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大事と小事

今日のおすすめの一冊は、松下幸之助氏の『指導者の条件』(PHPビジネス新書)です。
その中から「即断即行」という題でブログを書きました。

本書の中に「大事と小事」という心に響く一節がありました。

《指導者は基本を押さえ、あとは自由にまかせるようにしたい》

名君として名高い岡山の藩主池田光政が若いころ、京都の名所司代とうたわれた板倉勝重を訪ねて、政治の要諦をたずねた。すると勝重は、「たとえば、四角い器に味噌を入れ、それを丸い杓子(しゃくし)でとるようにすることが大事でしょう」と答えた。

光政が重ねて、「それでは、すみずみまでとれないではないですか」とたずねたところ、「そこが肝心です。あなたは聡明で、しかも熱意をもって政治にあたっておられ、国のすみずみまで立派にしたいとお考えでしょうが、あまりこまかいことまで気にしてはかえって国は治まらないと聞いています」といったという。

理想に燃える青年大名に対して、経験を積み、人情の機微を知り尽くした老練政治家の真実をついた忠言というところであろう。

“千丈の堤も蟻の穴から崩れる”ということわざもあるから、指導者たるものは決して小事をおろそかにしていいというものではない。たとえば会社の社長が、紙一枚ムダにした部下を叱りつけるといったことも時には必要な場合もあろう。

しかし、何から何までいちいち社長が「ああせい、こうせい」と口出ししていたら、みんなわずらわしくてしかたないし、やる気をなくしてしまうだろう。第一、小さなところならともかく、大きな会社でそんなことをやっていたら体がいくつあっても足りない。

一国の政治でも同じことである。あれもこれもと考えて、法律をどんどんつくり、いわば網の目のようにびっしりはりめぐらして国民生活を規制したら、それでうまくいくかというと決してそうではない。それでは、国民は息がつまって、窒息同然になってしまい、 さかんな活動というものは生まれてこない。 

だから、小事をおろそかにしていいというわけではないが、小事にとらわれて、いわゆる重箱のすみをつつくようなことになると、かえって肝心の大事のほうが見失われてしまう。したがってやはり、大切なポイントだけをしっかりと押さえ、あとは自由にのびのびとやらせるということが必要だと思う。

結局はそのほうが秩序も立ち、生き生きとした活動が起こり発展も生まれてくるといえよう。 もっとも最近は、こまかいところはもちろん、肝心の押さえるべきところも押さえず、 放任放縦に堕しているような風潮も見られるようで、これではいけないのは当然のことである。

デール・カーネギーはこう語っています。

『人生のくだらないことのために 自分の幸福を台無しにするな』 

小事にこだわってばかりいると、肝心の大事を忘れてしまいます。まさに「木を見て森を見ず」です。

「結婚前には両目を大きく開いて見よ。結婚してからは片目を閉じよ。」という格言もあります。相手の粗探(あらさが)しばかりするのではなく、長所を見つめることです。

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