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ウォールマートのDX

今日のおすすめの一冊は、山本康正(やすまさ)氏の『世界標準のテクノロジーの教養』(幻冬舎)です。ブログも同名の「世界標準のテクノロジーの教養」と題して書きました。

本書の中にウォルマートの事例が出ていました。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリストとして活躍している前田浩伸氏は、「彼らは最大手として君臨しつつも、アグレッシブに様々なことができる組織構成と社内文化になっています。それが成功の理由でしょう。ここ6、7年は、多くのスタートアップを買収しながら、その人材を取り込んで経営の主導権を取らせています。失敗も多いのですがそれが許される文化なので、スタートアップとパートナーシップを組み次々と新しい取り組みを展開しています」私見ですが、ウォールマートというと以前は買収の失敗が目立っていたように思います。
ここまでデジタル化が進んだことには、彼らの執念にも関係があるのでしょう。その原動力について、「ウォルマートの人たちとよく話をして感じるのは、アマゾンへの強い敵対心です。同時にジェンZ(以下、Z世代)に対する意識がすごく高い。意識の高さとともに自分たちはこの世代へのビジネスが得意ではないという謙虚な認識もあります。そこでスタートアップを買収して、彼ら向けのサービスを作っているのです」と前田氏は教えてくれました。
具体的に例を挙げるのが、ジョイモードです。商品をレンタルする企業なのですが、ウォールマートはこの企業と提携関係にあります。Z世代はモノを買う意欲があまりなく、既存のブランドへの信仰も少ないという指摘がこれまでにも多くされてきました。そういった対象へのアプローチの一つがこの提携なのです。
クルマがなくては暮らせないと言われるアメリカでも、前田氏のオフィスで働くZ世代には、クルマを所有していない人が数名いるといいます。彼らの発想は借りられるものは借りる、シェアできるものはシェアすればいいというシンプルなもので、所持する必要のないものを買うことは滅多にありません。
ウォルマートは、スタートアップのジョイモードに一緒にやろうと声をかけて、一ヵ月後にはウォルマート内にジョイモードを出店させてしまいました。危機意識から来るスピード感が尋常でないほど速い。特に「苦手な」Z世代に対しては、彼らに何が受け入れられるのかを率先して試行錯誤するための仕組みができあがっています。
「結果的にジョイモード事業は失敗となり、閉鎖となります。ただし、それがウォルマート社を象徴しているようにも思えます。失敗率の多い、そして自社と競合となり得る事業においても積極的なスタートアップ連携を行う。つまりイノベーションジレンマにとらわれない、オープンイノベーションを積極的に取り込む姿勢が今のウォルマート社の強みと思われます」(前田氏)
多くの伝統的な小売業はアマゾンの前に、なすすべもなく敗れ去っているのが現状です。各市町村の商店街も昨今はとくに衰退が激しいですが、アマゾンの影響が大きいと思います。アメリカのように、大きなショッピングセンターもこれから日本ではどんどんつぶれていくのだと思います。

そんななか、ウォルマートの善戦ぶりは目を見張るものがあります。アマゾンがリアル店舗を次々と買収する中(スーパーのホールフーズ、無人店舗のamazon go、リアル書店のアマゾンブック、等々)で、一方ウォルマートはEC関連の会社を次々と買収しています。また、ECサイトで買い物をし、ウォルマートで商品をピックアップするというスタイルの売上や、デリバリーのサービスも増加しているといいます。

今後、日本でもこの弱い部分を強化するという、買収戦略(M&A)が大きな鍵になってくる気がします。

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