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ベンチからはじまるまちづくり

今日のおすすめの一冊は、小林大輔氏の『まちづくり戦略3.0』(かんき出版)です。ブログも同名の「まちづくり戦略3.0」として書きました。

本書の中に「ベンチからはじまるまちづくり」という興味深い文章がありました。

まちづくりの原則は「スモールスタート&スローディベロップメント」となります。まちづくりの最小単位をアクティビティとし、その最もミニマムな単位からはじめていくのがファーストステップとなります。 

アクティビティの種類としては、買い物や食事、読書、スポーツ、エンターテインメントま で、さまざまなものがあるということでした。その中から、各地域や場所に合うアクティビ ティを選ぶことが、最初の行動になります。 

具体的にアクティビティの最小単位を考えてみると、「空いているスペースにベンチを置く」 というのもひとつの方法です。

たとえば、海が見える空きスペースにベンチを置き、そこに 座って自然や景観を楽しむというアクティビティをしてもらう。それだけでもいいのです。 自然や景観が楽しめるベンチがあるだけで、そこに人が集まる可能性があります。

こうした 最小単位のアクティビティから人の行き来が生まれ、そこからまちづくりがスタートされていくことになるのです。 「景色がきれいな海辺に置かれたベンチ」というだけでも、人の心は動きます。「そこに行こう!」と思ってもらえれば行動が生まれ、行った先で得られた体験から、食事や宿泊といった次のアクティビティへの広がりが検討できます。 

具体的には、ベンチに座っている人が次のようなことを考えるかもしれません。 
■美味しいお酒と料理を飲み食いしながら、この景色を堪能したいな 
■思い出として写真に残したいな 
■ベンチでコーヒーでも飲みながら、読書するのもいいな 
■ハンモックも用意して、眠くなったらそこで寝るのもいいな 
■音楽を流しながら、まったりしたいな 
■たくさんの友人を呼んでバーベキューがしたいな 
■今日は夕焼けを見たけれど、もっとゆっくりできる日はここで夜空でも眺めたいな 

このような希望が膨らんでいくと、それを実現するためのアクティビティに需要があること がわかります。「ベンチを置く」という最小単位のアクティビティからはじまったこのまちづ くりに、次の展開が期待されるというわけです。 

屋台やキッチンカーをはじめとする飲食店を設置するのはもちろん、ベンチだけでなくバー ベキューやキャンプができる設備、 ハンモックやテント、さらには写真サービスや宿泊施設まで、アクティビティを実現するものとしては、さまざまな広がりが生まれます。 

それらのアクティビティを単独ではなく、有機的につなげていくことによって、地域として の価値がより高くなっていきます。もちろんそこには、人の希望が反映されており、経済活動 に結びつくようなポテンシャルがあるわけです。 

「モノ消費からコト消費へ」といわれて久しい昨今。各地域に存在する強みを活かし、適切に アクティビティができるものを配置するだけで、まちづくりの成功確度を高めていくことがで きます。

そのきっかけは「ベンチを置くこと」でいいのです。 従来型のマスタープランにはじまる大規模なまちづくりと比較すると、非常に簡単でハード ルが低く、リスクも小さいです。それでいて少しずつとはいえ、非常に高い確率で成長してい けるため、将来性があり、可能性が大きく広がることも期待されます。 

このように、弱者の戦略を加味したスモールスタート&スローディベロップメントの原則は、 都心ではなく、地方のまちづくりを推進する力があります。それも大きな組織ではなく、小さ な団体、あるいは個人からでもはじめられます。 そして、 これから成長するポテンシャルのある地域の大半は、こうしたまちづくりが最適だと思うのです。

ニューヨーク市には約2000のベンチがあるという。そして、すべての設置場所がマッピングされていて、見ることができる。ベンチの設置は市民に呼びかけ、場所を決める。

ニューヨークの副市長はこう述べている。

CityBenchは、すべての世代のニューヨーカーが街をより楽しく歩きやすくさせ、街並みを向上させるものです。ベンチの設置場所は、バス停や商業地域の中はもちろん、市民からの要望を常に受け付けながら選定していきます。これらのベンチは、ただ休むことだけではなく、高齢者や地域住民が座り、家族のことや地域社会のことについて、隣人たちと楽しくお話しすることを可能にします。(STREET BLOG NYC)《グランドレベル・大西正紀》

ベンチからはじまるまちづくり、実現できたら素敵だ。

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