百舌鳥古市古墳群は、「まだ」世界遺産ではない?
ニュースでしきりに世界遺産の話題が出ているので、これは書かねば。
今日のニュースで、
「仁徳天皇陵を含む古墳群、世界遺産に」
とか、
「仁徳天皇陵 世界遺産へ」
みたいな見出しが散見されるので、今の状況をきちんと説明しよう。
【何が世界遺産になるの?】
まず、お話の対象になっているのがなんなのか、から。
「仁徳天皇陵」とか「百舌鳥古墳群」とか「古市古墳群」いろんなワードがでていて混同しそうだけど、
今回、世界遺産としての登録の枠組みは、
「百舌鳥・古市古墳群」が正式な呼称。
大阪、堺市の百舌鳥エリアと、羽曳野市&藤井寺市の古市エリアにある、たくさんの古墳、合計49基を総称して呼ぶ言い方。
その中で最大のものが、エジプトのギザのピラミッド、中国の始皇帝陵と並ぶ世界三大墳墓の一つ、「仁徳天皇陵古墳」
「仁徳天皇陵」という呼び方は宮内庁が呼ぶ言い方で、それ以外に「大仙陵古墳」、「大山古墳」とも呼ばれる。(埋葬されているのが本当に仁徳天皇なのか、という言説があるため)
間違ってはいけないのは、「仁徳天皇陵」(大仙陵古墳)が単独で世界遺産登録されるのではなく、上記の通り百舌鳥・古市エリアの古墳群49基がまとめて登録される、という点。
【まだ、世界遺産ではないってどういうこと?】
そして、タイトルにもある通り、「百舌鳥・古市古墳群」はまだ正式な意味で世界遺産ではない。(2019年5月14日現在)
今回のニュースの内容は、
“世界遺産委員会の諮問機関であるICOMOSによって、「百舌鳥・古市古墳群」に「登録勧告」が出された”、というもの。
ざっくり言えば、「世界遺産として登録しちゃって問題ないと思うよー」ってお墨付きを、文化遺産を審査する機関からもらえた状態。まだ、正式な登録決定ではない。
【そもそも世界遺産ってどこでどう決まるのか】
世界遺産の新たな登録は、世界遺産委員会で決まる。
世界遺産委員会は毎年7月初旬前後(今年は6月30日から)に開催され、そこで新たな世界遺産の登録可否、これは世界遺産にしてよし、これはダメ、を審議する。
でも、そこで全ての遺産の登録申請内容をイチから精査していたのでは、あまりにも時間がかかり過ぎる。というか、その会議だけで内容を全部見るのは物理的に無理。
【諮問機関って? 勧告って?】
世界遺産委員会の席だけで遺産登録の審議をするのは無理、ということで、世界遺産委員会での登録審議の前段階として、諮問機関による事前調査&勧告というプロセスがある。
文化遺産に関してはICOMOS、自然遺産に関してはIUCNっていう「世界遺産委員会諮問機関」が、登録申請のあった遺産へ調査に入り、その調査を基に、「勧告」を出す。その勧告を基に、世界遺産委員会での審議が行われることになる。
世界遺産委員会での審議も、諮問機関からの勧告も、「登録」~「不登録」の四段階があって、「登録」は一番良い評価ということになる。(登録と不登録の間には「情報照会」、「登録延期」というグレーゾーンがある)
なので、今回「百舌鳥・古市古墳群」が諮問機関から「登録」の勧告を受けたということで、「ほぼ確実に次回の世界遺産委員会で登録されるだろう」という状況になったわけだ。地元の人が狂喜乱舞するのも分かる。
【これからの展開】
先に書いた通り、今年の世界遺産委員会(第43回)は6月30日からアゼルバイジャンで開催される。
そこで改めて正式な審議を経て、晴れて「百舌鳥・古市古墳群」は世界遺産リストへの記載を認められる、平たく言えば世界遺産に登録される。
なので、7月アタマに「百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に登録!!」というニュースが入り、多くの人は「あれ? 少し前に登録ってなってなかったっけ?」となることが予想される。
もし周りにそういう人が居れば、ドヤ顔で↑の内容をお伝えして頂きたい。
何にせよ、日本の世界遺産はこれで23件目、おめでたい。
そして世界遺産検定の難易度は上がる一方である。
(見出し画像=大仙陵古墳、はWikipediaからの引用)