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人間の魅力は「強さ」のこと

今日のおすすめの一冊は、城山三郎氏の『少しだけ、無理して生きる』(新潮文庫)です。その中から「恬淡(てんたん)の人」という題でブログを書きました。

本書の中に『人間の魅力は「強さ」のこと』という心に響く文章がありました。

人間の魅力というのは、畢竟(ひっきょう)、その人の「強さ」のことかもしれません。もっとも、平和な今の時代に、はたして「強さ」なんて必要だろうか、と考えることもあります。

けれども、やっぱり人生というのは、晴れた日だけが続くわけではない。雨の日、嵐の日は必ず来る。そんな悪天候の日に備えて、「強く生きる」とは何かを考えておく必要があると、私自身の脆(もろ)さを振り返って思うのです。

ですから、強い生き方をした人たちから、学ぶべきものは学んでおきたい。いや、力及ばず、学ぶことも真似することもできなくても、そんな魅力的な人たちが存在すると知るだけでも、私たちの人生は豊かになるのではないでしょうか。

同じ作家仲間で私が強いと感嘆したのは、亡くなられた野上弥生子(やえこ)さんです。先年、野上さんの百歳を祝う会を仲間内でやりました。野上さんは、謙虚な方で、「そういうことはいやだし、白寿だろうが黒寿だろうが、私にはどうでもよいことなの」とおっしゃっていましたが、こじんまりした会を開いたのです。

その会場で私は、野上さんと親しい編集者たちといろいろ話をしたのですが、彼らが言うには、野上さんを担当すると大変なんだ、と。

野上さんの家に伺うたびに、その折々の政治問題、社会問題についてよく勉強されていて、「あれについて、あなたはどういう意見か」と聞かれるのだそうです。いい加減な返事をすると、どんどん突っ込んでくる。だから野上さんを担当する場合は、常日頃からちゃんと勉強しておいて、何を聞かれても答えられるようにしていなくちゃいけない。「この勉強が大変でした」。

つまり、百歳の人が、過去の話は一つもしないで、今の時代の問題について飽くなき好奇心を持ち続け、考え続け、蓄積して、家に来る人間にぶつけていく。これは野上さんの若さと呼んでもいいし、老いてなお強く生きていたと言ってもいいでしょう。

年を重ねたとき、過去の話ばかりになる人は多い。逆に、今のことや未来のことしか話さない人もいる。現在や未来の話をするには、不断の勉強が必要だ。常に好奇心を持ち、面白がって新しいことにチャレンジする姿勢。

それは、現状維持という後退の姿勢なのか、現状打破というチャレンジの姿勢なのかの違いだ。現状打破するには、前向きでアグレッシブな強い姿勢が必要だ。居心地のいいコンフォートゾーンを抜け出して、アウェイに向かわなければいけないからだ。

年を重ねれば重ねるほど、強く生きること。

老いてなお強く生きている人には限りない魅力がある。

今日のブログはこちらから→人の心に灯をともす


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