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古くて新しいもの

今日のおすすめの一冊は、中山靖雄氏の『すべては今のためにあったこと』(海竜社)です。その中から「何気ない日常にまことを尽くす」と言う題でブログを書きました。

本書の中に「伊勢神宮」のことが書いてありました。
《伊勢の神宮のように、古くして新しいものが常に栄えます。その感覚を日本人は大事にしてきました。
「古くして新しいもののみ栄える」と昔から言われてきました。「古くして古いものは滅び、新しくして新しいものも滅びる。古くして新しいものが常に栄える」のです。「古くて新しいもの」とは何かと言うと、たとえば「親孝行」がそうです。ほかにも「魂で生きる」とか、「元にかえる」とか、昔は当たり前に大事にしていたことが、少しずつ忘れられて、そして今再び新しい感じがすると思うのです。
その姿の最たるものが伊勢の神宮です。神宮は20年おきに遷宮されます。遷宮とは、神宮のすべての建物を20年おきにお建て替えすることです。2000年前の昔の建物の姿のままでありながら、今そこに新しい姿で存在しています。遷宮の際は、建物だけはなくて、橋や、装束、金具などもすべてを造り替えています。
日本の文化遺産の中には、木造の姿で1300年前から建っているものもあります。しかし、神宮様はあえてそれをしていないのです。形は2000年前のままです。古いけれど、20年に1度遷宮をしているので新しい。それがなぜできるかというと、20年に一度遷宮をするおかげで、建物だけではなく、装束や金具をつくる人々が途切れないのです。
20年おきだから、やった人がまだ生きている間に次の人に伝えることができる。だからこそ残っていくのです。これはすごいことですね。2000年前と同じようにつくれる方が今もおられるのですから。
また、太陽も古くして新しいものです。太古の昔から、太陽が昇った時に人々は嬉しい思いが湧いてきます。まるで今日初めて見たような思いがする。太古の昔からあるのだけれど、今日、昇った日の出を見た時は、まるで初めて見たような感動が湧きます。ずっとあり続けているけれど、いつも新しく清々しいのです。
魂も古くして新しいもののみが栄えていくものです。それは、昔からあり続けながらも、毎朝新しくなる魂です。昔の人はそれを知っていたのですね。

以前、伊勢神宮の神職の方のお話をうかがったことがあります。その中で、海の正倉院といわれる、九州の沖ノ島にある宗像大社(むなかたたいしゃ)の話が感動的でした。神の島として長い間、一般の立ち入りが禁止されていたため、1954年に初めて祭祀遺跡(さいしいせき)の学術調査が行われたそうです。

その時に出土したのが、約12万点以上の祭祀遺品。しかし、その使い方や、名前がわかりません。そこで、伊勢神宮に問い合わせしたところ、ほとんどの祭祀遺品が判明しました。1200年前の出土品の使い方や、名前が分かるところは、世界中どこを探してもありません。現物は出土しても、その使い方のマニュアルや、操作方法など、一緒に埋まっているはずがないからです。

しかし、伊勢神宮では、1300年にわたって、20年ごとに神宮で使う全ての、祭具や装束や建物を、全く新しく作り、その技術まで伝承しています。つまり、1200年前の、沖の島の出土品が、そっくりそのまま伊勢神宮では、今も使われているということなんです。

技術の伝承は、20年が限度といわれます。例えば、若い人が20歳、その上の親方が40歳、その上の大親方が60歳という年齢構成だと、技術は廃(すた)れずに継承されるそうです。一見無駄のように思える20年ごとのご遷宮が日本人の叡智と、技術の伝承を守ってきたんですね。

日本のルーツでありDNAである伊勢神宮を守っていくことは歴史や伝統といった、日本そのものを守ることでもあるんだと思います。

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