ヨコハマウィング
横浜市主催の「秋の風力発電所見学会」で、横浜市の担当者から事業状況について説明してもらった。
スタッフが素人にも理解しやすいように説明してくれた。事業観点は下記3点に要約される。
風速6.5mないと採算が取れない。
横浜は平均風速5mになるため、採算は合っていない。
発電に必要な風速がない場合には、外から電力購入して風車を回している。
収支報告書(2021)によると、EBITDAは273万円(前年比-70%)に着地している。要因は、設備稼働率が約30%に留まっており、供給原価が前年比+27%で上昇していることにある。他にも要因はあるのだろうが、資料からは読み取れなかった。なお、この設備の建設費は償却できており、余剰金が9,776万円あるため、短期的には事業として成立しているようだ。
しかし、今後の事業計画を想像すると、設備メンテナンスコスト上昇に対する対策を施さない限り、余剰金がショートするのも時間の問題だ。
スタッフの説明によると、国内の風力発電メーカーは全て撤退しており、現在は中国企業とヨーロッパ企業からの設備供給に頼っている、とのことだった。国内の税金を使って国策としてメーカーにコスト削減を促しても、海外メーカーの競争優位性を上げるだけであり、その利益を日本に対して還元するような強制力はない。そうなると、横浜市を含めた国内の風力発電所の事業主体者が長期的にコスト削減することも難しいだろう。
自分のイメージは、横浜は港町でもあるため、風力発電に適した地域だった。しかし、現時点では事業継続性のある稼働率は見込めないので、このコストレベルでは事業継続性が厳しそうだ。
そもそも風力発電は必要なのだろうか。とも思ってしまうので調べてみたが、風力発電含めた再生エネルギーは資源の少ない日本としては投資すべき事業になるのは間違いなさそうだ。
資源エネルギー省(2022)によると日本のエネルギーは、日本は化石燃料に83.2%依存している。
また化石燃料は海外からの輸入に頼り切っている。
日本のエネルギーは90%以上を海外資源に頼っているので、Political Issueに脆弱な状況のようにも思える。また一度そのようなIssueが発生すれば日常生活へ大きなインパクトを生じさせてしまう。実際に海外での紛争・為替政策・原材料算出量の調整などで、日常生活に「コスト」という形で影響が出ている。
本来であれば再生エネルギー、水力、原子力比率を押し上げて、Political Issueへの耐性を強めるようなエネルギー政策を取れば、このようなコスト上昇の影響も減らせるし、再生エネルギー、水力、原子力の国内設備メーカーを育てることで、電力設備事業および電力小売事業の競争優位性を高めることができる。
それでは、風力発電をやる意味を見出せたので、あとはどこでやるべきか?
先程のスタッフの話では、年平均風速6.5m以上の地域であれば採算が取れるようになるので、そのような地域が風力発電事業者としてはアドバンテージになりそうだ。
株式会社エルシージャパンによれば、東北や北海道地域が風速6.5m以上になる地域を多くもっているため、風力発電事業者としてはここでの事業展開が最適のように思える。
当然、省庁関係者はこれら内容を先刻承知しているため、国策でも進められているようだが、東北地方の知事からはそのアドバンテージを利用されることへの懸念を示している。
知事らのコメントは「景観、自然破壊、健康被害に対する懸念」となっているが、普通に考えれば土足で他所様の土地に入ってくれば、誰しもが良い顔はしない。
自分は普段の生活費である電力代という形での接点しか持っていないが、その立場であってもこの問題には関心がある。どのような形で進んでいくのか見届けようと思う。