スティーブ・ジョブズの最良の出来事
今日のおすすめの一冊は、ティナ・シーリグ氏の『20歳のときに知っておきたかったこと』(CCCメディアハウス)です。その中から「起業家精神を呼び起こす」という題でブログを書きました。
本書の中に、今では古典的な例となっているスタンフォード大学卒業式での、「スティーブ・ジョブズの最良の出来事」という心に響く文章がありました。
わたしたちの最高の作品であるマッキントッシュを発表して1年後、30歳の誕生日を迎えた矢先に、わたしはクビになってしまいました。自分が興した会社をどうしてクビになるのでしょうか?
会社が大きくなるにつれ、わたしの片腕として経営を担ってもらおうと、有能と思える人物を招き入れました。最初の一年ほどはうまくいっていました。しかしやがて、将来のビジョンが食い違うようになり、ついに決定的な亀裂が生じたのです。そのとき取締役会が支持したのは彼のほうでした。
こうしてわたしは30歳にして会社を追い出されたのです。しかも、おおっぴらに。大人になってからすべてを賭けて打ち込んできたものを失ったわけですから、それは最悪でした。数カ月のあいだは、まさしく茫然自失の状態でした。自分は前の世代の起業家たちを失望させてしまった、渡されたバトンを落としてしまったと、自責の念に駆られました。
デビッド・パッカードとボブ・ノイスに会って、すべてを台無しにしたことを謝ろうとしました。わたしが失敗したことは、みなに知れわたっているのです。シリコンバレーから逃げ出すことすら考えました。
しかし、やがて見えてきたことがありました。わたしはまだ、自分がやってきた仕事が好きでした。アップルでの顛末があっても、その気持ちはいささかも揺らぎませんでした。わたしは拒絶されたわけですが、それでも好きでした。だから一からやり直そうと決意したのです。
そのときはわかりませんでしたが、振り返ってみると、アップルを追い出されたことは、わたしの人生で最良の出来事でした。
成功者であることの重圧は、初心者に戻った気安さに代わりました。何事にも前ほど自信がもてなくなりましたが、それによって自由になり、人生でもっともクリエイティブな時期に入ることができたのです。
その後の5年のあいだに、わたしはNeXTという会社を立ち上げ、ピクサーという会社を興し、すばらしい女性と恋に落ち、結婚しました。ピクサーはやがて、世界初のコンピューター・アニメーション映画『トイ・ストーリー』をつくり、いまでは世界でもっとも成功しているアニメーション・スタジオになっています。
思いがけない展開でアップルがNeXTを買収することになり、わたしはアップルに復帰しました。NeXTが開発した技術は、最近のアップルの復活劇で中核的な役割を果たしています。そして、ローレンとわたしは共にすばらしい家庭を築いています。
わたしがアップルを追い出されていなければ、これらのことは何ひとつ起こらなかったと断言できます。おそろしく苦い薬でしたが、わたしという患者には必要だったのでしょう。人生には時として、レンガで頭をぶん殴られるような出来事が起こりえるのです。(以上、ジョブズのスピーチ)
これに似た物語は繰り返し起こっています。人生には小さな失敗や大きな失敗がつきものです。大切なのは、そうした失敗から立ち直れるかどうかです。わたしの好きな諺があります。「最後は万事うまくいく。うまくいってないなら、それは最後ではない」。 わたしたちはたいてい物語の途中にいて、立ち直る方法はあるものです。
失敗だと思ったことは、実は最良の出来事だった、ということは人生にはよくあります。また逆に言うなら、それ(失敗)を、「最良の出来事だった」と思える人だけが成功している、ということが言えます。
なぜなら、今、うまくいっていなら「それは最後ではない」からです。「最後は万事うまくいく」、という言葉が心に刺さります。
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