ブランド/製造物責任/知的財産権
ブランド、製造物責任、知的財産権に共通する問題は、市場メカニズムをはたかせる上で重要な仕掛けだということではないだろうか。まずブランド(商標)は、ある企業がその製品を提供したことを示すもの、エムブレム(デザイン化したロゴ:言葉)で示されることが多い。
以下の記事は、ロシア革命のあとブランド名が廃止されたことで、消費者は誰が生産しているかという情報を失い(ブランド価値brand valueが評価されなくなり)、消費者によるpunish/rewardを働かせる機能が市場から失われた。また企業も、品質を維持改善する誘因(インセンテブ)を失ったとしている。結果、ロシア製品の品質は悪くなった。
もちろんその前の議論として、企業の生産が私的に行われ、売上が伸びればその企業の利益が増え、それがその企業に働く人々に還元される仕組みが必要である。
製造物責任product liabilityの問題は、マイナス評価の問題である。これがコストとして意識されるようになり、ときによっては、産業の消滅、コストの上昇をもたらし、さらには新たな商品開発の意欲をそぐこともある。以下の記事は、商品の回収、消費者への賠償など商品市場で発生するコストのほかに、株式市場での株価下落で生じるコストを指摘している。その株式市場でのコストはときにより商品市場でのコストより非常に大きくなると。株式市場は、商品・サービスの市場とならんで、企業を評価する市場になっているということでもある。
たとえばコロナウイルスのワクチン開発で見られた問題は、ケースによっては国がこの責任を分担して後押ししないと、必要な開発が進まないということでもある。なお医薬品会社の巨額の利益は、巨大な訴訟リスクをはじめとする医薬品事業のリスクの大きさを反映したものかもしれない。
これらの問題は市場メカニズムを働かせるという問題にすべてつながっている。素晴らしい発明をした人、素晴らしいアイデアを提供した人を保護する知的財産権の問題にも通じるが、市場メカニズムを働かせるうえで必要なインセンテブを機能させる仕掛けとして理解できる。あえてそれらを一つの言葉にまとめるなら、私有財産権であり、私有財産権が権利と責任の両面で確立していることで市場は成立するということではないか。