サッカーライターしかなかった。大学時代、風呂から始まった道なき道
私は現在、長野県でサッカーを中心にスポーツライターとして活動している。その仕事を志した大学時代から、これまでの道のりを振り返りたい。
思い立ったが吉日。風呂を出てスタート
浴槽に浸かったり、ベッドで寝転んだりしている時に、ふと将来について考えてしまうことはないだろうか。私が今の仕事に就こうと決心した場所は、風呂だった。
私は高校でサッカーを引退し、大学からはフリースタイルフットボールに明け暮れた。2年時にはサークルの代表を務め、スキルだけで言えば日本トップレベルにものぼり詰めた。
↑白Tシャツにショートパンツが私。
とはいえ、2年になると就活が頭をよぎる。フリースタイルフットボーラーは、今でこそSNSインフルエンサーとして稼ぐ選手も増えたが、当時はパフォーマーとしてイベントで稼ぐしかなかった。私はスキルには長けていたものの表現力が足りず、人前に出ることも得意ではない。そもそも稼ぐために始めたわけでもなく、プロになることは考えていなかった。
では、卒業後に何をするのか。当時は法学部に属していたが、弁護士になりたいわけでもない。社会で役立つようなスキルも持ち合わせていない。自宅の前でフリースタイルフットボールの練習を終えた後、浴槽に浸かりながら、ふと考えた。
「サッカーしかない」。小学1年から高校までサッカーを続け、大学に入ってもボールを蹴り続けている私にとって、それ以外の選択肢はなかった。では、サッカーでどのように飯を食うのか。私は「蹴る」だけで「観る」のも好きで、Jリーグのスタジアムにも足繁く通っていた。それもゴール裏で熱狂的に応援するのではなく、バックスタンドで黙々と観ていたのだ。
おまけに文章を書くのが好きだった。小学時代はエンジニアを務める父に教わりながら、当時流行していた遊戯王のサイトを運営。つたない文章でコンテンツを作成し、発信していた。うろ覚えだが、学校の作文コンクールで入賞した記憶もある。
サッカーを観ることと、文章を書くこと。その2つが思い浮かんだ時に、サッカーライターしかないと結論づいた。そして、思い立ったが吉日。私は風呂を出た直後から、文章を書くプラットフォームを探し求めた。
まずは行動。就活そっちのけで最上級生に
まずはアメブロでブログを立ち上げ、当時開幕したブラジルW杯をテレビ観戦し、全64試合の感想を書き上げた。コメント欄は、他のブログへの勧誘文ばかり。それでもまずは形から入ろうと、インプットとアウトプットを繰り返した。スタジアムでもノート片手に試合を観戦し、ひたすらメモを取り続ける。バックスタンドから、反対側にあるメインスタンドの記者席を眺め、「いつかはあそこに座るんだ」と意気込んでいた。
また、実際にインタビューへ赴くことも重要だと考えていた。幸いにも大学に学生記者というアルバイトがあり、すぐに応募。スポーツメディアのインターンにも参画し、取材経験を積んだ。お金をもらいながら文章を書くとなると、自ずと責任感も生まれる。プロとして稼ぐ上での良いシミュレーションにもなった。
そうこうしているうちに3年生となり、周りは就活モードに突入。だが、私は企業説明会はおろか、企業のリサーチすらしなかった。サッカーライターになるには、フリーランスしかないと思い込んでいたのだ(今思えば、会社員の傍らで副業という選択肢もある)。
そのスタンスは4年生になっても変わらず、同期がスーツを着てキャンパスを歩いていようが、キャリアセンターから電話が掛かってこようが、お構いなしだった。とはいえ、卒業後の明確な道筋は描けていない。サッカーライターになると言っても、インターネットになり方は書いていない。当然不安もつきまとったが、「なんとかなる」と考えていた。
根拠なき自信。道なき道は突っ走るしかない
卒業後も大学時代とほぼ変わらず、文章を書けるプラットフォームを探し続け、なんとかフリーランスとして形にはなった。5年間の紆余曲折を経て、昨年には憧れていたJリーグの記者席にもたどり着くことができた。
サッカーライターは仕事をするための資格もなければ、就活をすればなれるわけでもない。詰まるところ、突っ走るしかなかった。大学2年の時に風呂で決心して以来、熱が冷める時期もあったが、それでも道なき道を歩み続けてきた。
今は幸いにも、大学時代に熱中していたフリースタイルフットボールの仕事も担っている(パフォーマーではなく裏方として)。不安定感は拭えないが、安定を求めていればこの働き方は選んでいない。大学時代から持ち続けていた「なんとかなる」という根拠のない自信は、意外と大事だと思っている。「なんとかなる」よりも「なんとかする」と言ったほうが正しいのかもしれない。
まだスタートラインに立ったばかり。ここから続けていくことも容易ではないが、その職業に「なること」と「続けること」には、また違った楽しさがあると考えている。もっと言えば、なることはできたものの、理想形にたどり着いたわけではない。今後も「なんとかする」という精神を持ち続け、道なき道を歩んでいきたい。
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