橋本治 業界の改革案

「業界」とか「ナントカ協会」といわれるものは、だいたい「外部の声」に耳を傾けないものだ。「外部の人間=シロート」と思っているから、「聞く必要がある」とは思わない。業界全体がジリ貧になっても、不思議なことに、その中心にある「協会」そのものは「安泰」を自認しているから、「改革が必要だ」などという声は通らない。協会の周縁部にいて外部と接する機会の多い人間達が「このままじゃやばい」と思いはしても、その声は中枢に上がって行かない。

そういう業界は「長い伝統」を誇っているから、「伝統を守るのがわれわれの義務で、伝統は伝統であればこそ守られている・・・・・・だからこそ、われわれには余分なことをする必要がない」という不思議なロジックで「外部の声」あるいは「外部に通じる声」をシャットアウトできることになっている。そしてしかし、どこかで「このままではジリ貧だ。かつてのような勢いや華やかさはない」ということくらいは自覚しているから、ときどきヘンな改革案を示す。それはほとんど時代に逆行する案で、「なに言ってんのあの人達は?」と思われるような案であり、「“なに言ってんのあの人達は?”と言う声を閉め出すような案」だったりもする。


橋本治 「橋本治の立ち止まり方」

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