ロシアの侵攻の原因と停戦のため今すべきこと:ミアシャイマーの議論
今日本の国内報道を見ていると、ロシアの武力侵攻は、許されないことで、ウクライナの戦いを支援しようといった報道一色である。そしてロシアの武力侵攻については、プーチンの個人的な願望によるものだと言った解説が、まかり通っている。しかしNATOがウクライナを支援することが、ロシアを追い詰めることを予測し、警告してきた人がいる。こうした警告を見るにつけ、戦争開始前に、戦争を避ける努力をバイデン=ゼレンスキーが真剣に行ったかに疑問を感じないではない。
その人とは、シカゴ大学の政治学部教授のジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)である。
彼は、侵攻の原因を作ったのは(ウクライナにNATOに入れるとの言質を与えロシアとの緊張を高めてきたのは)アメリカであると明言している。今後については、ウクライナ中立化を示唆している。
ロシアが侵攻した今、ウクライナの人々がもし賢明なら、すべきことはアメリカから離れ中立化を判断することだとしている(アメリカと距離を取り中立化を選択することで、戦争を終わらせることができる)。
もともとロシアと西欧圏の間に位置するウクライナがNATOに加わることはロシアの存在にかかわる脅威(existential threat)だというのがロシアの立場である(ロシアの立場はキューバ危機のときのアメリカの気持ちを思い起こせば理解できる)。アメリカは、そのロシアを無視してウクライナにNATOに加盟できる言質を与え(2008年4月のブカレスト宣言 NATOはウクライナとジョージアの加入希望を歓迎し、将来の加入に同意するとまで述べている)、2014年2月にアメリカは、親ロシア派の大統領がクーデターで倒され少数言語法案が廃案にされるのを放置した。直後、ロシアはクリミアを併合した。
その後、さらにウクライナに軍事支援を約束して(2017年12月トランプによる武器供与声明)、ロシアを追い込んで開戦の原因を作ったのは、NATO=アメリカの側である。(2021年12月7日のバイデン=プーチンのオンライン会談。ここでプーチンはNATOが東方拡大しないことやロシアの国境に兵器の配備をしないことなどで法的保証を求めたが、回答を得られなかった。そして翌2022年1月21日、ジュネーブでブリンケン国務長官とラブロフ外相が会談。ここでロシアから出た安全保障上の要求に対しアメリカ側が文書で回答するとしたが、結局、27日、ロシア側の要求に応じられないと回答した。こうしたバイデン政権の対応には、ロシアが実際に軍隊を国境に長期間配置しているという切迫した状態への配慮は皆無で、ロシアを軽んじているようにさえ見える。戦争を回避することの重要性について、ゼレンスキーもバイデンも判断の誤りがあったのではないか。ウクライナ=アメリカの双方に、ロシアを軽んじ、また戦争による被害を軽く見るところがあったと感じる。福光)
ミアシャイマーはもしこの結論に不満だという人は、どこまで本気でウクライナに介入する気持ちがアメリカにあるのか、と問いかけるべきだ。現在、アメリカにその気持ちがないことははっきりしている。そうであるなら、自らの血を流しても、ウクライナを取ろうという、ロシアにウクライナは任せるべきではないかと続けている。
(現在、日本の報道は、日々の軍事情勢の変化やゼレンスキー英雄論、プーチン独裁者論に終始して、なぜ戦争が始まったかの分析や、どのようにこの戦争を終結させるかについての現実的な議論が欠けている。ミアシャイマーの議論はそこをまさに埋めるものだ。)
John Mearsheimer responds to criticism of his UKraine theory, CGTN 2022/04/17
Do Economic Sanctions on Russia Work? Buddhi Mar.14, 2022
What should Ukraine do? Buddhi Mar.12, 2022
Who is responsible? Buddhi Mar.5, 2022
Why is Ukraine the West’s Fault. The University of Chicago, Uncommon Core, upload in Sept.25, 2015(June 4, 2015)
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