消極的DXのススメ

前節: もうひとつのDXって　次節：強権的DXのススメ

もうひとつのDXとして消極的DXがあります。2018年から始まった日本のDXでは当然積極的DX（普通のDX）が推進されてきました。その流れを見て、後発のどちらかと言うと流されて始めたDXはどうしても消極的になってしまいます。DX事例の模倣ばかりを追いかけてしまいます。この消極的DXをディスるのではなく、これを足掛かりとして、積極的DXへの橋渡しとするのです。これが結局はDXの近道になります。DX支援者は叱ってばかりではなく、消極的DXを認めて、これを積極的に利用してDXを推進するのがいいでしょう。

消極的DXとは

2018年にDXレポートが公開され、ここから日本のDXが本格的に始まりました。DXのアーリーアダプターはこれよりも前から、既にデジタル技術を使って各種の改革をしていました。DXの言葉が発信されてからは、これを積極的に利用し、DXを推進しました。

やがてアーリーアダプターに続く、フォロワーが多く出てきて、DXはバブルの様相を示す時代がやってきました。このバブル時代ではDXの文字が世間を賑わしました。

この状況を受け、DXをしないとダメになると恐怖に駆られた経営者がよくわからずにDXをすることになります。しかしDX推進を部下に丸投げしたり、外部のコンサルタントに依頼することが多く、丸投げされた人はどうしても自分事ではなく、他人事のようになってしまい、どうしても消極的なDXになってしまいます。

つまりこの消極的DXは、社長への報告のためのDX、顧客や世間向けの格好だけのDXになってしまいます。表面的には、各種のもっともらしいデジタル技術を導入して、そのデジタル技術だけをアピールする内容になります。そしてそのデジタル技術による変革だけをアピールする内容になります。つまりデジタル技術と変革だけをアピールするDXになります。見栄を張るDXになります。これが消極的DXの正体です。

消極的DXの評価は？

前節で消極的DXをディスっているため、消極的DXは悪者にみえます。消極的DXはやらない方がいいように思えます。普通の積極的DXを推進している側から見れば、それはDXではないようにみえます。DXの言葉を使ってほしくないように感じます。これをDXと名乗られると自分が貶められたように感じるでしょう。

しかしたとえ、見栄のDXでも価値はあります。評価されるべきものです。なぜなら「少し」は効果のある施策を実施し、少しは効果を出しているでしょう。まったくの見栄だけではないでしょう。変革レベルではないかもしれませんが、改善レベルの効果はあるでしょう。このように考えれば消極的DXでも価値はあります。評価されるべきです。
名称にDXを冠するかどうかは別にして。

しかしこの考えに対して反論があります。この消極的DXでは、これだけで満足してしまい、本当のDXまで進まないという意見があります。これはたぶん正当な意見でしょう。

消極的DXのススメ

消極的DXを放置すれば、確かに前節のようにDXには至らないでしょう。そこで重要になるのが支援者です。伴走者です。同苦できるパートナーです。彼らの外の人が消極的DXを積極的DXに昇華させるのです。この意味で彼らの役目が大事です。

逆に言えば、中の人では消極的DXを積極的DXにはできません。なぜなら中の人は消極的DXこそが本当のDXだと社長や顧客に主張していました。その主張がいつの間にか、中の人にとってはとうとう真実だと思うようになります。つまり自分自身も納得するようになってしまいます。

外の人により、消極的DXを勧め、実際に進めるのは正解です。この消極的DXが中の人にとっては、いつの間にか積極的DXになるように、洗脳、いえ、啓蒙していきます。これが消極的DXのススメです。

ということで今日の結論。「消極的DXはススメる」　以上です。

参考：IPA 中小規模製造業者の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション（DX）推進のためのガイド |