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個と集団のポジティブな関係

今日のおすすめの一冊は、インバル・アリエリ氏の『起業家精神のルーツ』(CCCメディアハウス)です。ブログも同名の「起業家精神のルーツ」として書きました。

本書の中に「多様性」についてこんな文章がありました。

時に文化は2つのタイプ、すなわち個人主義的なものと集団主義的なものとに分けられ、大抵の文化はそのどちらかに偏っています。個人主義的な文化では、自分やその家族の物質的、精神的な欲求は各個人で解決するものであり、集団主義的な文化では、個人は結束力の強い集団と完全に一体化されてています。
西欧諸国や米国は概して個人主義的で、個々人の業績や権利がまず重視されます。対照的にグァテマラや中国、日本や韓国ではそれとは逆で、無私の行動や大家族、強調性が重んじられます。 
イスラエルは個と集団とのポジティブな緊張関係があります。それはいったいどこから生まれてくるのか、不思議に思うかもしれません。それは、イスラエルの多様な人口構成から来ていると言えるでしょう。世界で最も異質な国家の一つとして、まずイスラエルは70ヵ国以上の国からの移民で構成されており、多様性がこの国の最大の資産の一つとなっています。
実際、2014年には、ユダヤ系イスラエル人の25%は移民であり、35%は移民の子どもたちで、残りの40%は第2世代のイスラエル人です。このように人口構成が文化的に多様であるため、「イスラエル人とは?」という問いに答えるのは大変難しいのです。ですから、イスラエル人の典型というものはありません。モロッコ人、ロシア人、ポーランド人、エチオピア人、アメリカ人、エジプト人、ウクライナ陣、ウズベキスタン人などなどがいて、数え上げれば切りがありません。
集団の多様性が、創造性とイノベーションを育む源泉であることは十分に立証されています。各人が出身国の伝統や知識や特質を新たな国に持ち込んで、その集団を豊かにしているのです。国家レベルで考えるなら、多様性は国の文化や経済にきわめてポジティブな影響を与えます。移民とその子どもたちが建国したアメリカの多くの成功企業を見れば、このことは明かです。
アメリカの場合と同様、イスラエルのスタートアップ企業の成功文化は移民社会と密接に関係しています。これには多くの理由があります。まず第一に、移民は本質的にリスク・テイカーつまりリスクをとる人たちであり、努力家です。彼らは自力で再出発しようとして、故国と住み慣れたコミュニティを離れるという果敢な決断をしているのです。
新天地に到着すると彼らは不慣れな環境に晒され、すぐに適応しなければなりません。機敏な対応を求められ、居心地のいい安全地帯の外の多くの課題に立ち向かわざるをえません。イスラエルでは、この種の個人的な野心は、しばしば集団のプロジェクトや目標に注がれます。
イスラエルの幼年時代には、グループへの協力、コミュニティの形成、社会的ネットワークの維持拡大が重視されます。そのため「ギャング」(集団)はきわめて重要になります。英語の「ギャング」という言葉は、普通はネガティブな意味合いを持っていますが、ヘブライ語に訳されると「ハブラ」となり、この上なくポジティブなものを意味します。
「ハブラ」は自由時間のほとんどを一緒に過ごす若者や子どもたちの集団をさします。学校仲間、課外活動仲間、近所仲間といった具合です。イスラエルではこのような集団が子どもの、ときには大人の社会的ネットワークを形成しています。

昨今、日本では、個の重要性を強調するあまり、とかくグループや集団での協調性がないがしろにされる傾向があります。しかし、言うまでもなく、個も大事だし、チームとしての協調性が大事なのは当然のことです。何かをなそうとするとき、一人では何もできないからです。

我々は、個と集団とのポジティブな関係の大事さを、今一度学ぶ必要があります。そのためには、多様性にもっと寛容になる必要があると思うのです。これは何も移民を入れろということではなく、多様な価値観を大事にする社会であれ、ということです。

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