母と歩く草のなか
おかあさん、どこに行くの? 何だかこわいんだけど……。
ムシとかもいっぱいいるよ。おねえちゃんは、むこうに行ったけど、
何だかこわいなあ。ねー、おかあさん!
ここは昔の船のみちがあったんだよ。
ほら、あなたの歩いてるところにレールがあるでしょ。
電車みたいに、このレールを船が通っていったんだよ。
船が山を越えていくなんて、すごいでしょ?
レールって、いろんなものが通るんだよ。
あなたは、電車は好きでしょ?
おかあさん、電車はもうキライだ。
レールもいらない。おねえちゃんもイヤだ!
どんどん先に行って、ボクたちは置いてけぼりだ。
ボクはプンプンだ。イヤになるよ。
ボクはかわいいのが好きなんだ。ムシはキライだ。
かわいいムシなんていないもん。
ムシはとんがってるし、草みたいだ。
草は、何だかかゆくなっちゃう。カイカイだ。
むこうになんか行きたくないや。
ボクは、どこにもいかないよ。
ボクは、じぶんの行きたいとこに行くよ。
サカナがいるとこはスキなんだけどな。
カワはあるかな。そういうとこに行きたいよ。
川は、少し行くと見えるんだよ。たくさん水が流れてて、みんなその水を飲んでるんだから。大事な水なんですよ。そこまで行こうね。
カワがあるの? だったら、行くかな。
水があるのはスキなんだ。少しだけガマンして行くよ、水のあるとこ!
おーい、早くおいで!
山を抜けてきた水があふれるところまで行ってみよう。
あと少しなんだよ。