強く願うこと
今日のおすすめの一冊は、HILLTOP株式会社、代表取締役副社長、山本昌作氏の『ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所』(ダイヤモンド社)です。ブログも同名の「遊ぶ鉄工所」という題で書いてみました。
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山本昌作氏は「変わる」ことについてこう語っています。
ヒルトップの工場見学を終えた同業者のA社長から、自嘲気味にこんなことを言われたことがあります。「立派な本社ビルと『ヒルトップ・システム』があれば、そりゃあ、多品種・単品・24時間無人加工だって実現できますよね。やりたいこともできるでしょう。うちのように社員が10人しかいない小さな会社には、どだい無理な話です」
この社長は、大きな勘違いをしています。本社ビルと「ヒルトップ・システム」があるから「脱量産・脱下請・脱肉体労働」を実現できたのではありません。順番が「逆」。「夢工場をつくるぞ!」「白衣を着て働く工場にしてみせるぞ!」と夢を持ち続けたからこそ、本社ビルと「ヒルトップ・システム」を完成できたのです。
この社長と私に違いがあるとしたら、それは「想いの強さ」だけかもしれません。A社長がいつまでも下請から脱却できないのは、「しょせん下請の町工場は、油まみれになって機械を動かすしかない」と自分の天井を決めているからです。「無理だ」と思っている限り、絶対に「無理」。「無理だ」と思うと視野が狭くなり、新たな可能性やビジネスチャンスに気づけなくなる。しかし私には、「無理だ」という概念がありません。
人は、目標や夢を持つことで道が開けていきます。私たちの夢は、「丘の上」に立つこと。大企業が富士山なら、うちは丘。「ヒルトップ」という社名には、「アルミ加工の分野で頂点を目指す。絶対にどこにも負けない」という強い想いが込められています。
私は、山本精工に入社して3年後に工場長になりましたが、油と削りカスにまみれた自分のみすぼらしさに嫌気がさし、いつも「女の子にモテる鉄工所にしたい」「歌って踊れる鉄工所をつくりたい」と本気で思っていました。しかし、単純労働の不条理に耐えかね、社員に向かって、「社員が誇りに思えるような、夢の工場をつくるぞ」「油にまみれるのではなく、白衣を着て働く場所にしてみせるぞ」と声高に呼びかけてみたものの、反応はなし。
私以外、誰も信じていなかったのでしょう。社員から、「工場長!鼻の穴真っ黒にして、何バカなこと言ってるんですか。爪もこんなに汚れていて、タワシで洗わないとあかんのですよ。頭から爪の先まで油まみれになっているのに、白衣なんか着てどうするんですか!」そんなあきれ声が聞こえてきても、私は意に介さなかった。なぜなら、「『変わりたい』という気持ちを捨てなければ、運命にあがらうことができる」「嘘も、100回目は本当になる」と信じていたからです。
松下幸之助翁の同様の話があります。松下翁がある講演会で、「ダム式経営」の話をしたのだそうです。ダム式経営とは「資金も人もすべてダムに水をたくわえるように余裕を持って経営をしなさい」ということ。そして、講演が終わり、1人の聴衆から質問の手が挙がり、「経営は余裕をもって取り組めとおっしゃります。それは十分わかりますが、わたしは、どうしたらそのダム式経営ができるかを聞きたいのですが」と。
松下翁は壇上でしばし沈黙してからこう答えました。「ダム式経営はどうしたらできるか、わたしもようわかりませんのや。やり方はようわかりませんが、とにかくダム式経営をしたいと強く願うことですわ」。この答えで、会場中が「そんなのは答えないなっていない」とばかり、嘲笑の渦に包まれたといいます。
ところが、このやりとりを聞いていた、当時33歳の創業間もない京セラ創業者の稲盛和夫氏。稲盛氏は「とにかく願うことですわ」という松下の言葉が魂を貫いたと言います。それ以来稲盛氏の信条の一つが「強く願う」というものになったと言います。
まさに、「強く願うこと」がすべての始まりです。そうなりたい、と願うこと。大抵の人は、それは「無理」「できない」と最初からあきらめてしまいます。「強く願うこと」本当に大事だと思います。
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