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受けた恩は石に刻む

今日のおすすめの一冊は、西沢泰生(やすお)氏の『小さな幸せに気づかせてくれる33の物語と90の名言』(かんき出版)です。その中から「誰かに必要とされること」と題してブログを書きました。

本書の中に「受けた恩は石に刻む」という心に響く文章がありました。

2013年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での裏話。その感動的な場面が展開されたのは、3月8日に行われた、日本対台湾戦での事でした。その日の試合は9回ツーアウトまで負けていた日本が奇跡的に同点に追いつき、延長戦に突入。死闘の末、最後は日本チームが勝利をつかみました。

そんな熱戦よりも、もっと感動的なドラマは、テレビ中継も終わった試合終了後に待っていたのです。試合が終わったあと。なぜか、台湾チームの選手たちが、ピッチャーが立つマウンドに集まります。そして、全員が客席の方を向くと、スタンドのお客さんたちに向かって、深々と頭を下げたのです。

なんと、スタンドの日本人の観客全員に対して、「応援を感謝した」のです。スタンドにいる台湾人のお客さんにではなく、日本人のお客さんたちに向かってです。そして、気が付けば、台湾のファンが掲げた旗には、「日本おめでとう」の文字が。

勝利を目前にして涙を飲んだ悔しい逆転負けのはずなのに、こんなにも感動的な敗者の姿があるでしょうか?台湾チームが日本のファンに感謝したのには、こんな背景がありました。

日本対台湾戦を2日後に控えた3月6日。1人の日本人が、ツイッターでこんなつぶやきをしたのです。「WBC、日本の初戦は台湾に決定。この試合を応援に行かれる方、先般の東日本大震災への台湾からの多大な支援のお礼の横断幕やプラカードをお願いします。WBCを通じ、日本と台湾の信頼関係を深め、私たちが本当に台湾に感謝している事を伝えてください

台湾はあの震災の時、200億円を超える義援金と400トンを超える援助物資を送ってくれました。これは世界中で最も多い支援でした。そして、震災の翌日に、世界のどこよりも早く援助隊を派遣してくれたのも台湾だったのです。

ツイッターのつぶやきは、「この時の支援へお礼をしよう」という呼びかけだったのです。このつぶやきは、瞬く間に日本中に広がりました。それだけではありません。翌日には中国語に翻訳され、台湾の人たちの間でも話題になっていったのです。

そして、試合の当日。スタンドには「台湾に感謝」と書かれたたくさんのメッセージが…。台湾チームの選手たちも、スタンドのこれらのプラカードを見て感動します。360度。観客全員へ向かって感謝の一礼をした台湾の選手たち。その姿に、スタンドからも惜しみない拍手が贈られました。

「憎しみ」に「憎しみ」で答えても、何も生み出しません。「感謝」に「感謝」で応えると、そこには、とても大きな大切なものが生まれる。その事に、改めて気付かせてもらうことができました。

「感恩報謝」という言葉がある。恩を感じ、「報謝(ほうしゃ)」すなわち、他人の恩に報(むく)い、その徳に感謝すること。「感謝」の間に、「恩報(恩に報いる)」という文字が入っている。

恩に報いるには、受けた恩に気づかなければならない。恩に気づける人は、人に与えている人だ。人に喜んでもらおうと考えている人。もらうことばかり考えている人は、人から受けた恩に気づかない。それが当たり前になっているからだ。受けた恩を忘れず、感謝で応える人でありたい。

「かけた情けは水に流し、受けた恩は石に刻む」

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