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すごい人は目立たない

今日のおすすめの一冊は『運が開ける【欽言録】』(徳間書店)です。その中から「若手とつきあうこと」という題でブログを書きました。

本書の中に「すごい人は目立たない」という心に響く一文がありました。

『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ系)のナレーターなどで活躍した『おヒョイさん』こと藤村俊二さん。仕事中でもヒョイといなくなり、そしてヒョイと現れる。だから『おヒョイさん』というニックネームがついたようです。

最初に会った頃、おヒョイさんは、ふわふわとした軽い感じで、口癖は「ぼくちゃん、お仕事、嫌い」「ぼくちゃん、考えること、ダメ。一生懸命やること、もっとダメ」でした。そして、何をやっても先頭を切ってやるということをしない人でした。

「そんなことすると、ぼくちゃん、疲れるから」そんなおヒョイさんを見て、「なるほど。そういう人なんだ」と思い込んでいました。

ところが、80年に『欽ちゃんのちゃーんと考えてみてね!』(日本テレビ系)という番組を一緒にやり、おヒョイさんを見直してしまいました。長~いセリフが多いんです。それなのにおヒョイさんは全然間違えずに、ビシッとやります。

「ぼくちゃん、ダメ」と言いながら、セリフを間違えたら本当にダメな人ですが、おヒョイさん、全然NGを出さないんです。「すごいなぁ」と感心しました。驚かされたのは、80年の秋に僕とおヒョイさん、

それに何人かの人達で、ニューヨークのブロードウェーの舞台を観に行った時のことです。日本では全く英語なんて使わないおヒョイさんが英語ペラペラ。ホテルのチェックインから、どこでお土産買ったらいいかをスンナリとガイドしてくれますし、ブロードウェーの舞台でも「これはこういうお芝居なの」と全部、説明してくれます。

だから、僕達は全員、おヒョイさんの後ろにくっついて歩いたんですが、おヒョイさん自身は、皆の面倒を見ただなんて、全然威張りません。そして、日本に帰ると、「僕は英語なんて知りません」と言う顔で、相も変わらず、ひょうひょうとしています。

「おヒョイさんてどんな人なんだろう?」。興味を持った僕は、周りの人に聞いてみました。お坊ちゃんでエリートなんです。お父さんは『有楽町スバル座』などを運営する『スバル興業』の社長で、高校までは名門の暁星学園で学び、早稲田大学に進みました。その後、舞踏家を目指して『東宝芸能学校舞踏科』に入学。

60年、『日劇ダンシングチーム12期生』としてヨーロッパ公演を行いますが、本場の芸の水準の高さに驚き、舞踏家を断念して振付師に転身します。こんな話も聞きました。『日劇ダンシングチーム』のヨーロッパ講演は1ヵ月の予定だったのですが、旅先でおヒョイさんの姿がヒョイと消えてしまったのだとか。

どうやら、パリジェンヌやイタリア娘と恋に落ち、数年間ヨーロッパに居ついた後、ヒョイと日本に帰ってきたそうです。

何年か前、久しぶりにテレビ局で会い、「おヒョイさん、また別の番組を一緒にやりましょう」と言ったら、「お仕事じゃなくていいじゃないの。遊びを一緒にやろうよ」そう言ってニコッと笑い、「だってさ、ぼくちゃん、お仕事、嫌いだから」

軽妙洒脱で、ひょうひょうとしていて、粋でオシャレなおヒョイさん。目立つことが嫌いで、人に気を使わせまいとするおヒョイさん。そんなおヒョイさんは僕が一番尊敬する芸能人なのです。

現代は、ある意味、目立ってナンボの世界なのかもしれない。SNSでは目立つため、日々様々な投稿がある。自分の存在感を示すためだったり、売り込むためだったりする。

しかし、本当にすごい人は目立たない。真の実力がある人は、威張ることもないし、大風呂敷を広げることもない。そして、自分から宣伝することも、売り込むこともない。お店だったら、たとえ路地裏の分かりにくい場所にあろうと、わざわざ探し出して買いに来てくれる。

これは人も同じ。「軽妙洒脱で、ひょうひょうとしていて、粋でオシャレ。そして、目立つことが嫌いで、人に気を使わせまいとする人」

本当にすごい人は目立たない。

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