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いま始まっている産業革命

今日のおすすめの一冊は、夫馬賢治(ふまけんじ)氏の『データでわかる2030年雇用の未来』(日経プレミアシリーズ)です。その中から『21世紀の「産業革命」とは』という題でブログを書きました。

本書の中に「いま始まっている産業革命」という心に響く文章がありました。

《イギリスの産業革命と21世紀の産業革命の違い》 

イギリス産業革命のきっかけは、「労働生産性の向上」だった。中世のイギリスはヨーロッパの中では辺境の地だったため、もともと人口が少なかった。だが、ロンドン周辺が都市化するにつれ、人手不足に陥り、賃金が上昇していった

ロンドン周辺の高賃金に魅せられた イギリス各地の労働者は、職を求めてロンドンへと移住していく。すると、今度はイギリスの地方でも人手不足が始まり、賃金が上昇した。その結果、ヨーロッパの他の地域に比べ、イギリスでは熟練技能者だけでなく、非熟練技能者の賃金も高水準となった。

このことが、イギリスで産業革命が始まる要因の一つとなり、イギリスで機械化技術が大成し、熟練技能者を代替していくこととなった。 

一方、21世紀の産業革命は、「世の中の行き詰まり」が主要因だ。 科学技術やデータマネ ジメントの発展により、様々な予測技術を身につけた人類は、このままでは人類が大きな課題に直面するということを知るようになった。 

そのことを象徴するものが、「サステナビリティ(持続可能性)」という言葉の興隆だ。サ ステナビリティという言葉は、日本ではつい最近使われるようになったのだが、学問分野で は約50年も前から、欧米のビジネス界でも約15年も前から使われるようになっている。それだけ、人類社会は 「持続可能ではない」ことが認識されるようになった。 

イギリス産業革命が、労働生産性の向上による利潤の追求が大きな動機となっていたことと異なり、21世紀の産業革命は、「人類社会の存続」という壮大なミッションを背負って始まろうとしている。

このような産業革命は、先史時代にまで遡っても例がなく、ホモ・サピ エンスにとって初めての経験と言っても過言ではない。 産業革命の予兆はすでに始まっている。「カーボンニュートラル」を掛け声とした企業への 大規模な補助金や、職場でのAI活用はその一例だ。

これほどまでに大きな産業革命が始まるのであれば、普通であれば、政府も企業も十分な対応をしていってしかるべきだ。だが、日本政府は迷走している。政府は今、「働き方改革」という錦の御旗を掲げ、次々と政策を打ち出してはいる。

だが、その改革の狙いは、少子高齢化による人手不足への備えであって、産業革命への備えではない。現状の改革を進めても、私たちを待ち受ける21世紀の産業革命に立ち向かうことはできない。

また、企業にしても、どんなにいまの仕事が働きやすいものになっていたとしても、新たな産業革命が始まり、その仕事そのものがなくなってしまえば意味がない。 

いま、政府にも、企業にも、そして私たち一人ひとりにも必要なことは、すでに始まりかけている産業革命の内容を理解し、将来の雇用の大転換に備えていくことだ。

◆産業革命は19世紀、イギリスから始まった。手工業が中心だった毛織物業界に、自動織機が導入され、均一な製品が大量にできるようになった。それに伴い、非熟練工だけでなく、高賃金の熟練工までもが失業することになった。それを不服とする労働者たちが自動織機や工場を打ち壊す「ラッダイト運動」を引き起こした。

このような産業界の大変化に対して、教育制度も変わった。機械を扱うため、従業者たちが、読み書きや算数を含めた基礎学力を身につける必要が生じたのだ。そのため、教室で同じ内容を先生が教えるという、学校が生まれた。それが日本でも、近代まで続いている学校教育だ。規律正しく大量生産ができる人を養成する教育だ。

しかし、今はその教育は大きく変わりつつある。創造性を身につけたり、自ら問題点を見つけ、それを解決していくという探求学習などだ。

つまり、現代社会で必要とされる人物像が変わったのだ。それがまさに、「産業革命」が始まっているという予兆でもある。

21世紀の産業革命は、人類社会が行き詰った結果、始まる、という。

行き詰りとは・・・。
「人口減」「高齢化」「富の再配分」「気候変動」「カーボンニュートラル」「飢餓人口の増加」「農林水産問題」「環境破壊」「天然資源の採掘」「AIによる新たな産業と無くなる産業」「外国人労働者問題」・・・。

「いま始まっている産業革命」という言葉を胸に刻みたい。

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