ガーナの生き物たち
ガーナで暮らしていると、犬や猫といったペット以外の動物を目にする機会が多い。今日はこれまで目にしてきたガーナの生き物たちを紹介したい。
家畜
最も目にするのは、放し飼いにされているヤギとニワトリだ。外をぶらついてヤギとニワトリを目にしないことなどあり得ないというくらいにはありふれた動物である。田舎の我が家であれ、首都の空港付近の超高級住宅街であれ、ヤギとニワトリはどこにでもいるものだ。
ヤギ
家の周りを悠々と闊歩するヤギには初めは驚かされたものだ。メスをめぐって角をぶつけ合うオスのヤギに感動して眺めていたら、現地の人たちに「こんなものが珍しいのか」と驚かれた。妊娠したお腹の膨らんだメスのヤギもよく見かける。小さめのヤギは「メェー」と想像通りの鳴き方をしてくる他に、「ブフン」とくしゃみのような声を発する。大きなヤギはより大きく低い中年男性のような声で鳴く。あとは、たまに鼻を突き上げ歯茎を露出させる馬にそっくりなフレーメン反応を見せることがある。
ニワトリ
ニワトリは朝に鳴くものだと聞いていたが、ここのニワトリは真夜中の12時だろうが鳴きたい時間に好き放題に鳴いているので、当然睡眠は妨害され放題である。これでニワトリのことがとても嫌いになった。良いニワトリは死んだニワトリだけ。ちなみにニワトリは夕方になると、木の上まで飛翔して枝の上に立って眠る。4m以上あろう木の上に飛んでいくのを見た。日本ではお目にかかれないが、どうやら木の上で眠るのが彼らの野生状態での習慣らしい。
牛
近所ではあまり目にしないが、バスやトロトロの車窓から牛を時々目にする。特に首都アクラではよく飼われている。高架された道路が数十メートルの円を描いている場所の中で、牛が飼われている不思議な光景を目にした。ある日アクラから自分の任地へと帰るために乗ったバスが国道1号線を走っていると、道路を横断する牛飼いに率いられた牛の群れに遭遇して数分間待たされたことがある。ちなみにガーナで飼われている牛は首の上に大きなコブのあるコブウシが多い。コブウシは熱帯の気候や風土病に強くインドやアフリカで飼育されているらしい。
ラクダ
ラクダはあまり見かけないのだが、一度だけ見かけたことがある。首都でタクシーに乗って大きな車道の渋滞に巻き込まれている際にフロントガラスの先を眺めていると、1頭のヒトコブラクダが男を載せて悠々と逆走して自分の乗ったタクシーを通り過ぎていった。ラクダはこの時に見たきりだ。
ペット
犬
ところで私は犬が大好きだ。ガーナにも犬は多いので、犬好きの天国のようなところであるかというと、話は違ってくる。ガーナにも犬は多い。確かにそうだ。しかし、すべての犬がかわいくて人懐っこいかとなると話は違ってくる。ガーナの犬々は日本のそれらのように、家のなかや犬小屋で飼われているような育ちの良い犬々ばかりでは無い。ガーナの犬犬々は、金持ちの犬でもない限りはたいていガリガリで、野犬であったり、飼い犬であってもリードに繋がれておらず、野犬とそう変わらない放し飼いで、去勢や狂犬病ワクチンの接種がされていないぬもおり、日本の犬々とはずいぶんと異なっている。腹を大きくし、乳を垂れ下がらせた母犬が子犬を引き連れて歩いている様は、決して日本では見かけない光景だ。それらの犬々はトイ・プードルのような人懐こさを見せることは決してなく、近づいていくと明らかに怯えた様を見せて逃げ出したり、あるいは低く唸り出してこちらを威嚇してくることもある。夕方に近所を歩いていると、たまたま野犬の家族の真ん中に出てしまい、吠え立てられた時には恐ろしさを感じた。もちろん首都のアクラには、日本の犬々のように狂犬病ワクチンを受けた立派な犬種の犬々もいるし、リードを繋いで散歩しているところもよく見かける。しかし、アクラ以外でそのような犬を見かけたことはない。ちなみにアクラでは子犬を両脇に抱えて路上を歩き回って販売している人がいる。
不断の品種改良と良好な生育環境という条件があって初めて犬はかわいくなるのだという真理に辿り着いた。
猫
犬と比べると猫は日本とそう変わらないというのが印象だ。近所の個人経営の雑貨店で、母猫1匹、子猫2匹が飼われているが、ガリガリに痩せ細っているという点以外では日本とそう変わらない。犬と同様に、ガーナの猫はワクチンを受けたり不妊化手術を受けている割合というのは日本よりもはるかに低いのだろう。しかし、ガーナの猫と日本の猫の行動には全く異なる点を見出すことができない。ということはつまり、人間による飼育が猫の行動に与える影響というのは、犬のそれよりもきっと少ないのだろう。そもそも日本の飼い猫が野生と大して変わらない振る舞いをしていると言うことだ。
野生動物
ガーナでがっかりすることの一つは、「アフリカ」っぽい動物をほとんどの地域でお目にかかれないということだ。象やキリン、ライオンといった憧れの動物たちは日常で暮らす場所には絶対におらず、北の最果てのようなところで運がよければお目にかかれるといった状況だそうだ。しかしそれでも日本にはいない動物もいるので紹介したい。
シマウマ
象・キリン・ライオンといったスターには劣るもののシマウマは見ることができた。しかし、それもまた別のがっかりな現実がある。
アクラから北のそれほどない場所に、シャイ・ヒル国立公園というサバンナが広がる自然保護区兼観光地にそいつはいた。だだっ広いフェンスに囲まれた場所に数頭だけシマウマがいたのだ。ガイドが言う、「南アフリカからダチョウと一緒に輸入したものだ」と。「昔そこにはシマウマがたくさん住んでてそれを再現するために輸入した」という日本のコウノトリのような目的があるのかガイドに聞いてみたが、彼はシマウマを輸入した目的もかつてそこにシマウマがいたのかどうかも知らなかった。「じゃあライオンとかキリンも輸入してよ」とガイドに言ってみるものの、ガイドは「ここは動物園じゃないんだからそんなことしないよ」と言う。彼らの認識は実に謎めいてる。ガイドが言うには、十数頭輸入したのだが、環境の違いでバタバタと倒れて生き残っているのは今いる数頭だけだそうだ。アフリカの動物でさえ、大陸内の気候差に耐えられないことに驚いた。
猿
ガスステーション(調理用のガスタンクに気体燃料を補充するお店)で、リードに繋がれて飼われているのを見た。数千円で購入できるそうだ。この猿は野生であちこちに生息しているらしく、自分の住む学校の敷地にも人気のない深夜や早朝に現れることがあるそうだ。
別の種類だが、こちらはシャイ・ヒル国立公園で見かけたものだ。ふてぶてしく闊歩しており、人間を全く恐れていない。見た目通り凶暴らしく、エサを与えるなどもってのほかだ。
ナイルモニター
かなり大型の爬虫類で、近所の池沼で見かけたことがある。驚くべきことに現地の人たちは食べるらしく、捕獲したものを売りにいくところを見たことがある。
ネズミ・ラット
アクラやタコラディといった大都市の溝は大変汚らしく、ものすごい硫黄臭がするものだ。そんな過酷な環境に適応して生きているのがネズミだ。丸々と肥え太ったネズミは、生活排水が流れ込む側溝で頻繁に目にする。
そういった都市にいるネズミとはまた別の齧歯類にラットがいる。田舎の茂みに生息しているラットは、ガーナ人にとってはご馳走であるらしく、大きなマーケットに行けば猫ぐらいの大きさのラットがトーストされて売られている。このような茂み(ブッシュ)で採られる肉をまとめて「ブッシュミート」と言うらしく、高値で取引されている。近所では、たまに犬を連れて茂みを歩き回る男性2人組を見かけるが、彼らはどうやらそのような野生動物を狩って生計を立てているらしい。そういえば、去年ここに来たばかりの頃に生徒が我が家の前に出現したラットを狩って食べていた事件は、一生忘れられないだろう。
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