役に立たないものほど役に立つ?

科研の申請やら愛娘の誕生やらありまして,しばらくnoteの更新が止まっていました。久々に更新します。

年末年始,久々に何冊か読書しました。それも研究に関係ないやつ。

といっても,「研究に関係ない」のは今時点でそう思ってるだけで,関係ないかどうかは死ぬまでわからない,というのが,ここでとりあげる一冊目の読書です。

それが,これ。

感想から言えば,のどに刺さってた魚の骨がスッととれた感じがした。

ざっくり私なりの解釈を述べれば,VUCA(不安定,不確実,複雑,曖昧)なこの時代,論理的思考だけで生み出される意思決定には限界がある。だからこそ,美意識を鍛えるべきだ。といったところか。

本書によれば,論理的思考の限界の背景は二つ。1つは,人間の情報処理能力には限界があるので,論理的思考のみによる意思決定は難しいという点。2つ目は,この思考は誰しもが同じ解に至ることを前提としているので,行きつくところはレッドオーシャンとなるという点。

だからこそ,美意識=自分なりの真・善・美の感覚が重要。これを鍛える方法としては,哲学に親しむ,文学を読む,詩を読む,などの方法がある。哲学は物事の本質を根本から問い直す訓練。文学は美とは何かを問う。詩はリーダーシップの発揮に重要なレトリックに触れさせてくれる。

…と,こんなところですかね。

実は個人的には,論理的思考の限界については完全に首肯するものではない(特に2つ目。人間の情報の捉え方は多様なので,論理的思考の解は必ずしもレッドオーシャンになるとは限らないように思う。もっとも,そこで役に立つのが美意識なのかもしれないが)。

しかし。

しかし,この方,それ以上にとても重要なことをおっしゃっている。それは,人が思いつかないことをやろうと思ったら,物事をいろんな角度から見る,常識・本質・前提から疑う視点を持つ,っていう意識が欠かせないよと。

最近の世論では,教育や研究には「社会に出てから直接役に立つことを」求める傾向が強いと感じる。

でも,そこで言う「役に立つ」って,現時点での(業務)プロセスを前提としていないか?

つまり,「役に立つ研究や教育を」というのは,「役に立つ」なんて言ってる時点で,偉い人が思考の出発点を決めてしまっていることにもなるのだ。

そんなんで高不確実性下での競争に勝てるんだろうか,果たして?

むしろ,VUCAの社会では,人が見向きもしないものもフル活用して,常識にとらわれず幅広い視野でもって物事をとらえなおすことが重要なのではないだろうか?

ということで,著者の山口さんのご指摘にはすごく納得した。私も先輩に薦められて買ってみたのだけど,「役に立つ」って何だろう?と常日頃考えている方には,ぜひ一読をお勧めしたい。

私も哲学とか詩をやってみようかな。(文学は,せっかちなもんで長い物語を読むのが苦手なので,気が向いたらいずれ)

以上。

正月に読んだ別の本の紹介は,別途投稿します!

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