介護施設。どの職種もまずは“介護職”として一定の期間就業すべき。
高齢者介護の現場で働いていて、職種が違うと相手のことがよくわからない、というのがあると感じている。
現場ではいろいろな職種が働いており、たとえば厨房の調理士や栄養士や医師や事務職やリハビリ職がいたりするが、彼らのことが正直よく分からない。反対に、他の職種から介護職のことが理解されていない、介護現場の苦労が理解されていない、とも感じている。
わたしの場合、施設での看護師の経験が少しあるから看護職の動きがある程度わかる。しかし、ほとんどの場合は、自分が働いている特定の職種の特定の業務のことしか知らないんじゃないか。そして、それが職種間の分断を招いているというのもあるし、組織としての結束を妨げ、停滞させ、問題があるとも感じている。
経営学・組織論の分野における泰斗、野中郁次郎さんが、その著書(「アメリカ海兵隊 非営利組織の自己革新」「知的機動力の本質」)でたしか述べていたのだが、組織の構成員としての共通の価値観、コアバリュー(中核価値)を構築することが大事であると。
具体的には、アメリカ海兵隊では職種に関係なく、すべての隊員が“ライフルマン(射撃手)”であることがまず求められるのだという。そうやって共通の経験、共通の価値観を積み上げ、それを共有することが、組織を活性化していく上で重要なのだという。このことは、わたしが以前所属していた陸上自衛隊にも、ある程度同じことがいえる。
介護施設の場合、それぞれの職種が異なった教育や経歴をもっており、共通する土台がなにもない、という問題がある。つまり、共通の価値観やコアバリューといったものは、介護施設には存在しないともいえる。
介護業界の場合は、軍事組織とはもちろん違うわけだけど、まず施設の共通の価値観、中核的な価値観として、介護現場のしごとが理解されるべきであると日々感じている。それは具体的には、介護職としての職務をすべての職員が把握している必要があると思う。
よって、新規で採用された職員は、まず介護職として一定期間働くべきであると思っている。極論のようにも聞こえるかも知れないが、必要なことだと思う。
反対に、介護職以外にも、ある職種から他の職種に体験的・経験的に一定の期間派遣する、という制度があってもいいのではないかと思う。そうやって、異なる職種間のことを相互に共有することは、組織の活性化にとって重要なんじゃないか。