「共有価値」でまちをデザインする
今日のおすすめの一冊は、宮田裕章氏の『データ立国論』(PHP新書)です。その中から『データ社会は「産業革命以来の大変化」』という題でブログを書きました。
本書の中に『「共有価値」でまちをデザインする』という興味深い文章がありました。
データ共鳴社会の芽生えとも言える、「貨幣の外側の価値」で動くコ ミュニティの紹介をしたいと思います。 実はすでに日本でも、ある地域における近い価値観の人同士をデータの力で手繰り寄せ、「共有価値」の響き合いを巻き起こしながら、まちをデザインするチャレンジが始まっています。
ここでは、「面白法人カヤック」が鎌倉市などで展開中の「まちのコイン」というコミュニティ通貨の取り組みをご紹介します。私は神奈川県の顧問を務めている関係でこのプロジェクトの担い手たちとつながりができ、当初から関わっています。 この「まちのコイン」は、「使えば使うほど、仲良くなるお金」をテーマに掲げた、ま ちを舞台にした「体験エンタメゲーム」のようなものです。
たとえば、まちの能舞台の手入れをする、ビーチクリーニングに参加するといった「体験」をすると、その地域内の飲食店で使えるコインを獲得できる。地域貢献をすることで、特色ある地域ならではのスペシャルな体験が得られるというシステムです。
この取り組みのポイントは、データを通じて、それぞれが興味・関心のあるテーマに応じた人のつながりがどんどん生まれるところにあります。「同じ場所にいるから」ではなく、「こんな体験をしてみたいな」という興味・関心の軸によって人と人とが出会うので、 地域の中にどんどんつながりが生まれます。言うなれば、「志の縁」をつくる仕組みです。
カヤックは、地域固有の魅力を「資本」と捉えて「地域資本主義」を標榜している会社です。そうした「貨幣の外側の価値」をデータの力で可視化し、つなげる。まさにデータ 共鳴社会的な発想だと言えるでしょう。
この取り組み自体は、データの扱い方の設計次第で、活用範囲をどこまでも広げていけるでしょう。現に、カヤックは行政や市民を巻き込みながら、「まちのコイン」以外にもさまざまな仕掛けを展開しています。
GDPに代わる指標を企業側からつくっていく試みとしても、新たな地域自治の在り方としても、熱い取り組みだと思って応援しています。こうした自発的な取り組みで、市民側に「自分たちのできる範囲で、自治運営にも関わろう」というマインドが生まれてくると、まちは一気に活気づきます。
EUでは、GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)が2018年に施行されました。これは、あらゆる市民が、国や企業に提供した個人データをコントロールする権利があることを定めたルールです。しかし、これを厳格に運用するとデータを運用する側が、かなりの頻度で同意取得を得なければならなくなり、データの活用が滞る事態となりました。
そこで、現在は「GDPRのその先」が求められていると宮田教授は言います。その一つの例が「面白法人カヤック」の事例なのです。
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