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元外資系コンサルが5,000枚のスライドを見て気付いた良いプレゼンの特徴 | #1 Less is more - 足し算より引き算

この投稿では、前職のコンサルや現職の人材育成・ワークショップなどで出会った5,000枚以上のプレゼン資料及びその発表の中で学んだ「いいプレゼン」の特徴を少しずつ発信していきたいと思います。今後シリーズにしたいと考えており、初回のテーマは「Less is more - 足し算より引き算」を選んでみました。

大量のスライドが読み手にとって嬉しいか考える

これまで私が経験したプレゼンを振り返ると、私自身が準備したものを含み、プレゼンが足し算のように捉えられているケースがよくあります

皆さんがプレゼンの準備をする際、「たくさんのスライドが無いと格好がつかないのではないか?」、「スライドがたくさんある方が安心ではないか?」と思ったことがある場合、これに該当する可能性があります。

これ自体が必ずしも間違いというわけではありません。私自身、非常に重要な大規模案件で大量の提案書を作り「やる気」を示した経験があります。数億円規模のプレゼンになると、技術的な資料等も合わせて100枚を超えることも珍しくありませんでした。

しかしそうではない日常的なプレゼンの場合、大量の資料を作っても読んでもらえない、または読み手からするとむしろ迷惑でしかないでしょう。

一度に処理できるポイントは3~5つ程度

アメリカのミズーリ大学の心理学者ネルソン・コーワン教授の研究によると、人間が短期記憶で保持できる情報の数は4±1(つまり、3~5つ)であるといいます。(Nelson Cowan, "The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity", 2001)

コンサルがよく「ポイントが3つあります」と言うのは、実は理にかなっているのです。(これが習慣になってしまい、私自身「ポイントが3つあります」と言った後に3つのポイントを考え始めた経験が何度かあります笑)

つまり、ポイントを3~5つに絞った方が相手の記憶に残りやすいのです。逆に言うと、3つしかない短期記憶の箱に大量の情報を無理やり流し込むと、最終的に箱に留めるべき重要な情報が識別できず、結果的に聞き手の印象に何も残らない可能性が高まります。これが「Less is more(より情報を絞った方が結果的に多くの情報が相手に残る)」の意味合いです。

この「Less is more」を実現するためには、ポイントが3つあります。

ポイント①:相手が興味をある事以外話さない。

聞き手の事をよく考えていない人の方が必要以上の資料で必要以上にしゃべりがちです。冒頭の「たくさんの資料がないと格好がつかない」、「たくさんあれば安心」というのは、裏返すと聞き手の興味に対する理解が不十分なだけかもしれません。

プレゼンの起点は「(話し手が)何を話したいか?」ではなく、「(聞き手が)何を聞きたいか?」です。ですので、聞き手が聞きたいポイントとそのサポート情報以外は極力そぎ落とすというのがLess is moreを実現するための第一歩です。

ポイント②:言葉だけでなく、ビジュアルで表現する。

相手の興味にポイントを絞ったら、次は資料作成です。私は前職のコンサル時代、かなりスライドを作り込むタイプでした。役員報告前日の徹夜などは当たり前の時代です。

メッセージをよりシャープにするため、スライド上段のメッセージラインを時間をかけて何度も推敲し、重要な情報は誤解が無いように全てきっちり書き込むということを日常的にやっていました。

その経験にある程度自信を持って今のプレセナに移りましたが、特にシンガポールに活動拠点を移して以来、こちらで広く流通する資料の特徴に驚かされました。それは文字情報が圧倒的に少ないのです。

この経験を基に自分なりに内省した結果、私が今までやってきた「重要な情報は誤解が無いように全てきっちり書き込む」というのは、「読み手が全部読んでくれる」ということを無意識に前提にしていることに気が付きました。これは自分が10年間コンサルで築いてきたものを否定しかねない、かなりの衝撃的な気付きでした。

これはあくまで私の仮説ですが、他民族・多言語国家であるシンガポールでは、読み手の負荷を軽減するために重要な情報は極力写真・アイコン・イラストなどのビジュアルで表現し、文字情報はできるだけシンプルにすることを心掛けているのではないかと思います。(本投稿の最後に、参考までにシンガポール政府作成のスライドをいくつか載せてあります)

もちろん書き手からすると、言いたいことを文字情報で起こすのが一番早いですが、「聞き手が理解するために費やす時間×聞き手の数×理解の質」を考慮すると、ビジュアル化に少し手間をかける価値はあるかもしれません。(ビジュアル化のコツは別途記事にしたいと思います。)

ポイント③:事前に作ったものにこだわらない。

聞き手が聞きたいポイントに絞ってビジュアルを中心に資料を作り、その説明の準備を入念にしたとしましょう。但し、ここでも注意点があります。

プレゼンの場は、話し手が作った資料の発表会ではありません。事前に入念な準備をすればするほど、作成したスライドを予定通り全て説明したくなりますし、個人的にその気持ちはとてもよく分かります。

但し、作り手のスライドに対する愛情とそのスライドに対する聞き手の興味は必ずしも連動しません。事前に作った資料に対する相手の関心が高くない、もしくは全てを説明する時間がないことに気が付いたら、思い切って作成したスライドをスキップする勇気が必要です。

「せっかく作ったから」という理由だけで説明を続けることはあまりお勧めできません。それは「スライド」だけでなく、相手の興味がないことを説明し続ける「あなた」に対する評価を下げるリスクがあります。

私自身、時間をかけて事前に用意したスライドを打合せで一切使わず、聞き手の興味に合わせて急遽ホワイトボードを使って議論した経験が何度もあります。もちろんせっかく準備したのにと泣きたくなることもありますが、残念ながら作り手の愛情や労力は、聞き手には関係ないのです。

相手に響くプレゼンをしたい場合は、まずはこの3つのポイントを意識してみて下さい。

最後までお読みいただきありがとうございました。
もし宜しければ次の記事(元外資系コンサルが5,000枚のスライドを見て気付いた良いプレゼンの特徴 | #2 Go Analog - パワポ作成が速い人はパワポを開く前に時間をかける)もご一読ください。

参考:シンガポール政府機関によるアナウンススライドの例


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