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プーチン氏がなぜこれほどまでにキレたのか

今日のおすすめの一冊は、大前研一氏の『日本の論点 2023~24 「超円安」「分断化」を生き抜く』(プレジデント社)です。その中から「リーダーシップを失いつつあるアメリカ」という題でブログを書きました。

本書の中に「プーチン氏がなぜこれほどまでにキレたのか」という興味深い文章がありました。

ウクライナ侵攻において、プーチン氏がなぜこれほどまでにキレているのかを理解するには、「プーチン脳」で考えてみるしかない。

そもそもプーチン氏のイライラは、ゼレンスキー氏が大統領に就任した頃から始まっていた。ゼレンスキー氏が「ミンスク合意なんて知らないよ」という態度を見せていたからだ。ミンスク合意とは、ウクライナ東部で起きたドンバス戦争を停戦させるために、2014年にベラルーシの首都ミンスクで調印されたものだ。

ドンバス地方は親ロ派のドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国が実効支配し、ウクライナ政府と対立している。2014年の合意では、ウクライナ、ロシア、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、OSCE(欧州安全保障協力機構)の代表が調印し、翌2015年にはドイツ、フランスが仲介して「ミンスク2」が調印され ている。

合意内容には「停戦とともにウクライナの憲法を改正し、ドンバス地方に“特別な地位”を与える」と規定している。

ウクライナの東側のドネツク州とルガンスク州は住民のおよそ3割がロシア系だが、「人民共和国」が実効支配している地域に限ればクリミアと同じく7割を占める。彼らはドンバス地方の東側50キロほどをぶん取ってロシアとの間に緩衝地帯をつくっていた。

この地域に自治権を認めるというのがミンスク合意だった。ところが、2019年に大統領になったゼレンスキー氏は「あの合意はウクライナが不利な条件を押しつけられたもの」と公然と言い出した。苦労して調印した合意を反故にしようというのだから、プーチン氏から見れば、ゼレンスキー氏は大馬鹿者だろう。

ロシア議会は「ウクライナ政府が彼らの自立を認めないなら独立宣言させる」と決め、プーチン氏は侵攻の1週間ほど前にこれにサインした。ゼレンスキー氏がすぐにドンバス地方に自治権を与えていれば、あるいは当事者の一人であったドイツのアンゲラ・メルケル元首相がすぐに仲介に動いていれば、プーチン氏も侵攻するほどイライラを募らせることはなかっただろう。

日本のメディアは、ロシアのウクライナ侵攻について、「プーチンの行動は理解不可能」「ウクライナのNATO加盟申請が最大の問題」などと報じているが、 ゼレンスキー氏による一連の人気回復政策がそもそもの発端なのだ。彼が大統領になってからの流れを追えば、プーチン氏が憤激した背景が理解できるだろう。

一方、ロシアの侵攻開始以降のゼレンスキー氏の役者ぶりは素晴らしい。ネットで神出鬼没し、世界中にウクライナ救助を訴えている。演説の内容もわかりやすいし、好感が持たれる。いつの間にか支持率は90%を超え、「今世紀まれに見る指導者だ」という見方が定着しつつある。

◆もし、この話の通り、そもそもの発端がゼレンスキーの支持率を回復させるためだとしたら、我々の見方は大きく変わる。新聞やマスコミ報道では、プーチンこそ大悪人だという論調ばかりだからだ。

しかし、実際にプーチン氏のウクライナ侵攻に反対している国は、世界の人口の中でわずか、13%程度にすぎない。アメリカの同盟国と軍事的保護国だ。そもそも、世界の人口の1位と2位のインドと中国がプーチン氏を支持している。これらの国はロシアとともにBRICSを構成している。

世界情勢は特にファクトチェックが必要だ。その場の雰囲気や勢いに流されると大失敗をする。

様々な情報を集め、判断を誤らない人でありたい。

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