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楽観と悲観をバランスよく

今日のおすすめの一冊は、齋藤孝氏の『運の教科書』(筑摩書房)です。その中から「その時来た船に乗る」という題でブログを書きました。

本書の中に「楽観と悲観をバランスよく」という心に響く文章がありました。

柔道で五輪金メダル三連覇をなしとげた柔道の野村忠宏さんと対談をしたことがあります。 彼は一般の印象とは違って、自分は心配性でひじょうに気が小さいところがありますと話されていました。 

「もう悪いことばかり考えてしまう」と言っていました。 世界一の実力者なのに、そんなことを考えてしまうとは意外です。 そして心配性だからいろいろなパターンをシミュレーションして考えるそうです。 

考えて、考えて、相手がこう来たらこうする、こうなったらこうやる…とさんざん考え、「最終的に自分が一番強い」「自分が一番金メダルが似合う」というところまで考えて、畳の上に立つと言っていました。 

野村さんのように「心配性なので、こういう準備をしています」という人の中には成功している人がけっこういます。 だから、気が大きくて豪快に笑っていて、いつもポジティブで「まあ、ええわ」と言っている人が成功するとは限りません。 こういう人間がおちいる落とし穴もけっこうあるのです。 

ポジティブさだけが「運」をコントロールする方法だととは思わないことです。 気分的には楽観的でいながら、実際の作業においては深慮遠謀というか、準備をぬかりなく行う。 いわば悲観的、楽観的のいいとこ取りのポジションを身につけていくと、わりと「運」がつかめると思います。 

逆に言うと、気分は悲観的で「ああ、大丈夫。絶対受かる」と言っていて、何も準備しないで失敗する人も山ほどいます。 私は数々の人間の受験勉強の面倒を見てきた結果、楽観的すぎて失敗している人をいやというほど見てきました。 

だから、よくいう「楽観的であれ」というアドバイスは無責任ではないかと思います。 私自身、楽観的で失敗していることが多いので、楽観的でありさえすれば「運」がついてくるというのは無責任なアドバイスだと、楽観的な私が思います。 

本当を言うと、一番いいのは楽観的な人と悲観的(というか堅実)な人がコンビを組むことです。 

たとえば本田技研をつくった本田宗一郎さんはつねに前へ前へと進む超楽観的な人でした。 自動車レースのF1やルマンに挑戦したり、つねに新しいことにチャレンジして一番になることをめざした人です。 

その本田さんとコンビを組んだのが藤沢武夫さんです。 楽観主義者の本田さんに対して、藤沢さんはきちんとお金の計算をし、堅実な経営を行いました。 成功している人の陰には藤沢さんのような堅実な人がいるのです。 

楽観+悲観(堅実)のコンビであれば、「運」をうまくコントロールして成功に導けます。 それを一人の人間の中でやりくりできればいいわけです。 

楽観的なタイプの人は心配性な人がやるような分析をして準備することに力を注げばいいし、気持ちが落ち込みがちな悲観的な人は、気分をもっとおおらかにリラックスさせて、「まあ、ええわ、ええわ」と思うようにして、楽観と悲観をバランスよく混合させるといいのかなと思います。 

「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」
稲盛和夫氏の言葉だ。 

ビジョンは気宇壮大に、大風呂敷を広げるくらい、楽観的に考える。 しかしながら、計画するときは微に入り細に入り、神経質なくらいに問題点を探しだし、それに対応した計画を立てる。 

そして、いざ実行するときには、おおらかにリラックスして「なんとかなるさ」というような気持ちで実行する。 何の準備や努力もせずに、「なんとかなるさ」と、ただ楽観的なだけの人は、単なるなまけものだ。 自滅の道をまっしぐらとなる。 

楽観的と悲観的のいいとこ取りをする人でありたい。

今日のブログはこちらから→人の心に灯をともす


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