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洸
2017年3月13日 22:50
3月の海水は冷たかった。ジーンズの裾が水を吸って、ぐずぐずと重たく足にまとわりつく。寒い。冷たい。最初の頃感じていた痛みはいつの間にか消えていた。消えるほど長かった。忘れるほど進んだ。波を切るように水を蹴りながら、俺と彼女は歩いていく。無人の砂浜。靴はずっと前に捨てた。「ありがとうね、ここまで一緒に来てくれて」 彼女は真っ白なワンピースを着ていた。俺よりも数歩先を歩いていた。今にも雪が降り出