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二郎丸 大
2024年1月27日 23:22
布団から何か固いものが出てきた。布団を上げようとしていた加奈子は、それを思いっきり踏んづけてしまった。「いったーい!」足裏が痛過ぎて、加奈子は尻餅をついた。固いものの正体は飴玉だった。個装されていたので飴玉が割れて散らばったりはしなかったが、加奈子はそのことを不幸中の幸いとまでは思えず、イライラを爆発させた。「祐一郎!ちょっと来なさい!」加奈子はほとんど犯人と決めつけたような態度
2024年1月21日 08:29
「雪化粧すればいいのよ」妻は至極当たり前のことのように言った。「隠したいけど目立たせたいのよね?」「うーん、ま、そうなんだけど。そんな都合良く雪降るかなぁ」夫は妻の言うことに懐疑的だった。「それが明日は大雪らしいのよ。あなたが私の考えている通りに動いてくれたら、きっとうまくいくわ」「なんか嫌な言い方だけど……本当にやるのか?」「ええ、やらない選択肢はないわ」その日の
2024年1月14日 02:13
「本を書くのって結構大変なんですね」編集者の男がおどけて言った。「おいおい、今さら何を言っているんだ」元作家の男が笑う。「いやあ、先生は毎年四、五作ポンポン書かれていた印象があって。いま自分が書く立場になってみると改めて大変だなぁと。私が書くのはエッセイですけどね」「君にはポンポン書いているように見えていたかもしれないけど、ポンポンは書いてないんだ、ポンポンは」「そりゃそうでし
2024年1月6日 11:51
新しい癖を見つけた。東京の大学に進学した弟の話だ。正月で実家に帰ってきたのだが、「クックック」と笑うようになっている。「アッハッハ」と感じ良く笑う子だったのに。コップの持ち方もなんか変だ。ガシッと掴むのではなく、指先だけで持つようなスタイルに変わっている。「ちょっとタカシ。アンタ、東京に行って変わっちゃった?」「何言ってるんだよ、姉ちゃん。俺は何にも変わらないよ」「ふーん…