デフォルトに陥った国で


 先月、ガーナは対外債務の不履行、つまりデフォルトに陥った。そのつい一週間ほど前には、IMFがガーナの財政を支援するため、30億ドルのローンを決定したばかりだったが、そのローンが支給されるまでに起こったのは残念だった。

デフォルト以前の経済の混乱
 この国の経済はどう考えても混乱に陥っていた。手当をドルで支給される協力隊員にとっては、為替レートにその混乱が現れていた。2022年の初めには1ドル6セディほど出会ったのが、私が入国した10月には12〜14セディに。IMFのローンが決定した際には9セディ(市中の交換所では7セディ)ほどまで戻った。現在はまたセディの価値が下落しつつあり、市中の交換所では10セディ前後といったところだ。


 想像してほしい。唖然とする他ない。先月のある時点では、私の給料の価値は入国した10月の半分の価値しかなかった。ビットコインのような価格の乱高下だ。ボラティリティというジェットコースターに乗せられて日々の生活を生きている。
 こうした経済の混乱は現地の人たちの生活にも影響を与えている。顕著なのは物価だ。11月のインフレ率は50.3%だった。参考に日本では3%ほどだ。この国では物の価格が半年前の2倍になっていることも頻繁にある。

デフォルト以降
 デフォルトが起こってから、どのような影響が周りに現れるかを観察しているのだが、正直に言って特に変わったことはない。経済の混乱が治安の悪化に繋がるのではないかと懸念していたが、その兆候もない。元々経済が混乱に陥っていたからかもしれないが。しょせんデフォルトは政府の財政上の問題に過ぎない。それが1・2週間やそこらでは人々に直接の影響を与えないのかもしれない。今後、公務員の給与の削減・不払いや公共サービスの停滞・停止といった形で影響が出てくるかもしれない。それもIMFのローンが支給されるまでの話だろうと思う。

なぜデフォルトに陥ったのか
 そもそもガーナは2017-19年には毎年6%以上という驚嘆すべきGDP成長率を達成し、経済はまさに絶好調であった。しかしながらこれはガーナ経済の実力のおかげというわけではなかった。今世紀に入ってから、ガーナの南西の沖合で次々と油田が見つかり、その輸出による収益が高いGDP成長率につながったのだ。
 資源というのは莫大な富をもたらす金の卵だ。それと同時に資源とは呪いでもある。天然資源を発見した国が、資源輸出で莫大な富を得るが、その富が放漫な財政と汚職につながることで、資源による経済的な恩恵をかき消してしまうというのはよくある話だ。それがまさにガーナで起こったのである。
 石油によって得られた利益は、国内産業への適切な投資ではなく公立高校の無償化や箱物乱造といったポピュリスティックな政策につぎ込まれ、政府財政を膨れ上らせ政府債務を急速に拡大させた。汚職の蔓延もそれを加速させた。
 そうして不安定化した財政に、コロナショックとウクライナ・ロシア戦争によるインフレが直撃し、あっという間にガーナ経済は混乱の極みに陥り、そうしてデフォルトが起きた。

所感
 コロナショックとウクライナ・ロシア戦争がガーナをデフォルトへと追い落とすトリガーとなったのは確かだが、放漫な財政と汚職といった原因がなく財政の健全さを保っていたならば、こうしたことにはならなかっただろう。
 日本は汚職という点では世界の中でもかなり健全であるが、財政の放漫さについてはガーナよりはるかに酷いと感じる。インフルエンザと大してリスクの変わらないコロナの対策としてほとんど無意味に100兆円という巨費を浪費し、危険でもない原発を超法規的に停止させ、そのコストは維持費だけで毎年10兆円を費やしている。
 このような非合理が放置され、社会保障を含めた国民負担率は48%に達しているにもかかわらず、このような問題は国内でほとんど認識されていない問題である。おそらくそれは、日本の社会が表面上それなりにうまく回っているように見えるからだろう。しかしながら、必ずこのツケは近い将来に回ってくるのだろう。私が思うのは、「人の振り見て我が振り直せ」といったところだ。
 

ガーナのデフォルトについてのアルジャジーラの記事
https://www.aljazeera.com/features/2022/12/31/how-ghana-africas-rising-star-ended-up-in-economic-turmoil

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