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#11 商品やブランドをアピールする前に、やって欲しいこと。

人に何かを知らせたいとき、伝え方の整理はとても重要になります。でも、ブランド側のいろんな伝え方を見ていると、整理が上手じゃないなぁと思えるケースがけっこうあります。では、訴求ポイントはどう整理していけば良いか。その便利なやり方について書いていこうと思います。

例えば商品で考えてみると、それはとても多くの要素で成り立っているはずで、訴求ポイントとはその中で競争力のある「強み」、つまりほかに差がつけられる部分を抽出するってことです。そもそも商品開発は、これまで無かった機能などによって優位に立ち、出来れば独占を目指すことから始まります。まあ、ウマくいったところで優位状態は長く続かず、売れたら必ずライバルが出現して、そこから少しでも抜きん出ようとしてさらに新商品が開発されていきますけどね。でもそうやって上を目指すわけですから、どんな商品にもほかより良い部分があります(目先の儲けだけ取って逃げていくような不真面目な商品は、ここでは無視します)。

そういった商品たちの訴求ポイントを考える時に活用したいのが「プロダクトコーン」理論で、マーケティング・コンサルタントの森 行生さんが考えた、商品を定義する際に、「ファクト」「ベネフィット」「イメージ」という3つの観点で分析する方法です。(この3つの用語は、理由は後述しますが、森さんのオリジナルとは変えています)。

◉ファクト
「備えている具体的事実」→性能とか、機能とか、特徴などの部分
◉ベネフィット
「その事実から人が得すること」→どう便利とか、どう安らぐなどの部分
◉イメージ
「それらから導き出されるべき印象」→やさしげ、カッコいいなどの部分

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構造としてはこういう感じで、ベースになるのはやはり「ファクト」です。その土台に基づいて「ベネフィット」が、そして「イメージ」が出来ます。そしてこの3つで分析すると、その商品の特徴やお客様にウケるポイントを明確に把握できるわけですが、もうちょっとそれぞれの関係性なども含めて詳しく書いていきますね。

まずこの3要素は、お客様のタイプと繋がりがあるという話から始めます。「ファクト」に興味を示したり理解してくれる人はどういうタイプかと言うと、事実の持っている意味が分かる、そのジャンルに詳しい人です。パソコンなら「AMD Ryzen搭載」が何のことか理解できる人たちです。でも興味も知識も通常レベルの人は、結局自分にとって何がいいのかという「ベネフィット」の方が理解しやすかったりします。「動画編集もサクサク」とかですね。また、こういう「ファクト」とか「ベネフィット」よりも、直感的な「イメージ」の「先鋭感」とかが刺さる人もいます。そこを把握すると、全体的にはコアターゲットをどう設定しているかでどの訴求ポイントを使うべきかが、戦略的に組み立てられたりもします。もっとピンポイントでは、例えば営業や店頭などで人に対応する場合の訴求(あ、この人には「ファクト推し」など)がしやすくなりますね。

そして3要素には、消費者の興味に順番があって、「ファクト」「ベネフィット」「イメージ」と移り変わります。新商品の魅力に最初に気がつくのは詳しい人で、まず彼らが「ファクト」について認めることから世の中に広がっていきます。そうすると、次に買う人々の関心は「ベネフィット」にあるので、大勢の興味としてそこに反応するようになります。そして、さらに一般化すると「イメージ」の出番です。じゃあ「イメージ」に行き着いて終わりかと言うと、これが面白くて、このループは繰り返します。「イメージ」の次は「ファクト」です。これを知っておくと、次の手が打ちやすくなりますよね。ライバルがみんな「イメージ」を訴求していたら、次に必要なのは勝てる「ファクト」を持った製品ということですし、そのファクトを伝えていく作業です。

もう気づいた方もいると思いますが、この「プロダクトコーン」は「イノベーター理論」と組み合わせて考えられるわけです。「イノベーター理論」は消費者を5つのタイプに分類し、商品が受け入れられていく流れを以下のように説明するものです。

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つまり、初めての商品を浸透させようとするなら、「イノベーター」から「アーリーアダプター」と捕まえていくべきで、だからこそ多くの企業はインフルエンサーとかアンバサダーマーケティングに熱心だったりするわけです。その話は機会があればということで、「プロダクトコーン」とつなげて考えると、まずは「ファクト」で勝てることが、「イノベーター」「アーリーアダプター」を捕まえていく条件になっていくわけです。

そして、その商品の良さを伝える広告などでは、プロダクトコーンの3要素は、最適なバランスを考えながら表現することになります。キャッチフレーズはどのポイントか? 説明コピーは? ビジュアルは?というように組み立てると、より効果的な表現になります。企画の時にも、3要素のどれをメインにするかで3方向考えて、今必要なのはどれか、とかメディア特性ごとの表現を考えることも出来ます。実際、僕が広告のプレゼンテーションをする時に、この3方向の手法は何度も使わせていただきました。

また、「プロダクトコーン」は「ブランドコーン」として置き換えて、ブランドとしてのあり方を訴求する時にも使えます。このことが、僕が3要素の用語を森さんオリジナルの「スペック、ベネフィット、エッセンス」からアレンジして使っている理由です。ブランドにとっては「性能=スペック」よりも「事実=ファクト」の方がしっくり来るかなと思い、しかも僕はブランディングを仕事にしているもので、ご容赦を。ともかく、ブランドのあり方を伝える時に、「自分たちはどういう事実を備えているか」「それはお客様にどんな良さを提供できるか」「どんな印象で伝わると良いか」と考えておくことは、理念をそのまま語るよりも興味を持ってもらいやすいでしょうし、これらの訴求ポイントには、当然ですがブランドの理念や思想が反映されています。

ちょっと長くなってきたので、ここらへんで一旦まとめますね。「プロダクトコーン」はつまり、

◆商品開発や商品戦略を考える際に、強みが欠けているところを見抜くチェックリストに使える。
◆お客様ごとの「どの訴求ポイントが効くのか」に対応でき、効率よく良さを伝えられる。
◆プロモーション戦略で、要素が抜かりなく、正しく表現できているかのチェックリストに使える。
◆ライバル商品の訴求を正確に把握でき、どうすれば優位性を持てるかが考えられる。
◆ブランドコーンとして応用し、自分たちの「あり方」の訴求にも役立てられる。

などなど、いろいろ応用できるわけです。何か抜けてないかな。それにここに書いただけではまだ概要だけなので、今後もプロダクトコーンに関わることは、いろいろ書いていくと思います。この理論に興味を持った方は、ぜひ森さんのサイトでさらに確認してください。
http://www.systrat.co.jp/theory/theory01pcorn.html
http://systrat.co.jp/abreak2/20130716.html

ブランディングについて、インナーからアウターまでの流れを説明する本を出しました。
ぜひお読みください(写真をクリック!)。

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