返報性の法則
今日のおすすめの一冊は、『他人を動かす質問』(大和書房)です。その中から「レストランの語源は」という題でブログを書きました。
本書の中に「ギブ・アンド・テイク」についてこんなことが書いてありました。
厄介な難題を相手に持ちかけるとき、それを引き受けてもらえるかどうかは、それまでに相手にどれだけのことをしてあげたかどうかで決まってくる。もしあなたが相手のために、一度でも動いたことがあるのであれば、相手もあなたが困ったときには動いてくれるはずだ。「お互いさま」ということで、喜んで引き受けてくれるであろう。
その人のために、何のこともしてあげていないのに、こちらの要望だけを飲んでもらおうとしても、そうは問屋がおろさない。そんなに自分の都合よく物事が進むとは思わないほうがいいのである。米国のグレシャム・サイケスという学者が、刑務所の看守についての面白い研究を行ったことがある。
サイケスによると、優秀な看守になればなるほど、脅しや罰則などで囚人をコントロールしていないのだという。地位にモノを言わせて、強引に囚人を動かそうとしている看守は、囚人に反発を食らって、あまり言うことを聞いてもらえなかったのだ。
では、優秀な看守はどうやって囚人をコントロールしていたのかというと、●ささいなルール違反を大目に見てあげる ●タバコをこっそり与える などをしていたというのだ。つまり、ギブ・アンド・テイクの精神で、囚人のために何かをしてあげ、その代わりに所内の秩序が保たれるように、囚人たちからの協力を得ていたのである。
人間というのは、わりと計算高いところがあって、自分のために、あれこれと骨を折ってもらった人のためでなければ、動こうとはしないのだ。自分から相手に何のこともしてあげていないときには、どんな頼み方をしても、断られるのが当然、世の中の条理として、そんなに自分ばかりがトクをできるなどとは期待しないほうがいいのである。
面倒でも、困った人を見つけたら、いつでも手を貸してあげよう。一肌も、二肌も、喜んで脱いでおけば、いざというときに必ずその相手が助けてくれるし、あれこれと世話を焼いてくれるのである。
「何かをしてあげなければ、何かをしてもらえない」、と言ったら身もふたもないですが、現実にはほぼその通りに世の中は動いています。それは、簡単にいうと「貸しをつくる」という生き方です。多くの人は、人に「借りをつくる」ことに敏感です。たまに、借りをどれだけつくってもへっちゃらな人がいますが、それは例外です(笑)。だから、借りたものは返さなければならないと、重荷に感じるのです。
それを「返報性の法則」といいます。他人から何かをしてもらったら、お返しをしないと申し訳ないという気持です。バレンタインがいい例で、チョコレートをもらったら、返さなければいけないという心理です。ただし、その時に、決して「見返り」を要求しないことです。「見返り」を要求しただけで、その人はその後ずっと「避けられる人」になるからです。
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