見出し画像

ムダなこともメモしてみる

今日のおすすめの一冊は、樺旦純(かんばわたる)氏の『逆発想の心理術』(日本文芸社)です。その中から「キラー・フレーズとは」という題でブログを書きました。

本書の中に「ムダなこともメモしてみる」という心に響く文章がありました。

アイデアは、思いついたときに書き取らなければ消え去ってしまう。 いや、アイデアに限らない。 物みなすべて、メモがとられていないものは、存在しないも同然といえる。 

こんな話がある。 メモ魔と呼ばれる部長が、ある日たまたまメモ帳を忘れてきてしまった。 そこで会社の机の上にあった紙切れに、大事なことをメモしておいたのである。 そして、それを帰るときにポケットにしまい、家でメモ帳に書き写そうとすると、たいていどうでもいいことばかりで、大事なことはほとんどなかったという。 

「どうでもいいことばかり」だったのだから、普段、いかにばかばかしいことまで書いていたかがわかる。 もちろん、別に決心したわけではないが、この日から徐々に部長のメモ事項は少なくなっていった。 大事と小事の判断をし、大事なことだけをメモするようになっていったからである。 

しかし、その頃から、部長の発想に精彩がなくなってきた。 たとえば、以前は会議では屈託なく陽気に発言し、沈黙しているときは出席者の様子までメモしているような愉快なオジサンだった。 話題がなくなりかけても、目の前にあるメモ帳にはいろいろなことが記されているので、「いやあ、実に面白い話がありましてね」と、すぐに座を盛り上げられる。 

ところが、「大事なこと」しか書かなくなったメモ帳に載っているのは、スケジュールであり、集合場所であり、連絡先である。 こうなると、官僚的な顔つきになってくる。 ミスしたり、へまをしたりということはない、というタイプの人間になってきたのだ。 

こういう変化は、周囲も敏感に感じとるもので、「この頃、部長はなんだかムッツリしているな」「初老期うつ病じゃないかしら」と噂するようになった。 そのことをある人が彼に忠告したらしく、その後、彼はメモの重要性に気づき、再び、もとのような発想の豊かな人に戻ったが、しみじみとこう言うのである。 

「理性的な判断ではばかばかしいようなことでも、メモをしておくと、一週間後には、他との連想で意味をもってくることが多いんですね」 あなたも、毎日とはいわないが、周囲に一度くらいは、自分のメモをながめると、意外な「ひらめき」を得られるかもしれない。 

人生にはムダも必要だ。ムダを排除して、効率的なもの、役に立つもの、意味のあるもの、価値あるものだけを大事にしていくと、およそつまらない人間ができあがる。遊びや、余白や、余裕、といった深みのない、一本調子のコチコチで、面白味のない人間になってしまうからだ。

そういう人には好奇心も、冒険心も、柔軟性もない。好奇心がある人は、ムダなことや役にも立ちそうにもないことを面白がれる人だ。

好奇心のあるなしは、年齢に関係ない。 役に立とうが立つまいが、ムダになろうがなるまいが、雑多なことに興味関心を抱き、メモをする。損得や効率で動かないからだ。

役に立たないこと、ムダなことを楽しそうにメモする人でありたい。

今日のブログはこちらから→人の心に灯をともす


いいなと思ったら応援しよう!