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SDxの定義とレベルは?(DX事始め)

前編:SDxはDXを救えるのか? 次節:SDでDXを!

SDV(ソフトウェアデファインドビーグル)やSDN(ネットワーク)、SDS(ストレージ)などのソフトウェアデファインド(SD)の話が出回るようになってきました。SDの対象が色々とあるので、これらをSDxと称しています。これらは今まではハードウェアで制御し機能を定義していた物理的対象を、ハードは部品の提供に止め、全体を制御し機能を定義するのをソフトウェアで行うものが原初のSDです。これを狭義のSDと言います。このSDの考えを物理的対象だけでなく、会社やさらに社会などの非物理的対象までに広げたのが広義のSDです。
このようにSDの定義が拡張され、その対象は広がり、効果も異なり、目的も異なります。この広義のSDを理解し、進めていくのが、DX推進のひとつの手段になります。

SDxの定義

SDxはDXを救えるのか?の記事の「SDxとは」節でSDxの定義をしていますが、ここでも定義していきます。

狭義のSDx

(定義)
狭義のSDxとは「物理的対象をソフトウェアで機能を定義すること」です。

今までは物理的対象をハードウェアで制御し、機能の主要部分を定義していました。ソフトウェアは一部の拡張機能やUI部分を定義するというものが多くありました。

これがSDxでは主従が逆転し、ハードウェアは部分的な機能を提供することに留まり、全体を制御し機能を定義することをソフトウェアで行うようになりました。

(事例)
この代表的なものに、SDV(ソフトウェアデファインドビーグル)SDN(ソフトウェアデファインドネットワーク)SDS(ソフトウェアデファインドストレージ)SDC(ソフトウェアデファインドコンピューティング)があります。

これ以外にも多くのハードウェアではソフトウェアが主体になっています。例えば、テレビでもパネル(テレビの画面周りのハードウェア)の機能を制御するエンジンと呼ばれる組込みソフトウェアが多くの機能を定義し、主体的になっています。

(効果)
SDxの効果は「機能を柔軟に定義できる」ことです。これにより「機能は時間とともに豊富になり使いやすいものになる」ことです。また障害があったとしても、OTA(On The Air)のように自動的に修正することができます。

(現状)
しかし今まではハードウェアで制御し、主要機能を定義するのが当たり前であったために、SDxの考えは普及しておらず、組込みソフトウェア側でも、このような意識がありませんでした。

この中ではSDxはまさにパラダイムシフトであり、考えを転向する必要があり、なかなかSDxの考えは普及していません。

そもそもソフトウェアエンジニアの身分は低く、一般的に「メカ、エレキ、ソフト」という順序の身分制度があります。ソフトは最下層でした。この流れを断ち切るのがSDxです。ソフトウェアこそ、全体を制御し、統率するも
のです(ここは少し個人的意見、感想が入っています)。

広義のSDx

(定義)
広義のSDxとは狭義のSDxの対象を物理的対象を広げたものであり、「会社や社会、日常生活をソフトウェアの考えで定義し直すこと」です。

例えば会社の組織や規則、経営、統治は固定的で融通の利かないものが多く、その結果、製品やサービス企画、市場開拓などが硬直した方針で活動することが多くなっています。

これをソフトウェアのように、会社の活動方針や組織、規則などを容易に変更、追加、削除することで、実際の各種活動を柔軟に行うことを目指すのが広義のSDxの例です。

(事例)
会社をソフトウェアの考えで定義し直すものにSDC(ソフトウェアデファインドカンパニー)があります。これは単にソフトウェア会社(Software Company)とも呼ばれています(なお、日本でソフトウェア会社と言うと、ソフトウェアを開発している会社になりますので注意してください)。

また行政をソフトウェアの考えで柔軟に運営する考えにはSDG(ソフトウェアデファインドガバメント)があります。PTAや消防団などの地域コミュニティなども同様です。

(効果)
SDCやSDGなど、対象の組織運営が柔軟に臨機応変に行え、攻めどころやその課題に対して早期に対応でき、その結果、効率的に運営が行えるようになります。

また組織が硬直化したことによる色々な課題を解消でき、それに悩んでいた人々によって新しいことにチャレンジする気概も生まれてくることでしょう。きっと。たぶん。退職者も減少するでしょう。きっと。

(現状)
しかし多くの組織ではソフトではありません。ハードです。組織は固定化され、規則や運営方針は表面的に繕い、結局は例年通りのままになり、組織は硬直化しています。

そして残念なことに、組織内の人にはそれさえも気づかずにいます。これが一番怖いことです。本当に。ここも個人的感想が少し入っています。

SDxのレベル

SDxには狭義と広義のSDxだけでなく、色々と分類できます。ここではSDxの対象範囲と、ソフトウェアの占める割合(網羅率)でレベルを考えてみます。

対象範囲

(レベル1)
狭義のSDxと同じ「物理的対象」です。SDxでは狭義のSDxの定義でも紹介しましたが、自動車やネットワーク、コンピューティング、ストレージなどは既に広く認知されています。
これらだけではなく、多くの電気製品や機械設備などはソフトウェアで管理され、一部は主要な機能も定義されています。

(レベル2)
会社や行政、地方自治体、各コミュニティなどの「組織を対象」にするのがレベル2です。レベル2は広義のSDxの一種です。

単一組織の運営をソフトウェアで定義する、つまり柔軟に決定を下し、効率的に組織を運営するのがレベル2です。

レベル2はレベル1の直接的SDxと比較して、SDxの応用になります。レベル1よりも格段に範囲が広がり、影響も大きく、大きな効果を得られるでしょう。

(レベル3)
レベル2と同様に広義のSDxになり、その対象を単一の組織から発展し、「社会を対象」にします。私たちの日常生活も対象にするものです。

これまでの慣習や風土、文化をソフトウェアの考えに沿って、柔軟に取り組むことになります。例えば、DXの流れが社会まで展開され、私たちの日常生活にもDXの波が来ています。この中で重要な役割を期待しているのが、SDxです。

DXはデジタルデータが鍵で、それを扱うのがソフトウェアです。社会のDXもソフトウェアの考えが重要になってきます。

ソフトウェア網羅率

同じ対象範囲でも、ソフトウェアがどの程度全体をカバーしているのかでSDxのレベルが違います。これを計測するのがソフトウェア網羅率です。

(物理的対象:対象範囲がレベル1、狭義のSDx)
物理的対象である狭義のSDxでは、以下のように定義します。

ソフトウェア網羅率=ソフトウェア規模率/ハードウェア規模率

例えば、ハードウェア部品の点数での規模率が30%の減少(0.7)であり、ソフトウェア規模のSLOCでの増加率が40%増加(1.4)であれば、ソフトウェア網羅率は1.4/0.7=2となります。

(組織対象:対象範囲がレベル2)
会社などの組織である場合は、ソフトウェア網羅率を以下のように代替手段で計測することができます。

ソフトウェア網羅率=直近で変更された規則数率/固定されたままの規則数率

規則数の箇所は組織数なども考慮することができます。

規則や組織が頻繁に変わることは望ましくない場合もあり、組織対象のソフトウェア網羅率の計測は難しいものになりますが、なんらかの方法で計測し、それをもとに定量的に評価することが重要です。

(社会対象:対象範囲がレベル3)
社会や日常生活でのソフトウェア網羅率の計測は、主観的になりますが、アンケート調査などで実施することになります。このアンケート結果の変化が重要になります。例えば、以下の算式で網羅率を計測します。

ソフトウェア網羅率=今回のポジティブ件数/前回のポジティブ件数

この方法は変化分(経年変化)を対象にした算式なので、相対評価しかできないことに注意してください。

ということで今日の結論。「SDx レベル向上 目指そう」 以上です。

参考:JEITA北陸セミナー2024 中小製造業のDXとソフトウェアデファインド
JEITA北陸セミナー 2024 中小製造業のDXとソフトウェアデファインド
JEITA北陸セミナー2024 「DXとソフトウェアデファインド」(オンライン有)
参考:DXとソフトウェアデファインドの関係|五味弘 (note.com)
参考:IPA 中小規模製造業者の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためのガイド |


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