イメージを先に作り、それを定着させて情動反応を変えるということです。
そのために、私たちの親の遺伝子が素粒子だった頃をイメージし、暖色系の安心できる宇宙の光に守られて進化し、自分の親にまで達した時に、親の表情や性格はどうなるかというようなイメージワークを試みたりするのです。
親のいい顔イメージ定着には時間がかかります。でもケータイなどの待ち受けにし、高頻度に眺めることでそれが可能になります。

また、「SAT行動変容支援カウンセリング法」では、
ストレス→事柄→感情→心の声→心傷風景→再解決→行動大目標→行動中目標→行動小目標→共感的励まし
という手順をもって、トラウマを癒した上で、いますぐできる行動の目標化を促します。
この「再解決」の部分で、先の顔表象を使うと、とても効果的なんですね。

SAT法を知らない方には、少し解りにくいお話だったかもしれません。
今回はこんな方法もあるということだけでも、心に留まれば嬉しいです。

専門的な話が続いてしまったので、読みづらく思われる方がおみえになるかもしれません。
けれどもヘルスカウンセリングの行動変容技法SAT法は、今回もお話ししましたように、誘導の仕方がすべて構造化されていて、訓練すれば誰でもできるようになるんです。そして究極、いまは、セルフセラピーできるようにできています。
ヘルスカウンセラーのエネルギーをもらいながらやることで、素早くひらめき、気づきが起こるのですが、それが何回も練習することで自分自身でもできるようになる。だから、ちょっとおかしいぞと感じた時に、すぐ自分でやっておくことで、健康的な人生を続けることができるんです。
私は、宗像が提唱した「1億総カウンセラー」の実現をめざして、活動を続けています。


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